『幸せへのまわり道』トム・ハンクス主演! 大人のセラピー映画
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第892回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、8月28日に公開された『幸せへのまわり道』をご紹介します。
新聞記者と大物司会者、実話をもとにしたヒューマン・ドラマ
1968年から2001年にかけてアメリカで放送された子供向け番組「Mister Rogers’ Neighborhood」で製作・司会・音楽を担当した、フレッド・ロジャース。
そのソフトな語り口と礼儀正しい態度で、子供だけでなく大人からも高い支持を受け、もっとも人気を博した1985年当時は、全米の8%がこの番組を視聴していたと言われています。
そんな人気司会者の実話を題材にした映画『幸せへのまわり道』が、日本でも公開となりました。
『幸せへのまわり道』のあらすじ
雑誌記者として華々しいキャリアを築き、いまは愛する妻、そして生まれたばかりの子供と幸せに暮らしているロイド・ボーゲル。
ある日、姉の結婚式に招待されたロイドは、会場で絶縁していた父ジェリーと再会する。彼は家庭を顧みずに自分たち姉弟を捨てた父を、いまだに許せずにいた。
その数日後、ロイドは編集部の依頼で、子供向け番組の司会者として人気のフレッド・ロジャースを取材するために、彼の元を訪れる。フレッドは会って間もなく、ロイドが抱えている家族の問題や心の葛藤を見抜き、ロイドもまたフレッドの不思議な人柄に惹かれて行く。
やがて2人は取材という名目を越えて、公私ともに交流を深めて行く……。
『幸せへのまわり道』のみどころ
主演を務めるのは、トム・ハンクス。フレッド・ロジャースの奥さんのジョアンによると、生前、フレッドはトム・ハンクスの大ファンだったとか。
このエピソードからすると、トム・ハンクスが“ミスター・ロジャース”を演じたのは、必然だったのかも知れない。そんな運命さえ感じずにはいられません。
一方、本作の原作となった雑誌『エスクァイア』に掲載された記事を寄稿したロイド・ボーゲル役には、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でもトム・ハンクスと共演を果たしたマシュー・リス。
大物司会者と雑誌記者の家族間で生まれた“数奇な運命”を静かに、そして優しく紡いでいます。
ミニチュア模型やパペットが登場したり、音楽が効果的に差し込まれたりと、子供番組のテイストがうまく取り入れられた本作。
まるでおとぎ話の世界へと誘われるような作風はどこか懐かしく、そして観るうちに、自分の心が徐々に浄化されて行くような感覚を覚える人も多いことでしょう。
人生において“後回し”にして来た心のわだかまりと向き合い、受け入れること。そして、ときには“赦す”ことで、人は前に進むことができる……。
観る人の心の隅々まで温かく包み込んでくれる、大人のセラピー映画です。
<作品情報>
『幸せへのまわり道』
2020年8月28日(金)からヒューマントラストシネマ渋谷、イオンシネマほか全国ロードショー
監督:マリエル・ヘラー
原作:トム・ジュノー
脚本:ミカ・フィッツァーマン=ブルー、ノア・ハープスター
製作総指揮:ミカ・フィッツァーマン=ブルー、ノア・ハープスター、エドワード・チェン、ハワード・チェン、バーゲン・スワンソン
出演:トム・ハンクス、マシュー・リス、クリス・クーパー、スーザン・ケレチ・ワトソン
(C)2020 Sony Pictures Digital Productions Inc. All Rights Reserved.
(C)2019 Columbia Pictures Industries, Inc. and Tencent Pictures (USA) LLC. All Rights Reserved.
原題:A BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD
公式サイト https://misterrogers.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/