「日本ではワクチンの効果も安全性もわからない」正式な統計データを採らない現状を元厚労省医系技官が解説

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『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』を出版予定(2月16日)の、医師で元厚生労働省医系技官、元WHOコンサルタントの木村盛世が2月8日、ニッポン放送『辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!』に出演。新型コロナウイルスに対する厚労省等の検査体制の乏しさを解説した。

「日本ではワクチンの効果も安全性もわからない」正式な統計データを採らない現状を元厚労省医系技官が解説

Corona vaccine is being tested. Themed picture, symbolic photo: Corona vaccine. SVEN SIMON/DPA/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

統計的に整備された検査体制を整えていない厚労省のデータは「憶測」に過ぎない

辛坊)木村さんのいた古巣の厚生労働省は先週、新型コロナウイルスの2回目の抗体保有調査というものを出してきて、東京都の新型コロナ抗体保有率0.91%。なんとなくものすごくうがった見方だということを承知で申し上げるのですけれども、この数字って、東京都が出してきた別のデータの半分の数字でしかないわけですよ。これって、PCR検査等の陽性者でいまのところ発掘されている数とかなり整合性が高いので、そのあたりの数字が出てくるような調査を……極端なことを言うと、これを本当にどこまで信用していいのかと。単純に言うとそういうことなのですけれども。

木村)データの取り方というのは、日本だけじゃなくて他国もそうなのですが、包括的なデータが取れていないというのが今回の新型コロナウイルスの大きな特徴です。例えば陽性者がいそうな集団に徹底的にやればそこから出てくる陽性率は高くなるわけですし、ほとんど人がいないようなところで検査をすれば、それは陽性率は低くなります。それ故、そうしたことも含めて統計的なプロと一緒に、どうやって検査をしたら本当に全体をうまく捕まえるような検査体制を整えられるかということを厚生労働省はやっていないので、いわゆる、「そのなかで恐らくはこれくらいだろう」という憶測でしかないです。

だから、果たしてどの程度本当に日本で広がっているかということは、ランダムに人を選んで乱数表で住民基本台帳とかから選んで、それを定期的に追っていかない限りは、どの程度広がりを見せているかは実際のところはわからないところはあると思います。

「日本ではワクチンの効果も安全性もわからない」正式な統計データを採らない現状を元厚労省医系技官が解説

英製薬大手アストラゼネカなどのロゴと、新型コロナウイルスワクチンのラベルが貼られた薬瓶と注射器(イギリス・ロンドン)=2020年11月17日 EPA=時事 写真提供:時事通信

他国は非常にデータを取っている

辛坊)仮に厚生労働省の発表を信じるとするならば、東京都においては1%以下しか感染していませんよという話になるわけですが、イギリスに比べると20分の1、アメリカに比べてももっと低い人口当たりの感染率になりますが。日本って欧米に比べるとものすごく緩いロックダウンしかしていないですよね。それはできない法律制度の問題がありますが、現実問題として、欧米に比べて遥かに緩いロックダウンしかしていないのに、本当に感染者が数10分の1だとするならば、そもそもなんでなのという疑問が生じるわけですけれども、先生はどうお考えですか。

木村)もう本当にこれは正直よくわからないです。日本は非常にラッキーだったと思います。多分感染率は非常に低いので。ただそれが「ファクターX」とか言われていますけれども、どういうものなのかということは、是非将来的に解明していただきたいです。

辛坊)これは誰が解明するのですか。

木村)誰が解明するのかわからないです。そういうことも含めて、日本で私がいまいちばん気がかりなデータというのは、ワクチンのことなのですけれども、イスラエルを含めて他国というのは非常にデータを取っていて、それでファイザーのワクチンを打ったところ、どうも、その予防効果というのが思ったよりも低かったということが「BMJ」という(医学)ジャーナルに出ていて。

「日本ではワクチンの効果も安全性もわからない」正式な統計データを採らない現状を元厚労省医系技官が解説

FRANCE - HEALTH - VACCINE ILLUSTRATION PFIZER LABORATORIES=2020年11月18日 Hans Lucas via AFP Photograph by Magali Cohen / Hans Lucas. 写真提供:時事通信社

このままではワクチンが効いているのか効いていないのか検証できない

木村)各国はワクチンを輸入して使うのですが、そこからどの程度の有効性があるのか、それからどの程度の副反応が出るのかというのを追っているのですね。これをやらないと結局ワクチンの有効性や安全性がわからないし、そのデータというのは製薬メーカーにとっても将来のワクチン開発に非常に重要なのです。ところが日本はそれができない。即ち、大掛かりなワクチンの効果判定ということができない状況にあって。

辛坊)なぜできないのですか。

木村)これは、いままでやったこともないし、やる気もないのではないかと思います。キャパシティーもないし。今回、65歳未満に打つというまでには5ヵ月くらい間があるので、是非ここで、ワクチンの効果判定を(やって欲しいです)。これはワクチンを打つグループと打たないグループに分けて、それでどの程度そこから感染が起こるかということを調べる以外にないのですが、このような大規模なランダム化比較試験ということを日本はかつてやったことがありません。最初で最後の機会ですから、是非これを日本でやって欲しいと思います。

そうでないと、今後先ほど辛坊さんがおっしゃった、この統計データは正しいのかどうかに常に疑問が残り、将来的にロックダウンは正しかったのか正しくなかったのか、そういうことは検証しなければならないのですけれども、それを検証するのに基づくデータがどこにもないという状況が続く。即ちワクチンも効いているのか効いていないのかわからない。

日本のいまの状況ですと、効果も安全性に関してもデータは不十分ですので、外国に見習うことがあるとすれば、各国がやっているような、そうした包括的なデータというのをきちんと取っていく。そうでないと、効いているのかいないのか、それとも効果があったのかないのか、何も客観的なツールがないまま議論していくに過ぎないということになります。

番組情報

辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!

月~木曜日 15時30分~17時30分 

番組HP

辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)

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