【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第977回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、2月19日公開の『あの頃。』『愛と闇の物語』をご紹介します。
映画館で観たい!『あの頃。』~何かに夢中になれるって最強!
2000年代初頭。J-POP界を席巻していたアイドルと言えば、「ハロー!プロジェクト」を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
そんな「ハロー!プロジェクト」のなかでも、ひときわ異彩を放った「モーニング娘。」を愛してやまない“モーヲタ”たちの様子を描いた、劔樹人による自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」が映画化されました。
“ハロプロ”に魅了された男たちの笑いと涙の日々を綴った青春エンターテインメントです。
『あの頃。』のあらすじ
大学院受験には失敗。彼女なし、お金なしのどん底生活を送る青年・劔樹人。
ある日、松浦亜弥のミュージックビデオを見たことがきっかけで、「ハロー!プロジェクト」のアイドルに夢中になってしまった彼は、オタ活にのめり込んで行く。
イベントで知り合ったコズミンをはじめ、個性的なオタク仲間と親睦を深めて行く劔は、まるで遅れて来た青春を謳歌するかのように、ハロプロ愛に溢れた日々を過ごす。
しかし時は流れ、仲間たちは個々に、アイドルよりも大切なものを見つけ始める。そして次第に、離れ離れになって行き……。
『あの頃。』のみどころ
本作の原作者であり主人公でもある劔樹人を演じるのは、攻めた作品選びで果敢な役柄に次々と挑み続ける俳優・松坂桃李。
劔氏がハロプロの魅力に目覚めるきっかけとなった松浦亜弥が中学校の先輩だったという縁もあり、本作への出演を快諾。「ハロー!プロジェクト」に青春を捧げるアイドルオタク役を、表情豊かに演じています。
また劔を取り巻く仲間たちには、何ともキャラクターの濃い面々が集結。
プライドが高くてひねくれ者のコズミン役に仲野太賀、石川梨華推しでリーダー格のロビ役に山中崇、自分でヲタグッズを制作してしまう西野役に若葉竜也、ハロプロ全般を推しているイトウ役にコカドケンタロウ、そして、CDショップ店員で劔を最初にトークライブに誘ったナカウチ役に芹澤興人。
狭いアパートに男6人が集まってライブDVDを鑑賞したり、自分たちの“推し”について語り合ったり、恋をめぐってケンカしたり。くだらないことに明け暮れているようで、眩しく輝いて見える彼らの人生を、見事なアンサンブルで体現しています。
そして、劇中で多数使用されているハロー!プロジェクトの楽曲も、見どころならぬ聴きどころ。松浦亜弥の「桃色片想い」の他、モーニング娘。の「ザ☆ピ~ス!」や「恋ING」など、それぞれの楽曲が持つパワーを再認識させられます。
なかでも、現在もハロプロのコンサートで歌い継がれている名曲中の名曲「恋ING」を、ノリで結成したバンド“恋愛研究会。”のメンバーが声の限りに歌い上げるシーンは、“青春”が凝縮された名シーン。
「好き」に向かってまっすぐに突き進んで行く彼らの姿に、何かに夢中になった経験がある人ならば、きっと共感を覚えるはず。
※「桃色片想い」の表記は、正しくは前後に「ハート」が付きます。
コチラも映画館で観たい!『愛と闇の物語』~ナタリー・ポートマンが描く、光を求めて彷徨う家族の物語
イスラエルの作家・ジャーナリストとして知られるアモス・オズの自伝的著書を映画化した『愛と闇の物語』。
1945年、少年・アモスが両親とともに過ごした英国統治下のエルサレムで体験した日々を描いたヒューマンドラマです。
監督・脚本・主演を務めたのは、ずば抜けた美貌と演技力でハリウッド屈指の人気を誇るナタリー・ポートマン。「初めて読んだときから、この本を映画化したいと思った」と語るように、原作との出会いから約7年の月日を経て本作を完成させました。
のちにパレスチナ問題の論客として知られるようになるアモスに多大な影響を与えた母・ファニアに扮した、気品あふれる姿は必見です。
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『あの頃。』
2021年2月19日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
出演:松坂桃李、仲野太賀、山中崇、若葉竜也、芹澤興人、コカドケンタロウ、大下ヒロト、木口健太、中田青渚、片山友希、山﨑夢羽(BEYOOOOONDS)、西田尚美
監督:今泉力哉
脚本:冨永昌敬
音楽:長谷川白紙
原作:劔樹人「あの頃。 男子かしまし物語」(イースト・プレス刊)
製作:鳥羽乾二郎、小西啓介、藤本款、吉田尚子、鈴木仁行、光岡太郎、嶺脇育夫
企画プロデュース:紀嘉久
プロデューサー:杉本雄介、高根順次、田坂公章
ラインプロデューサー:和田大輔
撮影監督:岩永洋
美術:禪洲幸久
装飾:中澤正英、龍田哲児
照明:加藤大輝
録音・整音:根本飛鳥(J.S.A)
編集:佐藤崇
衣装:神田百実
ヘアメイク:寺沢ルミ
音楽ディレクター:山崎ごう
VFXディレクター:呉岳
サウンドミキサー:浜田洋輔
キャスティング:田端利江
助監督:窪田祐介
制作担当:狩野修吾、原田耕治
製作幹事:日活、ファントム・フィルム
制作プロダクション:レスパスビジョン
制作協力:レスパスフィルム
配給・宣伝:ファントム・フィルム
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
(C)2020『あの頃。』製作委員会
公式サイト https://phantom-film.com/anokoro
『愛と闇の物語』
2021年2月19日(金)から全国ロードショー
監督・脚本:ナタリー・ポートマン
原作:「A Tale of Love and Darkness」アモス・オズ
製作:ラム・バーグマン、デヴィッド・マンディル、ニコラス・シャルティエ、アリソン・シェアマー
出演:ナタリー・ポートマン、ギラッド・カハナ、アミール・テスラー
配給:イオンエンターテイメント
原題:A TALE OF LOVE AND DARKNESS
(C)2015 Picture Perfect Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト https://www.aitoyamimovie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/