ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月22日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。政府が1月21日に提示した国会同意人事案について解説した。
政府が国会同意人事案を提示
政府は1月21日、衆参両院の議員運営委員会理事会で17機関、合わせて56人の国会同意人事案を提示した。日銀審議委員に野口旭専修大学教授、預金保険機構理事長に三井秀範東大大学院特任教授をあてる。今国会で同意される見通しだ。
飯田)国会で同意がないと職につけないという、政府機関の役職の枢要なところというものが多いですが、日銀の人事が注目されています。
佐々木)野口旭さんは、リフレ派の象徴的人物ですけれども、彼が日銀の審議委員に入ったということは大きなニュースですよね。ここに来て、金融政策というか財政出動の考え方は世界的に変わりつつあります。「ウォール・ストリート・ジャーナル」の日本語版を読んでいたら、タイトルがなかなか刺激的なのですが、
『新型コロナ禍、資本主義の修正促すか』
~『ウォール・ストリート・ジャーナル』2021年1月18日記事 より
佐々木)……という記事がありました。
飯田)資本主義の修正。
佐々木)これを書いているのは、ウォール・ストリート・ジャーナルの市場担当のシニアコラムニストの人なのですけれども、そのなかでMMTのことを書いているのです。
飯田)現代金融理論ですね。
中央銀行は積極的に資金供給をする方向に進みつつある~コロナで潮目は変わる
佐々木)何を書いているかと言うと、リフレ派に近いというか、「インフレを起こすまではどこも財政出動していい」という理論です。
「コロナ禍の状況は政府の関与を増す可能性がある。かつて非主流派の経済学派とみられていた『現代金融理論(MMT)』は、政府による放漫財政の理論的基盤を構築した。深刻な経済状況となったコロナ危機の下で、この理論はかなり正確に実行に移された」
~『ウォール・ストリート・ジャーナル』2021年1月18日記事 より
佐々木)各国の中央銀行は……日銀のようなところですが、
「各国中央銀行はインフレを警戒するタカ派から財政支出拡大論者へと変貌し、進んで資金供給を行った」
~『ウォール・ストリート・ジャーナル』2021年1月18日記事 より
佐々木)……ということです。中央銀行は、「財政を均衡させなくてはいけないと言っている人たち」というイメージなのですが、各国とも、そうではなくなって来ている。積極的に資金供給をするという方向に進みつつあるのだということが言われていて、日本もこれについて行かなくてはいけない。
飯田)そうですね。
佐々木)経済学で「何が正しいか、間違っているか」という権利は私にはありませんが、少なくとも各国の中央銀行の考え方は、「コロナで潮目が変わって変化しつつある」という状況を認識しなくてはいけないし、イギリスもアメリカも感染者数が日本とは桁違いですごい状況ではないですか。それでも、ワクチンを12月から打ち始めて、財政出動をガンガンやってお金をばら撒けば、もしかしたら、コロナ後の経済の回復は向こうの方が早いかも知れない。
リーマンショックのときと同じ状況~日本がいちばん後遺症に苦しんだ
佐々木)日本はこれだけ苦労して、自粛して、何とか感染を抑えて来ている。しかし、ワクチン接種が始まるのは遅めだし、日銀、財務省が相変わらず緊縮路線を取り続けると、お金が十分に回らず補償もないまま、結果的に、コロナ後に後遺症がいちばん長引くのは日本、という悲惨な状況になる可能性があります。これはリーマンショックと同じです。あのときも、アメリカはガンガン財政出動して、意外と早く景気回復しました。リーマンショックが起きた当初は、日本には関係ないと言われていて、野村証券がリーマンを買収したことに象徴されるように、みんな日本をあてにしようと言っていたのに、気がついたら、日本がいちばん悲惨な状況になって、その後、長く後遺症に苦しむという状況になりました。今回はこれを何とか避けて欲しいですね。
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