大阪都構想は終結~吉村知事「政治家を続けるかは改めて考えたい」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月2日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。2度目の反対多数を受け、否決された大阪都構想について解説した。
大阪市は存続~10年に及ぶ大阪都構想は終結
松井大阪市長)すべて私の力不足。その結果によりまして、2度目、こういう形で大阪都構想を大勢の皆さんに支えていただいたにも関わらず、敗北をするということになりました。これはまさに大阪市民の皆さんの民意です。
11月1日に投開票が行われた大阪都構想の住民投票は反対多数で否決された。大阪都構想は、大阪維新の会が掲げて来た最重要政策で、2度目の反対多数を受け、10年に及んだ都構想論議は収束する。
「大阪都構想」は収束へ
飯田)吉村府知事は都構想について、「再挑戦することはない」と、この会見のなかで述べ、各紙は「都構想論議収束」という表現をしています。本当に収束してしまうのでしょうか?
須田)維新の会は「改革政党」と位置づけられていて、そのトップの旗印が「大阪市を分割して二重行政をなくす」ということでした。その一方で、維新の会は、賛否両論分かれているものについては、「選挙による民意」を重視する政党です。住民投票を2回やったわけですから、大阪都構想については、一旦終結をするということです。ただ、松井大阪市長は「我々の代では終結するけれど、将来的に再び、二重行政が大きな問題になって来たならば、大阪都構想が首をもたげて来るかも知れない。ただ、それは20年、30年先の話だ」というような言い方をしています。それを聞いても、当面はこのような構想が出て来ることはないと思います。
飯田)「我々の代」という言葉を使いました。松井さんの市長としての任期は2023年までです。これを全うした後は引退をするとおっしゃっていますが、維新も代替わりをするということでしょうか?
須田)次世代というのは、吉村知事のことを指しているのですが、「大阪維新の会の代表を吉村知事に譲る」というニュアンスがあったのだろうと思います。ただし、それは松井市長本人の弁であって、周囲はそれを許すのでしょうか。日本・大阪維新の会共に、松井一郎氏という求心力を持った政治家がまとめ上げて来ました。特に5年前の2015年の住民投票に敗北したときが、いちばん維新にとってピンチでした。そのピンチを乗り切るために、一生懸命汗をかいたのが、松井代表だったわけです。
日本維新の会・馬場伸幸幹事長~松井代表には国政に出ていただきたい
須田)そのまま2年半後の任期満了をもって引退をして「よし」とするのか、その辺のところを記者会見後、日本維新の会ナンバー2の馬場伸幸幹事長に聞きました。馬場幹事長は、「松井代表には、ぜひ国政に出て来ていただきたい。国政に出て来るべきだろう」と言っていました。ご本人の意向もありますが、私は国政への進出ということも可能性としてあると思います。松井代表は国政選挙、特に衆議院選挙に打って出れば、間違いなく当選するだけの得票力を持っています。
吉村知事「政治家を続けるかは改めて考えたい」~政治から離れる可能性も
須田)1日の記者会見で、私は最前列で取材をさせていただいていたのですが、吉村知事は相当ショックだったのか、うっすらと涙がにじんでいたように見受けられました。そのなかで、「私の人生は私が考える。任期は全うするけれども、その段になって、政治家をこのまま続けるのかどうかについては、自分自身で改めて考えてみたい」と含みを持たせる言い方をしていました。
飯田)政治から少し離れる可能性もあるということでしょうか。しかし、まだ3年ありますからね。
須田)維新の会も、若い世代が出て来ていることは間違いではありません。世代交代が進む可能性もあるのだと思います。
新型コロナウイルスの影響も
飯田)今回の賛成・反対の色分けの地図などを見ると、ある意味、5年前と変わらない。行政区のなかで、北の方は賛成が多いが、南の方は反対が多い。南北の差のようなものも、実際に大阪を歩くとあるのでしょうか?
須田)経済格差というものが見受けられます。梅田を中心とした北部と比べて、南部は経済的に見劣りするということはあります。ただ、南部地区というのは、ミナミを中心にしてインバウンド効果で潤っていた地域です。今回の新型コロナウイルスショックで、いまは閑散としていて、商店や中小零細企業が相当厳しい状況に置かれています。その辺りも影響したのではないでしょうか。ただ、会見でも「新型コロナウイルス問題が影響を及ぼしたか」という質問が出ましたが、松井代表以下は「一切関係ない」というような言い方をされていました。
飯田)当事者としては、「そこを認めるわけにはいかない」というものがあるのでしょうね。
「これだけ経済成長する」という維新の会の主張が大阪市民に信用されたのかどうか
須田)経済という点で言うと、問題になったのは、分化したときの初期コストです。そして、その経済効果という点でも厳しめの数字が出ています。「思ったほどの経済効果はないではないか」というところを反対派は突いたのです。大阪の経済が、そのまま横ばいで推移するという前提に立てば、初期コストを吸収できないのです。しかし、維新の会は、「大阪の経済をこれから成長させて行く」ということを前提に立っているのです。ですから、万博やIR、「うめきたプロジェクト」など、矢継ぎ早に打って来た経緯があります。「経済を成長させて、税収を拡大させる」ということが大前提になっているのです。「税収を拡大すれば、その辺のコストも回収できる」ということです。しかし、「これだけ経済成長する」という部分が大阪市民に信用されたかどうか、ということが、今回の住民投票の選挙戦で感じられたことです。
ミスリードを仕掛けるような「4分割で218億円コスト増」報道の影響も
飯田)コストの面では、「大阪市を4つに分けると」という曖昧な前提の試算で、「218億円のコストが余計にかかる」という報道がされました。結局、それは特別区にせずに、4つの政令市にしたときの話だということでしたが、この報道によって、「都構想は損をするではないか」ということが蔓延したと一部では言われています。
須田)それについても、馬場幹事長に質問したところ、「後味が悪くすっきりしない」という答えでした。意図的にミスリードを仕掛けるような報道が、今回の住民投票を後味の悪いものにさせてしまったと言えるのではないでしょうか。
飯田)今回は選挙とは違うとはいえ、一部、公選法の規定も適用しながらやったわけですから、メディアの責任も問われなければいけないかも知れませんね。
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