“やりたい放題”中国になくて日本が持っているもの~「香港国家安全維持法」施行1年

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月1日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。6月30日で施行から1年が経った「香港国家安全維持法」について解説した。

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は3月6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

「香港国家安全維持法」施行から1年

香港で反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」の施行から6月30日で1年となった。この法律による逮捕者は、6月29日までの1年間で117人に上っている。

飯田)廃刊した蘋果日報(アップル・デイリー)の親会社であるネクスト・デジタルも、7月1日から事業運営停止を決めたということも出ています。露骨に弾圧ということになって来ましたね。

峯村)香港は「一国二制度」と言われていましたが、この法律ができた段階で、中国政府は出先機関である香港の「国家安全維持公署」をつくりましたそれからは、香港政府ではなく、中国政府が直接香港を統治するような状況が始まっています。その前から目の敵にしていたのが、アップル・デイリーだったので、ここは徹底的に叩くという中国政府の姿勢の現れとみていいでしょう。

大陸と同じ状況になりつつある香港

飯田)密告も10万件ほどという報道も出ています。

峯村)完全に中国大陸式ですよね。香港は報道の自由がかなりあって、多くの外国メディアも香港に支局を置いていたのですが、いまはその状況も変わりつつあります。ニューヨーク・タイムズも香港から撤退してソウルに移っていますし。

飯田)朝日新聞はありますよね。

峯村)あります。

飯田)特派員の方がきょう(1日)も精力的に記事を書いていますが、この辺りも中国本土と同じ緊張感になって来るわけですね。

峯村)ほとんど変わらない感じですよね。私も2年前に香港のデモを取材しに行きましたけれども、警察の攻撃的な弾圧のやり方を見ていると、中国大陸の方とほとんど変わらない緊張感を覚えました。

域外適用もある国家安全維持法

飯田)今後は日本人も含めて、海外メディアの記者の拘束等々も考えなければなりませんか?

峯村)出て来るでしょうね。実際に私が取材したデモのとき、インドネシアの記者が右目にゴム弾を受けて失明するという犠牲が出ています。私も現場のすぐ近くにいたのですけれども。

飯田)そうですか。

峯村)拘束などもあり得るわけです。香港政府の人間にインタビューしたことがあるのですが、国家安全維持法の構成要件のうちの1つに、「国家の安全を損なう意図があったということを、我々警察が判断したら、その段階でアウト」という規定があるのです。そうなると、例えば私自身が何も意図せず書いた記事でも、「この記事は国家の安全を損う意図があった」と言われてしまったら、「いやいや、ないよ」と言ってもダメだということになってしまうので、どうしようもないですよね。予測不可能の世界で、「ここまでだったら行ける、ここまでならダメ」ということがわからなくなってしまっているので、そこは本当に怖いですよね。

飯田)線引きが恣意的であると。そして、域外適用もあるということになると、我々がこうして日本のラジオで喋っていることだって、構成要件に該当する可能性があるということですよね。

峯村)もちろんそれは十分あります。どこで喋っていようが関係ありません。十分その容疑にはなります。

トランジットで香港空港を使っても捕まる可能性が

飯田)アップル・デイリーの社説を書いていた人が、イギリスに向かおうとした直前で逮捕されました。空港で逮捕されたということになると、乗り換えもしづらくなるという。

峯村)香港では、当局が危険人物と判断したら出国を止められるという新しい法律ができているので、トランジットでも十分適用されてしまいます。

監視カメラと電子マネーですべての行動をキャッチされている

飯田)「内に対して厳しくやる」ということに関する不満が、中国本土も含めて高まって来るようなことはないのですか?

峯村)中国本土はデジタル監視社会で、AIと連動させたカメラが全部で2億台設置されていると言われています。4~5秒で20億人の顔を認識できるというシステムなので、容疑者だけではなく、我々外国メディアも、入国した瞬間にトレースされてしまいます。そう考えると取材も独自にはできないですよね。一方で、中国の一般市民は「犯罪が減ってよかった」と思っているのです。そういう効果があるのは確かなので、マイナスだけではなく、「プラスだ」という評価もあります。

飯田)自由と引き換えだけれども、財布を持たなくても買い物に行けるというような便利さの部分が進化している側面もある。もともと自由を知らなければ、「それはそれでいい」という価値観の話になりますね。

峯村)私は嫌ですけれどもね。

飯田)そうですね。

峯村)電子マネーで、どこで何を買ったのかという履歴がすべてわかりますし、紐付けたら24時間365日、すべての行動をキャッチされているわけですから、息苦しいどころではないですよね。

飯田)実際に、社会評価スコアのようなものでお金を「借りられる、借りられない」ということも含めて、いろいろなところで応用されてしまっているという話があります。

信号無視をすると違反者の個人情報が街頭モニターに晒される

峯村)横断歩道を赤信号で渡って信号無視をしても、全部写真を撮られるのです。渋谷の駅前に街頭モニターがありますが、ああいうところに「ボン」と映し出されて、違反した人の身分証番号、電話番号を晒されるという、まるで文化大革命のようなことが各地で行われています。「それが嫌ならば信号を守りましょう」と。確かに、中国の交通マナーは本当に酷いので、それを正すという意図があるのかも知れませんが、やり過ぎではないかと思います。

香港のホテルに開設された中国の治安機関「国家安全維持公署」の看板(中国・香港)=2020年7月8日 写真提供:時事通信

中国になくて日本が持っているものは「同盟国」~連携して中国と向き合うことが必要

飯田)しかし、そこで蓄積したデータでAIが進化してしまう。それを使って自立型の兵器などもつくるようになって来ていますよね。

峯村)先日、朝日新聞の「経済安保 米中のはざまで」の企画で、中国国営の翻訳会社を取材したのですが、その子会社にAIを使った翻訳機能を開発している会社があるのです。100ヵ国語以上のサイトを全部集めて翻訳して、まさにビッグデータを集めているのです。それで翻訳の精度を高める。その会社の幹部は、「軍事情報の90%くらいは公開情報から集められるのですよ」とプロモーションで言っています。AIに関して言うと、中国はプライバシーの概念が我々より低いので、やりたい放題やっている状況です。

飯田)そこと向かい合うと言っても、全部のリソースを割いてもどこまで行けるかというところです。価値観を同じくする国々で手を取り合って行かないと、対応できなくなりますよね。

峯村)単純に人口だけで言っても、日本だけで言うと10分の1なのです。今、飯田さんがおっしゃったように、中国になくて日本が持っているものというと、やはり仲間なのです。つまり同盟国。中国は一応、同盟国として北朝鮮があるのですが、微妙な同盟です。日本やアメリカ、オーストラリアというような、同じ価値観を持った国々で連携をして、中国とどう向き合うかというところが重要になると思います。

中国にとって「統一戦線工作」を仕掛けやすいのは日本

飯田)経済界などで中国に寄って行くところもある日本というのは、弱い脇腹だと思われているのではないですか?

峯村)そうですね。中国の得意技でいうところの分断工作、「統一戦線工作」と言うのですが、「なかの勢力を二分する」というところで言うと、それをやりやすい環境にはあります。

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