ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月5日放送)にソシエテ・ジェネラル証券 経済分析担当の会田卓司が出演。FRBが公表したアメリカの経済報告について解説した。
FRBがアメリカの景気は緩やかに拡大と報告
アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は3月3日、「ベージュブック」と呼ばれる最新の経済報告を公表した。このなかで、景気の現状について「ほとんどの地域で緩やかに拡大している」として、前回の1月の報告よりも上向きの判断を示している。
飯田)アメリカの経済は好調になりつつあるということでしょうか?
アメリカの経済の好調を支える3つの理由
会田)上向きつつあると思います。これは3つのものに支えられていると思います。1つ目は、当然ながら大きな経済政策をやって安心感ができているということ。2つ目が、デジタル対応が進んで、コロナ禍でも商品を売ったり、サービスをしたり、そういうデジタル対応がかなりの速度で進んでいるということ。そして、3つ目はやはりワクチンです。5月末までには全成人にワクチンを接種するという目標、相当早いワクチン接種が進んでいますので、それに対する効果への期待、それによって経済も上向きつつあるのではないかと思います。
飯田)1つ目に挙げられた経済政策についてですが、日本円にして200兆規模、1.9兆ドルの予算が下院を通ったと報じられていますけれども、この規模がドカンと出るというのはやはりすごいと。個人給付もやるみたいですね。
コロナは収束に向かうが、政策は拡大して行く
会田)これが安心感につながっているのだと思います。これまでも、日本を上回る規模でしっかりとした経済対策をやり、ワクチンがあってコロナが収束する期待があるなかで、さらに積み増す。「コロナは収束に向かうけれども、政策は拡大して行く」、この2つのギャップがあるからこそ安心感、経済を支えることができているのだと思います。
飯田)バイデン新政権になって、経済閣僚が注目されましたが、FRB議長をやっていたイエレンさんが財務長官になっています。ここは「中央銀行と政府側がガッチリやって行く」というメッセージなのですか?
会田)そうだと思います。イエレン元議長は、当時もハト派と呼ばれる緩和推進派で有名でしたから、それが財政の方に移り、FRBと共同で経済を支えて行く。経済がある程度回復しても、政策は止めない。「まだ行きます」という安心感を伝えているのだと思います。
「政策が続くからこそ、金利が上がって来たのだ」と逆の解釈になって、株価は持ち直して行く
飯田)しかもそれを再三にわたって会見などでかなり明確に言っていますよね。
会田)言っています。これが当然マーケットにも影響して来ています。10年など長めの金利が上昇して、マーケットが将来の政策の継続と、景気の回復をある程度織り込んでいるのだと思います。ただ、それに反応して株価が下がってしまっていますが、いずれは「政策がそれだけ続くからこそ、金利が上がって来たのだ」と逆の解釈になって、株価は持ち直して行くのではないかと思います。
飯田)長期金利が上昇するというと、「国債価格が下がっているのと同義だ」ということで、危ういように報じる向きもありますが、金利が上がるというのは、先々も物価が上がるとみんなが予想していることと同じと考えていいですか?
会田)同じということです。先の景気や物価が上がって行って、経済が正常化しているということを、マーケットは織り込み始めているということですので、裏を返すと、そのくらいの政策を出さなくてはいけないということです。長めの金利が上がるくらいの期待感が出るような政策を出さなくてはいけない。そして実際に、実体経済がそれに追いついて回復すれば、株価も持ち直して行くわけですから、そういう好循環が必要だと思います。
インフレを許して経済の状況の改善を優先する
飯田)その流れに合わせるようにして、物価も上がって行くということですか?
会田)ええ。物価も徐々に上がって、これまでのデフレ気味の世界から、インフレ気味に、ただ、当然インフレと言っても過度にならない程度のインフレ経済に変わって行くのではないかと思います。
飯田)確かに、イエレンさんの時代に「高圧経済」という、少し物価は高いけれども、経済も成長して行く方がいいという話もありましたよね。
会田)ありました。さらに、これまでよりもインフレに対しては、許して行こうと。インフレが少し出ても、少し許して経済状況の改善を優先しようという政策の枠組みに変わって来ているのが実態です。
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