「Go Toで東京だけ除外するのは妙」東京都医師会 角田徹副会長
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。16日に新型コロナウイルス感染者が286人と過去最多となった東京都の現状(※注:その後17日に293人、18日に290人)について、電話ゲストに東京都医師会副会長・角田徹を迎えて解説した。
新型コロナウイルス、東京で過去最多の286人が新たに感染、全国では600人を超える
東京都は16日、新型コロナウイルスの感染者が新たに286人報告されたと発表した。7月10日の243人を上回り、過去最多を更新している。また、全国では新たに622人が感染確認され、過去3番目となった。1日あたりの感染者が600人を超えたのは4月11日以来である。
飯田)東京の新規感染者が過去最多を更新したことについての、小池東京都知事のコメントです。
小池知事)新たな陽性者は286人となりまして、これまでの新たな陽性者数で最多の人数となっております。その要因の1つは、検査の件数が増えているということもあるのですが、現在の東京都においては「感染拡大警報」を発すべきということで、一層の警戒と対策が必要な局面にあるということです。
飯田)かなり警戒感を示していますが、ここで東京を含めた全国的な感染者の増加について、感染症のエキスパートの方にお話を伺います。東京都医師会副会長で角田外科消化器科医院・院長の角田徹先生と電話がつながっています。角田先生、おはようございます。
角田)おはようございます。
各地、そして高齢者にも感染は拡大している
飯田)東京の数字が注目されていますが、全国的に見ても増えているということを、どうご覧になりますか?
角田)東京以外でもPCR検査の数が増えていることはあると思いますが、感染が東京だけでなく、各地でも増えているという傾向を示していると思います。
飯田)年代別の内訳が昨日(16日)出ましたけれども、高齢者の方にも感染が拡がっているということですか?
角田)そうですね。20代、30代が16日の段階では70%くらいですが、40代と60代が67名、23%と増えています。高齢者ほど重症化しやすいですから、気をつけなくてはいけないですね。
現時点では余裕のある受け入れ態勢
飯田)現在の検査体制や受け入れ体制はどうでしょうか?
角田)PCRを含めた検査体制は、第1波とは違ってかなり拡充していて、受けるべき人は受けられるような状態です。入院体制の方は、重症者が7名だけなので、一応レベル1で100床を用意しています。ただ、中等症、軽症に関しては増えているのでレベル2、2800床をいま目途に準備しているところです。現時点で余裕はあると思います。
飯田)現時点で余裕はあると。ここで抑えれば、十分に対応ができるということですね。
角田)感染者が急増しなければ大丈夫だと思います。
飯田)その急増の可能性はいかがですか?
角田)第1波と違って、検査数が多いので、いま数が多いのですが、これが高齢者を含めて拡がって来ると緊急を要します。しかし、いまのところ横ばい状態ではないかと思います。
ウイルスが変異していることはない~感染は家庭、地域を通して拡大している
飯田)スタジオには、外交評論家の宮家邦彦さんもいらっしゃいます。
宮家)ウイルス自体が変異しているかどうかについて、いろいろな報道があります。「これからもっと凶悪になる」、「いや、弱まっている」と、まったく違う情報が流れているのですが、どのように見たらよろしいでしょうか?
角田)感染的に見ても、ウイルス自体が大きく変異しているとは思いません。突然、凶悪化して死亡率が高くなるようなことは考えづらいと思います。
宮家)もう1つ。若い人に多くの感染者が出ていて、徐々に高齢者も増えるとなると、それは若い人の数が減っているというより、どんどん感染が拡がっているという理解でよろしいでしょうか?
角田)はい。夜の街を中心に若い人に拡がって、それが家族内で感染したり、地域に戻って感染したり、他の世代にも拡がっているという感じがします。
飯田)そうすると、家庭のなかで2次感染を防ぐ必要があるわけですか?
角田)そうですね。家のなかで予防するのはなかなか難しいのですが、手洗いをして、体調が悪かったら家でも必ずマスクをするということが必要です。
3密を避ければ予防は可能
宮家)飛沫だけではなくて、空気感染するという議論がありますよね。もしそうだとしたら、空気のなかにウイルスが漂っているということですか?
角田)麻疹などは強い感染力があります。ただ、もしそうだとすれば、満員電車ですでに感染しているはずなのです。
飯田)確かにそうですよね。
角田)ですから、やはりこの感染形態は、3密が大きく影響していると思います。
低年齢層は暑い時期にはマスクをしない方がいい
飯田)これから暑くなると、熱中症も心配になります。マスクをしていると暑くなりますが、その辺のバランスはどうしたらいいですか?
角田)高齢者の方がマスクをして、息を切らしているのを見ますが、外に出ても人がいないところではマスクをしなくてもいいと思います。散歩のときなどは、マスクを外して歩いた方がいいと思います。
飯田)例年、子供も熱中症になるケースがありますが。
角田)お子様のマスク、特に低年齢層はかえってマスクは危ないです。基本的には人混みに連れて行かないということが大切だと思いますけれども、お子さんのマスク、特に低年齢層は避けた方がいいです。
「Go To」で東京だけ除外するのは妙~3密を避けて移動すれば問題ない
飯田)最後に、「Go Toトラベル」キャンペーンで東京発着を除外することが発表されましたが、これはいかがですか?
角田)いまの状況だと、こういう流れは仕方ないと思います。ただ、行政区で東京だけを制限しても意味がないのではないでしょうか。3密を避けて、個人的な予防をすれば移動することはあまり問題ないと思うので、東京だけ除外というのも妙かな、という気はしますね。
飯田)むしろ3密を避けるなど、行動を変えることの方がより重要なわけですね?
角田)そうですね。行動に気をつけながら活動するということが重要です。
飯田)なるほど、わかりました。
経済活動の再開は急がば回れ
飯田)東京都医師会副会長・角田徹先生に伺いました。どうご覧になりますか?
宮家)最近、新規感染者の数字が上がって来たときに、ちょっと心配になって、間違ったことを言ったら大変ですから、これまでに書いた産経新聞の私のコラムを読み直してみました。そうしたら「経済活動の再開は急がば回れ」と、4月下旬の段階で書いていました。
飯田)産経新聞の「宮家邦彦のWorld Watch」ですね。
宮家)難しい判断ではあるのですけれど、いままでのさまざまな経験から、急いで飲食店などをオープンした方が、かえって悪いケースになる場合がいろいろな研究例のなかにありました。当時はそれを見て、あまりに早く政治的に判断して規制緩和をすると、逆効果になるから、「急がば回れなのだ」ということを書きました。振り返ってみれば、やはりそうだったのだなと思いました。私個人はこれまでやって来た生活習慣を、いまも変える気はないですね。
飯田)緊急事態宣言が出てから、ほとんど生活が変わっていないとおっしゃっていましたよね。
宮家)ほとんど変わっていません。
飯田)宮家さんは前々から指摘されていましたが、アメリカで州ごとにどこを緩める、どこを緩めないということをやっているけれど、早めに緩めたところは、いままさに感染が爆発しています。
宮家)そうです。しかも早めどころではなく、大統領と共和党の知事たちのような意識が同じ人たちは、「やれ、やれ、早く緩和せよ」と積極的に経済活動を再開して来ています。でも、それをやったら感染者数が増えるに決まっていますよ。ですからその意味では、苦渋の判断というより、むしろ「煽っていた」部分があったのかも知れない。これはいまのアメリカにとって、非常に大きな問題だと思います。
飯田)日本もこれを他山の石として、急がば回れと。
宮家)日本はバランスを常に考えていますから、アメリカに比べれば、まだいい方だと思います。
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