概算要求105兆円規模が「当然」である理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月1日放送)に経済アナリストの森永康平が出演。9月30日に財務省に提出された2021年度予算の概算要求について解説した。
国の2021年度予算、概算要求105兆円以上~コロナ対策で拡大
国の2021年度の予算編成で、各省庁からの概算要求が、9月30日に財務省へ提出された。一般会計の要求総額は、7年連続で100兆円を突破し、105兆円となる見通しだ。
飯田)どこまでかかるか不明であるということで、要求額が明示されていない事項要求もかなりあるということです。「放漫経営だ」というような批判が出ていますが。
コロナ禍のなかで予算が減るわけがない
森永)10月1日の新聞各紙の報じ方を見ると、「過去最大だ」「異例の膨らみ方だ」という表現が多かったですね。ただ、コロナによる、ある意味「戦時モードだ」と一時期は評していたわけですから、そんな最中に「予算が減るわけがないだろう」とは思います。増えて当たり前ですし、厚生労働省の部分が最多で、32兆円を超えているのですが、事項要求が多くあります。これは当たり前で、これから第3波、第4波があるのかないのかもわからないなかで、いまの時期に具体的に「これだけ必要です」と言えるわけがありません。今後、この予算は更に拡大すると思います。
水害や保健所の不足~緊縮的政策の弊害が明白
森永)そのときに気を付けなければいけないのは、「賢い支出が必要」、「これを機に無駄を一緒に合わせて要求しているのではないか」など、緊縮的な発想が報じられるのだと思いますが、緊縮的な政策をやって来た結果、水害が拡大したり、今回コロナの件で保健所が足りなかったということが判明し、これまでやって来た緊縮の弊害が明白になったのです。それにもかかわらず、この予算に対して、「莫大だ」という論調が多いこと自体に驚いています。
飯田)物価も上がって、経済が成長して行くのであれば、予算も増えて然るべきだと思いますが。
森永)逆にいまは、消費増税や幼児教育の無償化の影響を差し引いて消費者物価指数を進めると、もはや前年比でマイナスに入りかかっているわけですから、いまこのタイミングで財政が、と言うのはナンセンスです。よくハイパーインフレを指摘する方もいますが、「真逆だろ」という状況ですから、このタイミングで予算を削る方向へ行くべきではないと思います。
「予算を削る」のは無能な人のやり方
飯田)菅政権のマクロの経済政策というのが、まだ発足して2週間余りというところなので、見えない部分はあると思いますけれども、緊縮で行く感じなのでしょうか?
森永)新しい内閣に対してはポジティブに見ていますが、アベノミクスを引き継ぐというようなことを言っていますよね。アベノミクスを振り返ると、初年度は財政の部分が打てていたという気はしますが、結局、翌年から緊縮気味になって行ったわけです。アベノミクスの最終年の方針を引き継ぐとなると、緊縮的な発想が増えるのだろうと思います。このニュースの報じられ方を見ても、論調をそちらに持って行きたいのかな、という気はしてしまいます。
飯田)「無駄を削れ」というのは見出しとしても立つし、それが一般国民受けすると思っている人は、かつての小泉内閣などの記憶がまだ鮮明にあるのですかね。
森永)節約すればいいだけなので、予算を削ることは誰でもできるのです。予算を取るということは、ある意味リスクを取るのですね。「予算を取ったのだから成果を残せよ」という話になります。そうすると、成果を残す自信のない人たちにとって、簡単な手柄の取り方は予算を削るということです。これは無能な人がやるやり方だと思います。
若い現役世代を入れて議論するべき
飯田)しかもその「予算を削る」ということが、一般企業も含めて、ここ20~30年もてはやされ続けて来ましたよね。
森永)「それがエリートなのだ」というような印象を受けますし、反緊縮的な発想をすると、ポピュリストで、「何もわかっていない国民を煽っているだけでしょ」という、反知性的な扱いをされたりする。これがこの20~30年だったと思います。
飯田)それが若い人たちの新規の就職に影響したわけですよね。
森永)この議論はもっと若い人を入れるべきです。引退世代の人はもう関係ないから、「削れ、削れ」と言うに決まっています。議論に30~40代の現役層を入れないと、おかしな方向に進んで行くと思います。
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