ワクチンの供給量が十分でも「打つための」人手が足りない日本の問題
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月13日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。高齢者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されたニュースについて解説した。
新型コロナワクチン~高齢者への接種開始
65歳以上の高齢者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種が4月12日から始まった。厚生労働省は今後、自治体への配送量を増やして行く方針で、6月中には高齢者全員が2回接種できる量を配送する見通しとしている。
飯田)実際には自治体から接種券が届いて、電話、ネットなどで予約を行い、そして自治体が指定した接種会場で受けるという形になっている。厚労省は「量」というところを強調していますね。
ワクチンの供給量が足りてもそれを打つ人が足りない日本~いかにスピードを以て接種できるか
クラフト)海外からの接種量をいくら供給できるかというところに焦点が当たっているのですが、日本だと問題は、接種する人(受ける人に注射する人)の数が少ないので、いくら供給が足りていても、それをいつまでに打てるのかということが不安です。政府は「これだけのワクチンを確保した」、「あとは地方自治体の責任だ」という言い方をしていますが、これには若干、違和感があります。
飯田)一方で、自治体側からすると、「供給量がいくつかわからないから、予約を取ろうにも取りきれない。政府がやってくれなくては」というボールの押しつけ合いのようなところもあります。
クラフト)ちなみに、アメリカは7月までに国民の9割が接種を終えます。そうすると、アメリカでのいままでの需要が世界に流れて行きますから、急にワクチンの数が増えます。日本政府としては、「夏場には十分なワクチンが確保できる」という見込みだと思います。問題は、「いかにスピードを以て国民に接種を行うか」というところだと思います。アメリカとイギリスでは一般のボランティアや薬剤師でも注射を人に打つことができるので、早い。日本はそれができないので、未だに医療従事者400万人の約1割しか接種できていないという状況です。
日本では医療従事者以外は打てないのでスピードが追い付かない
飯田)ツイッターで“ホシサン”さんから、「ワクチンを医師、看護師以外の人が打つのは日本では受け入れられない気がします」というご意見もいただいております。この辺り、有事と平時の切り分けということにもなって来るのでしょうかね。
クラフト)日本では感染が騒がれていますけれども、アメリカと比べれば、感染者数が圧倒的に少ないわけです。死者数も少ない。そういう意味では、アメリカに比べると危機感というのは違いがあると思います。あともう1つは、日本では皮下注射の場合、角度を持って入れないといけないので、それなりの専門性が必要です。しかし、筋肉注射の場合は、「プスッ」と刺して、雑なことを言うと、誰でもできてしまうところがあります。そういうやり方が雑なアメリカ人には受け入れられるけれども、きめ細かい日本人にはなかなか受け入れられないというところがあるのだと思います。
ワクチン接種を早く普及させる議論も必要
飯田)ただ、感染を抑止して行くためには、ある程度のスピードも求められるところです。スピードとある意味のきめ細かさというところは、少しトレードオフなのかも知れないですね。
クラフト)そこの議論があまり日本ではされていないですよね。「いくら確保できたのか」という量のところも大切ですが、「それをどうやって普及させて行くか」というところの議論も必要ではないでしょうか。政府も軽はずみに「医療従事者ではない人が打ったらどうだ」と言っても批判されるので、怖くて言えないところがあるでしょう。そこはいろいろ議論しながら、いいバランスを見つけなければいけないのかなと思います。
「まん延防止等重点措置」の適用が株価に悪影響
飯田)経済に対する影響がいろいろ言われていますが、野村総研のエコノミストの木内登英さんが試算したところによると「約5500億円の損失」というようなニュースが出ています。年間でGDPの0.1%ほどではないかという指摘があるのですが。
クラフト)緊急事態宣言が解除されて、ここでやっと経済も回復できるかと思ったところに、また「まん延防止等重点措置」が適用されて水をかけられた部分があります。そこの部分も株価に反映して、直近2~3週間は日米の株動向が乖離し、アメリカ株の方がアウトパフォームをしています。これもおそらくワクチンの普及動向の見通しが大きく関わっているのではないかと思います。
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