イランの「米への攻撃画策」が日本にとって厄介なことになる理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月23日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。イランが米ワシントンの陸軍施設への攻撃を画策している恐れがあるというニュースについて解説した。

イランの「米への攻撃画策」が日本にとって厄介なことになる理由

イランのロウハニ大統領[17日にイラン大統領府が提供]=2021年2月17日 AFP=時事 写真提供:時事通信

イランがアメリカのワシントンへの攻撃を画策か

AP通信は3月21日、複数のアメリカ情報当局高官の話として、イランがアメリカのワシントンの陸軍施設への攻撃や陸軍高官殺害を画策している恐れがあり、アメリカ側が警戒を強化したと伝えた。

飯田)国家安全保障局(NSA)が1月、攻撃についてやり取りするイラン革命防衛隊の通信を傍受した。現在も脅威が継続しているかどうかについては、不明とのことです。

イランの「米への攻撃画策」が日本にとって厄介なことになる理由

27日、米ホワイトハウスで話すバイデン大統領(ロイター=共同)=2021年2月27日 写真提供:共同通信社

世界の3大戦略地域に軍事リソースを分けているアメリカ~東アジアに集中して欲しい日本

奥山)私はこういう話を聞くたびに、不安になります。アメリカにとって、「現在の脅威は中国にあり」ということで、ブリンケン国務長官が日本に来て「2プラス2」をやりました。アメリカには、いまは集中して中国に対峙していただきたいのです。ところが今回のようなことがあって、アメリカの注意がイランへ向いてしまうということは、リソースもそちらにかけられてしまうということになります。これは日本にとって、大変厄介なことです。私が専門で研究している地政学の話ではありませんが、アメリカは1つの地域だけではなく、3大戦略地域にリソースを分けています。まずヨーロッパに軍隊を置いていますし、最大は中東でして、兵隊も出しています。そして、日本も含めた東アジアです。

飯田)そうですね。

奥山)いまは中国にアメリカ自身も対抗するため、東アジアの地域に集中して欲しいのです。「中国に意識を集中して欲しい」ということが日本の願いであるなかで、イランがこういうことになると、そちらに意識とリソースが集中してしまいます。そうすると、中東和平を最も願わなければならないのは、むしろ日本なのではないかということです。

飯田)なるほど。

奥山)アメリカのなかに「安保コミュニティー」というものがあり、安全保障を専門にやる人がそれぞれ3大戦略地域にいます。中東担当者は、「イランも大変だしイスラエルもあるし、中東がいちばんだ」となります。現在のアメリカにとっての最大のライバルは中国なので、東アジア担当の人たちが最も注目を集めなければならない。しかし、中東担当、ヨーロッパ担当の人たちが「いや、うちのほうが大切だから」と言って来るのです。3大地域の担当者同士で引っ張り合いをしている部分があります。中国に対してしっかり対応してもらいたい日本としては、東アジア担当の人がもっと声をあげて「こっちに注目してくれよ」というようにならなければなりません。イランの話にアメリカの目が向き過ぎないように、「対中国をしっかりやりましょう」と働きかけることが、我々に必要なことなのではないでしょうか。

イランの「米への攻撃画策」が日本にとって厄介なことになる理由

4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)=2020年11月4日 写真提供:共同通信社

アメリカの世論に対しても「東アジアに注目することがアメリカの国益にもなる」ということを日本は発信するべき

飯田)対ソ連もあったので、ヨーロッパにも人が豊富に配置されている歴史があります。

奥山)アメリカは2001年の「9・11」があってから、対テロ対策を始めました。その間に中国が台頭して、いまこのようなことになっていますから、それを引き戻さなければならないのです。中国に対抗するために、「もう少し東アジアに人材を配置してくれ」と、日本側からも発信して行かなければならない状況にあると思います。

飯田)中東に対して、特にイランに対してというところで言うと、当然、核合意の話が出て来ますよね。常任理事国プラスドイツという枠組みでやっていますが、なぜここに日本が入っていないのでしょうか?

奥山)日本はイランと仲よくやっていますから、そういうところでは、逆に日本がうまく仲立ちになるという動きが必要になるのではないでしょうか。「そっちを見ている場合ではないぞ」と。アメリカ、そしてアメリカの世論に対しても、「イランばかりではなくて東アジアに注目しないといけないよ」と、そうしないとアメリカの国益にもならないよということを発信する力が日本にも必要です。

イランの「米への攻撃画策」が日本にとって厄介なことになる理由

イランの最高指導者ハメネイ師(右)と会談する安倍晋三首相=2019年6月13日、イラン・テヘラン[ハメネイ師のツイッターより] 写真提供:時事通信

日本からイランに働きかけることも今後は必要

飯田)2019年は「日・イラン外交関係樹立90周年」だったということもあり、当時の安倍総理がイランを訪問して最高指導者のハメネイ師とも会いました。これはなかなかないことだと思います。

奥山)画期的なことをやってくれたということですね。ああいうところで日本が果たせる役割が、中東にはまだあるのではないかと思います。

飯田)「日章丸」の例を見ても、かつて欧米列強の封鎖をモノともせずに石油を持って来たとか、そういうところで、イランとの間での貸し借りのような独自のものがあるわけですね。

奥山)アルジェリアなどもそうですが、日本が無理してつくってくれた施設の恩を忘れずに、次の契約を取るときは日本優先でやってくれるところがあります。情の部分は日本の強みかと思います。日本には人的交流がイランとはありますから、そういう強みでイランに対して「いま中国が大変だから少し抑えて」と働きかけることが、これからは必要だと思います。

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FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

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