レバノンとイスラエルが歴史的合意に~「敵の敵は味方」ということ
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月2日放送)に元内閣官房副長官補・同志社大学特別客員教授の兼原信克が出演。レバノン国民議会のベリ議長が、敵対する隣国イスラエルとの海洋の境界策定について、「枠組みづくりで合意した」と発表したニュースについて解説した。
レバノンとイスラエル
地中海の東の端ドン付き、北にレバノン・南にイスラエルと並んでいる位置関係。東地中海、天然資源があるため開発利権をめぐり、長年対立して来た両国が、いま歴史的な転換点を迎えようとしている。レバノン国民議会のベリ議長は10月1日、敵対する隣国イスラエルとの海洋の境界策定について、「枠組みづくりで合意した」と発表した。ただ最終合意には至っていないとしており、協議は10月中にもレバノン南部国境付近でアメリカや国連の仲介で行われる見通しである。
飯田)この東地中海の周辺は天然ガスが出るのですね。
兼原)最近たくさん出るのです。問題はですね、中東は第一次世界大戦の前はオスマン帝国とペルシャ・イランだったのです。
飯田)トルコとイランと。
「昔、俺たち帝国だったんだよね」と大きな顔をするトルコとペルシャ
兼原)いまは冷戦も終わってのんびりしていて、ロシアの力も落ちたので、トルコとペルシャが「昔、俺たち帝国だったんだよね」と言って大きな顔をしているのです。トルコが海ではかなり大きな顔をしています。シェイクスピアのオテロに出てくるキプロス島がトルコの近くにあるのですが、あの下のキプロスというギリシャと仲のいい独立国の上半分をトルコが抑えていて境界確定が乱れているのです。そこでトルコはもう天然ガスを堀り始めているので、いろいろな国が「何しているんだ」と言うと、トルコは軍艦を出したりするのです。
飯田)このレバノンとイスラエルも、トルコに対しては共通の利害があるだろと。
イスラエルとUAE、バーレーンとの国交正常化
兼原)レバノンとイスラエルは早く海を仕切って、揉めているのをやめようということがあると思います。もう1つ、アメリカはイスラエルが可愛いわけです。自分たちはキリスト教ですから。特に共和党系の福音主義者の票が来るので可愛いわけです。イランとかシリアはロシアに取られてしまったのですけれども、エジプトとヨルダンを抑えて、「イスラエルと仲よくしてくれ」とやって来ていました。それで、この間UAEをひっくり返しました。これをイスラエルとくっつけたので、バーレーンがついて来た。これには驚きました。アラブのドンの人たちですから。イスラエルとUAEの国交正常化はトランプさんの大きな得点となったのです。
レバノンとイスラエルが手を結ぶということ
兼原)レバノンには、ヒズボラという組織がたくさんいて、イランの影響がすごく強い人たちなのです。このレバノンがイスラエルとくっつくというのは、アメリカの方からすれば、イラン勢の切り崩しになります。エジプト、ヨルダンと昔から持っているところに加えてUAE、バーレーンと来て、今度、イラン側だと言われていたレバノンのヒズボラの人たちがいるにも関わらず、レバノンがイスラエルを引っ張ったのです。これはアメリカの方から見ると、また得点を得たという感じなのだと思います。それはアメリカが頑張っているというよりも、イランが怖いのです。イランとトルコがあそこでブイブイやり始めると周りの国々は怖いのです。
飯田)アラブの国々が対イランや対トルコというところで、「喧嘩している場合ではないだろ」となったと。そうすると宗教というよりも、各国が国益や実利で結んで行くという形になるのですか?
敵の敵は味方~日本の室町時代と同じ
兼原)一言で言うと「敵の敵は味方」。これだけですね。
飯田)戦国時代みたい。
兼原)同じです。徳川と武田のように突然結んだというようなことも、「あるよね」という感じです。
飯田)宗教が入り口だからわかりにくいと日本人は思っているけれども、実は。
兼原)室町時代と思ってもらえればいいです。敵の敵は味方なので、誰かが強くなると周りがくっつくのです。イランとトルコが昔のことを思い出してブイブイやり始めているので、焦ったアラブがいろいろと動いているのだと思います。可哀想なのはパレスチナなのですよ。沈んじゃうのですよね。イスラエルとアラブの地盤の紛争の問題はパレスチナなので。
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