ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月21日放送)に東京大学公共政策大学院教授・政治学者の鈴木一人が出演。第46代アメリカ合衆国大統領となったバイデン氏の就任演説について解説した。
ジョー・バイデン新大統領就任~国際協調を表明
日本時間1月21日未明、民主党のジョー・バイデン氏が首都ワシントンの連邦議会議事堂で宣誓し、第46代アメリカ合衆国大統領に就任した。
飯田)就任演説では、「同盟を修復し、世界に再び関与する」と、国際協調を表明しておりますが、ご覧になっていていかがでしたか?
アメリカの分断を修復しなければならない~「まずは国内」という演説内容
鈴木)つい2週間前にこの連邦議会議事堂の占拠事件があって、それと同じ場所なのですよね。
飯田)そうですね。
鈴木)あのテラスに暴徒の人たちがワーッと集まって来たところを思い出してしまいました。演説の基調として、「アメリカの闇に対してジョー・バイデンが希望と光を当てる」という構成でした。逆に言うと、内向きで、アメリカのこと、「アメリカが抱えている闇と闘わなければいけない」というものが全体のほとんどでした。国際的な話をしたのは、先ほど紹介された「同盟を修復し」というところだけでした。対外的な意識というよりは、「まずは国内」ということが、強く意識された演説だという印象を受けました。
飯田)何度も何度も、“unite”という言葉を使っていましたよね。
鈴木)“unity”というのがキーワードで、「この分断したアメリカを修復しなければいけない」という危機感が強く出ていたと思います。
現在のアメリカを象徴する、厳戒態勢のなかでの就任式
飯田)今回は厳戒態勢のなかで、盛り上がりどころでも拍手がまばらに聴こえるのは、そもそも人が少ないからだろうなという感じでしたけれどもね。
鈴木)演説中のバイデン氏が見ている先の、ワシントン・モニュメントまでの芝生には20万本の旗が立てられています。これはコロナで亡くなった、40万人亡くなっている方々の半分でしかないわけですが、その方たちの旗です。この20万の旗というのが、まさにいまのアメリカを象徴している。コロナでこれだけの人が亡くなり、そしてホワイトハウスの周辺には人が入れない。それは感染予防ということもありますけれど、暴徒対策で州兵が2万5000人配備されている。フェンスに囲まれ、コンクリートブロックに阻まれ、という、そういうところにバイデン氏がやって来た、というコントラストですよね。アメリカのアグリーな部分が目の前にあって、「醜いところのアメリカと闘うのだ」という姿勢が非常に色濃く出ていた、そういう就任式だったと思います。
アメリカの分断を修復するには長い道のりがある
飯田)バイデンさんを認めなかった人たちが、あの演説を果たして聞いているかですよね。
鈴木)共和党支持者のなかでは、「バイデン氏が正式な大統領ではない」という人が75~85%いるという世論調査もあります。そういう人たちはそもそも認めていないので、演説を聞くこともないし、彼を大統領として認めていません。何人かの共和党の議員は今回の就任式に参列せず、トランプさんが行くフロリダのアンドルーズ空軍基地に行ったということです。そういう意味では、アメリカの分断を修復するには、まだ長い時間と道のりがあるのだと思います。
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