【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第966回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、1月8日公開の『大コメ騒動』をご紹介します。
井戸端から社会を変えた、日本女性の物語
1918年、大正浪漫華やかかりしころ。富山県の貧しい漁師町で起こった「米騒動」。
日本の女性が初めて起こした市民運動とも言われる出来事で活躍した女性たちにスポットを当てた映画『大コメ騒動』が、全国公開となりました。
笑いあり、涙あり! 実話を元にした、痛快エンタテインメントです。
『大コメ騒動』のあらすじ
時は大正7年。17歳で漁師の利夫のもとに嫁ぎ、3人の子の母となった松浦いとは、富山の貧しい漁師町で米俵を浜へと担ぎ運ぶ女仲仕として働きながら暮らしている。幼いころから勉強が得意で聡明な彼女は、浜のおかか(女房)たちからの人望も厚かった。
おかかたちは、家事、育児、そしてそれぞれの仕事をこなしながら、夫のために毎日一升のコメを詰めた弁当をつくって漁へと送り出しているが、悩みのタネは、高騰するコメの価格。
家族に腹一杯コメを食べさせたくても買えない状況に困ったおかかたちは、コメを安く売ってくれるよう米屋に嘆願するも失敗してしまう。
この騒動は、地元新聞記者により報じられ、それを大阪の新聞社が“女一揆”と書き立てたことから、騒動は全国へと広まって行く。そしてある事故をきっかけに、我慢の限界が来たおかかたちは、さらなる行動に出る……。
『大コメ騒動』のみどころ
主人公・松浦いとを演じたのは、井上真央。聡明だけれど引っ込み思案な女性が、やがては騒動を引っ張って行く存在となる様を、確かな演技力で体現しています。
女性が中心となって展開する物語だけに、いとの姑・タキ役の夏木マリをはじめ、鈴木砂羽、舞羽美海、冨樫真、吉本実憂、工藤遥など、バラエティに富んだ女優陣の活躍は見逃せません。
また、富山県が舞台の作品ということで、富山県出身の俳優たちが一堂に集まっているのも見どころのひとつ。おかかたちのリーダー・清んさのおばば役に室井滋、ストーリーテラーとなる富山日報の記者役に立川志の輔。
さらには西村まさ彦、柴田理恵、左時枝、内浦純一たちによる富山弁での熱演に注目です。
ますます広がる格差、フェイクニュースによって動く世論、そして社会を変えようとする女性たちの声。本作で描かれている出来事は102年も前のことでありながら、どこか現代社会で起こっていることと通じる部分を感じずにはいられません。
しかし、決してシリアスになりすぎず、ユーモアを混じえた娯楽活劇として見応えあるものとなったのは、『釣りバカ日誌』『超高速!参勤交代』でもメガホンを取った本木克英監督の手腕によるものでしょう。
新年の幕開けにふさわしい、パワフルな1作です。
<作品情報>
『大コメ騒動』
2021年1月8日(金)から全国ロードショー 1月1日(金)から富山県にて先行公開
監督:本木克英
脚本:谷本佳織
音楽:田中拓人
主題歌:米米CLUB「愛を米て」(2021年1月6日CDリリース/Sony Music Records)
出演:井上真央、三浦貴大、夏木マリ、立川志の輔、吹越満、鈴木砂羽、舞羽美海、左時枝、柴田理恵、木下ほうか、西村まさ彦、中尾暢樹、冨樫真、工藤遥、吉本実憂、内浦純一、石橋蓮司、室井滋
プロデューサー:岩城レイ子
プロダクション統括:木次谷良助
配給統括:増田英明
キャスティングプロデューサー:福岡康裕
音楽プロデューサー:佐々木次彦
ラインプロデューサー:石川貴博
アシスタントプロデューサー:谷口夏美
撮影:南野保彦
美術:倉田智子
照明:江川敏則
録音:山本研二
装飾:鎌田康男
編集:川瀬功(J.S.E.)
整音:小林喬
音響効果:堀内みゆき
メインタイトルデザイン:赤松陽構造
スタントコーディネーター:東山龍平
VFXスーパーバイザー:鎌田匡晃
スクリプター:小林加苗
俳優担当:高橋雄三
助監督:井上昌典
制作担当:曽根晋
プロダクションマネージャー:杉崎隆行
プロダクション協力:東映東京撮影所
製作プロダクション:エース・プロダクション
配給:ラビットハウス、エレファントハウス
協賛:池田模範堂、YKK、北陸銀行
(C)2021「大コメ騒動」製作委員会
公式サイト https://daikomesodo.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/