『おらおらでひとりいぐも』老いと孤独を軽やかに描いた人間讃歌
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第930回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、11月6日から公開の『おらおらでひとりいぐも』をご紹介します。
シニア世代から圧倒的支持を誇るベストセラー小説、待望の映画化!
55歳で夫を亡くした後、主婦業の傍ら執筆し、63歳で作家デビューした若竹千佐子の同名小説を、沖田修一監督が映画化。
第158回芥川賞と第54回文藝賞をダブル受賞し、シニア世代に圧倒的な支持を得たベストセラー小説が、ついにスクリーンに登場しました。
『おらおらでひとりいぐも』のあらすじ
突然、夫に先立たれ、ひとり孤独な日々を送ることになった75歳の桃子さん。その日常は、寝床から這い出して朝ごはんを食べ、テレビに向かって独り言を呟き、昼ごはんを食べて散歩して、夕ご飯の支度をして食べて寝る。その繰り返しだ。
ある日、いつものように近所の図書館で借りて来た本をむさぼり読み、地球46億年の歴史について調べていた桃子さん。すると居間のちゃぶ台に、3人の人影が。
3人は、桃子さんの“心の声”が分身となって現れた“寂しさ”だと言うが、“寂しさ1・2・3”と話していると、若き日の出来事が思い出されて来る。そして桃子さんの孤独の生活は、賑やかな毎日へと変化して行く……。
『おらおらでひとりいぐも』のみどころ
主人公の“現在の桃子さん”を演じるのは、本作が15年ぶりの映画主演となる田中裕子。不安や寂しさを受け入れて力強く歩みを進める桃子さんを、可憐に軽やかに演じています。
また若き日の“昭和の桃子さん”役に蒼井優、桃子さんの“心の声=寂しさ1・2・3”に、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎。……というコトは、5人全員が“桃子さん”!?
奇想天外な設定のもと、逞しくもユーモラスな桃子さんの日常が、まるでジャズセッションのように奏でられます。
“寂しさ”を擬人化したり原始人の暮らしをアニメーションで表現したりと、原作の世界観をうまく取り入れながら、自由な発想が随所に見受けられる本作。そのチャーミングな作風は、独自の遊び心と鋭い洞察力を持つ沖田修一監督ならではといったところ。
私は私らしく、ひとりで生きる。賑やかな孤独を楽しむ桃子さんの姿に、きっとあなたも元気と勇気が湧いて来るはず。
<作品情報>
『おらおらでひとりいぐも』
2020年11月6日(金)から全国ロードショー
原作:若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(河出文庫)
監督・脚本:沖田修一
音楽:鈴木正人
主題歌:ハナレグミ「賑やかな日々」(スピードスターレコーズ)
エグゼクティブプロデューサー:豊島雅郎、濱田健二
プロデューサー:竹内文恵、西ヶ谷寿一、西宮由貴
共同プロデューサー:森重宏美
ラインプロデューサー:吉崎秀一
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
美術:安宅紀史
録音:矢野正人
編集:佐藤崇
助監督:海野敦
装飾:山田智也
衣装:纐纈春樹
ヘアメイク:田中マリ子、石田伸
音響効果:伊藤瑞樹
スクリプター:押田智子
VFXスーパーバイザー:オダイッセイ
アニメーション:四宮義俊
フードスタイリスト:飯島奈美
音楽プロデューサー:安井輝
宣伝プロデューサー:森朋子
プロダクション統括:木次谷良助
制作プロダクション:東映東京撮影所
制作協力:東京テアトル
企画・制作・配給:アスミック・エース
出演:田中裕子、蒼井優、東出昌大、濱田岳、青木崇高、宮藤官九郎、田畑智子、黒田大輔、山中崇、岡山天音、三浦透子、六角精児、大方斐紗子、鷲尾真知子
(C)2020「おらおらでひとりいぐも」製作委員会
公式サイト https://oraora-movie.asmik-ace.co.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/