1.9兆ドルの追加経済対策のツケが回って来る~バイデン政権
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月16日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。コロナ禍におけるバイデン政権の経済政策について解説した。
コロナ禍におけるアメリカのバイデン政権の経済対策
アメリカのバイデン大統領は3月11日、1兆9000億ドル(約200兆円)規模の追加経済対策法案に署名した。
飯田)追加対策の柱、現金給付は1人最大1400ドル(約15万円)で、年収7万5000ドル(約810万円)までの個人は満額受給できるというものです。日本から見るとすごいなと思いますね。
クラフト)この15万円相当の現金給付が注目されていますが、その他にもあります。失業手当がさらに3万円ほど拡充しますし、月2万5000円ほどの食料手当、そして家賃支援が2.2兆円と盛りだくさんです。ですので、かなりの経済効果があろうかと思います。
飯田)盛りだくさんですね。
今回の給付金が株価上昇にどこまで寄与するかに注目~前回ほどにはならない
クラフト)ちょうど1年前、2020年4月に1200ドルの給付金があり、それによって株価が大きく上昇しました。給付金の余剰資金を株投資に充てる人が、若者を中心に多かった。今回は、それがどこまで株価上昇に寄与するかが注目されています。
飯田)どう見込む人が多いのですか?
クラフト)今回も当然、ある程度の効果はあると思います。ある銀行の世論調査では、29歳以下にアンケートしたところ、「もらった給付金の4割程度を株式投資に回す」という回答もあります。ある程度の株式上昇に寄与するとは思いますが、前回と若干違うのが、株価がすでにだいぶ上がっていて割高感があることと、金利高で警戒感が出て来ているということ。また、前回はコロナ直後の給付金で、まだ余力があったのに比べ、アメリカ全土を見たときに、預金比率は上がっているものの、低所得層の預金比率は上がっていないので、余剰資金が少ないと考えられます。そうなると、株式投資に回せる金額が前回に比べると今回は少ないのではないかと予測されます。その結果、一定の株高に寄与するにしても、前回ほどの大幅な上げには至らないと思います。
低所得者に給付金を配ったアメリカ
飯田)日本で給付金を出したときにも、「配ったところで貯金に回ってしまうのではないか」という批判もありました。低所得層に関しては、消費傾向が高いということですか?
クラフト)高いと思いますね。日本は全員に配って問題になったわけですが、アメリカの場合は、前回の税金の申告を見て低所得者に配るということでしたので、それなりに一定の効果が見られました。年収800万円が低所得なのかどうかという議論もありますが、いずれにしても、400万円以下あるいは500万円以下の低所得層は株式投資よりも生活に回さざるを得ない。そういうところでの支援には寄与するのではないかと思います。
中長期的には財政出動に回したツケが回って来る~その後増税も
飯田)各国、財政を拡大し、経済を救って行こうということでやって行って、アメリカに関しては、先ほどあったように長期金利が上昇していて、インフレの危険が高まっている。元米財務長官のローレンス・サマーズ氏は「大き過ぎるのではないか」と批判していますが。
クラフト)いまのコロナ禍で、額は別として、一定の支援は絶対に必要ですので、仕方ないのですが、長期的にはこのツケが回って来る。ゼロ金利時代では、政府がお金をたくさん借りても財政出動に回す部分に関しては、それほど負担はないのですが、これが2%~3%のインフレになって来ると、金利からなる財政負担が大きくのしかかって来ます。一般的なエコノミストの大半は、「高インフレ時代は来ない」と、「2%~3%のインフレはもうない」と言っていますが、大半の人が大丈夫だと思っているときに、予想外の展開が起こり得ます。私は、中長期的には危惧しています。おそらくバイデン政権も、財政出動のあとに増税に乗り出す可能性があります。
飯田)なるほど。
クラフト)先ほど言った、株高にあまり大きく寄与しないのではないかという点も、今後、増税や金融規制が来たときに株高抑止になる可能性がある。株価がどんどん上がる、日本で言うと株価が3万5000円や4万円になるようなことはなく、せいぜい3万2000円~3万3000円くらいではないかと思っています。
中間選挙前に増税策をバイデン政権が打ち出せるかどうか
飯田)増税というのは、もともとバイデンさんが公約等もしていましたが、富裕層中心になるのでしょうか?
クラフト)そうです。基本的に4000万以上の所得世帯をターゲットにしているというところですが、それと金融規制を組み合わせると、株価の上昇幅が抑えられるのではないでしょうか。ただ、中間選挙もあり、ここで勝たないとバイデン政権は終わりですから、はたして中間選挙前に増税策を打ち出して行けるかというのも不安です。これを後送りにすると余計、財政に負担がかかって金利が上昇してしまいます。そこの頃合いをバイデン政権としてどう見計らうかが注目です。
デフレが続く日本
飯田)その議論を引き合いに出しながら、日本でも財政出動はやめるべきだという意見も出て来ますが、日本はいつまでもインフレにならないどころか、デフレが続いていますよね。
クラフト)確かにデフレ国としては……。日本を見て各国のエコノミストも、あるいはデジタル化を見越して「インフレにはならない」と言っています。しかし、必ずしもそうはならないですし、日本も2014年には、消費者物価が大きく跳ね上がった経緯もありますから、大丈夫だと思っていると危険なので、そこは要注意です。でも確かにデジタル化でインフレになりにくいということは間違いないと思います。
飯田)その辺のバッファーがデジタル化で「少し増えたかな」くらいの感じですか?
クラフト)そうですね。先ほども言ったように、ポストコロナで構造変化がいろいろ起きます。それによって業界ごとに物価が大きく上がるところもあれば、下がるところもある。相対的にどこまで上がるのか、または、もっとデフレになるのかということを、これから見極めて行く必要があります。これはエコノミストでもなかなか読みにくいので要注意です。
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