コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月22日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。1月22日に閣議決定された新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案について解説した。

コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか

2021年1月21日、発言する菅総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/actions/202101/21keizaishimon.html)

新型コロナ特措法案を閣議決定

政府は1月22日の閣議で、新型コロナウイルス特別措置法と感染症法の改正案を決定した。営業時間短縮の命令を拒んだ事業者や入院拒否者への罰則を新たに加え、与野党は週明けにも修正協議に入る見通しだ。

飯田)病院から逃げ出した人や時間短縮を拒んだ人への罰則ということですが。

コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか

「大阪コロナ重症センター」で研修する看護師ら=2020年12月11日午前11時9分、大阪市住吉区の大阪急性期・総合医療センター 写真提供:産経新聞社

入院拒否患者への罰則は効果がないのではないか~かつてのエイズの際のキューバでの強制隔離の失敗

佐々木)政府側もなかなか感染が収束しないので、イライラして何とか措置を、ということでこういう法案を出して来たのはわかるのですが、これに「本当に効果があるのか」という疑問の声が出ているのです。公衆衛生学会や疫学会などが反対声明を出しています。話を聞くと、入院拒否に対する罰則を求めると、隠れるだけなのではないかと言うのです。

飯田)そもそもが、と。

佐々木)戦前、ハンセン病で強制隔離という法律があったではないですか。どうなったかと言うと、それを恐れて家族が山のなかに患者を隠して、こっそり食事を運ぶという話がありました。先日、「BuzzFeed」で東大の先生が紹介していたのですが、キューバでかつてHIV患者を強制隔離するという法律がありました。そのころはまだエイズの適切な治療が見つかっていなかったのですが、みんな隠れまくって、逆に感染が蔓延してしまった。ですから、みんながきちんと従って隔離されてくれればいいのだけれども、そこから逃げる人が出ると、ますます街のなかに隠れ感染者が増えてしまうのです。もう1つの問題は、罰則規定ができるということは逮捕することもできるわけです。

飯田)そういうことになりますよね。

コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか

通常国会召集当日を迎え記者団の取材に応じる菅義偉首相=2021年1月18日午前、首相官邸 写真提供:産経新聞社

保健所から警察に通報~保健所のシステムが根底から揺らぐ可能性も

佐々木)警察権力を入れてしまう可能性がある。そうなると、例えば保健所が「PCR検査で陽性になりましたので病院に行ってください」と言っても、その人が逃げてしまうと保健所は警察に通報しなくてはいけなくなる。日本の誇る保健所は素晴らしい公衆衛生のシステムなのです。それは保健所と一般市民との間の信頼関係に基づいて成立するシステムなのですが、そこに警察通報というシステムを入れてしまうと、保健所のシステムが根底から揺らぐのではないかという危惧も言われているのです。

飯田)市民が保健所を忌避するようになってしまうと。

佐々木)そうです。保健所に連絡をした瞬間に、「警察がやって来るのではないか」という不安感を人々が感じるようになるのはよくありません。実際にそうなるかどうかはわかりませんが、そういう危機感が出ているということを、政府は認識するべきなのではないかと思います。保健所は、長年の地方自治体の財政難でかなり人員が減らされているので、そこをもう1度きちんと交付金を増やして拡充するというのが第1です。また、もう1つは罰則規定を入れるならば、まず補償をしなくてはいけないですよね。

コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか

【東京都らが緊急事態宣言を要請】面談後、報道陣の取材に応じる小池百合子都知事(右)、西村康稔経済再生担当相=2021年1月2日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

国なのか、知事なのか、責任の所在をはっきりとするべき

佐々木)もう1つ大事なのは、いまコロナ特措法がないので、新型インフルエンザ特措法でやっているではないですか。この問題で以前から指摘されていますが、主体は知事なのです。知事が自粛要請を出す。ところが、政府は知事に対して調整ができると。総合調整という謎の言葉が書いてあるだけですが。ということは、知事は自分たちが主体でやっているはずなのに、いざやろうとすると、政府がいろいろ言って来る。昨年(2020年)の4月に小池都知事が、今回の新型コロナに対して、「自分が社長だと思っていろいろやろうとしたら、天の声が聞こえて来て、中間管理職になったようだった」と名言を吐かれていました。それと同じように、「誰が主体なのか」ということが相変わらず明確になっていないのです。責任の所在をきちんと、誰がリーダーシップをとってやるのか。国なのか、それとも自治体なのか。責任の所在を明確にしなくてはいけないですよね

飯田)しかも今回、緊急事態宣言の前段階として、「まん延防止等重点措置」というグレーゾーン的なものが出て来ています。これにも罰則規定がついている。

コロナ特措法案~入院拒否患者への罰則は効果があるのか

大阪コロナ重症センター 防護服で看護師ら研修=2020年12月11日午前11時3分、大阪市住吉区万代東の大阪急性期・総合医療センター 写真提供:産経新聞社

日本の法律の「曖昧さ」

佐々木)そうなのです。民主党の玉木さんなどは、緊急事態宣言だけにしろと。

飯田)有事か平時かきちんと分けろと。

佐々木)そこが相変わらず曖昧なのです。日本の法律によくあるパターンで、すべて曖昧なのだけれども、あとは運用で何とかしようというものです。クリアではないが故に、いろいろなものが暴走し始めて、無責任体制のまま戦争に突っ込んでしまったのです。戦前にやっていたことと同じことが起きてしまう。きちんと明文化するものはして行かないとダメだと思うのですが、やはり日本はそういうことがDNAに染み付いているのですかね。

飯田)相変わらず空気で縛ろうとする。

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