ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月5日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。7月4日に投開票された東京都議会議員選挙について説明した。
東京都議会議員選挙~自民党は自分たちの地盤で組織が固められたのか
任期満了に伴う東京都議会議員選挙が7月4日、投開票された。都民ファーストの会は第1党を維持できず、14議席減らして31議席。一方、自民党は8議席増えて33議席で第1党となった。しかし、候補者全員23人が当選した公明党と合わせても56議席で、自公で過半数の64議席には届かなかった。
飯田)秋までに衆院選が予定されているということで、前哨戦としても注目されました。どうご覧になりましたか?
須田)表に出て来ませんでしたが、よくも悪くも小池劇場は継続中だと思います。選挙戦に突入してからも小池さんは入院中でしたが、小池支持を軸に選挙戦は展開されて行ったと思います。ですから、自民党、公明党ともに小池知事にしてやられた。とは言っても、公明党は、悲願である「立候補者23人全員当選」という記録は途絶えることなく今回も達成できましたし、公明党としては、よくやった選挙戦ということになるのでしょう。
飯田)公明党としては。
須田)自民党が本来、獲りたかった議席が獲れなかった。立川から東は自民党の完全な地盤なのです。おそらく、そこで相当、獲れるという想定をしていたのですけれども、獲りこぼしているのです。「自分たちの地盤で、組織がきちんと固められたのかどうか」というのが1つのポイントだと思います。
都議会が開かれる7月23日はオリンピックの開会日
飯田)その辺りの要因として、いろいろなことが言われています。オリンピックに対しての成否であるとか、経済対策、ワクチン接種の進み具合なども指摘されていますが。
須田)オリンピックは大きな影響を与えたのだろうと思います。対立軸という点で言うと、「オリンピックの開催を延期するべきではないか」と主張する政党と、「予定通りに」と主張する政党に分かれた。しかし、今回の都議会議員選挙、議員の任期は4年ですから、本来ならば、「これからの4年間」を考えて投票すべきなのでしょうけれども、すぐ目の前にあるテーマ、テーマと言っても都議会が開かれるのは7月23日なのです。
飯田)オリンピックの開会日ですね。
須田)そうです。ここでどう投票しても、オリンピックを開幕するかどうかというところにはほとんど影響がないのです。「そのことを都民が知っていたのかどうか」ということが疑問です。
有権者は目の前にある問題に関心を持っている~政権交代に可能性がない分、野党は躊躇なく思い切った公約を掲げられる
須田)もう1点は、年内に行われるであろう総選挙に大きな影響を与えるということです。与党が考えなくてはならないのは、いまの有権者は目の前にある問題に対して興味関心を持っているので、それ以降の話をいくらしても響かないということです。ポピュリズムの権化のようなものもあるのですが、その点をどう意識するのか。
飯田)有権者の関心。
須田)そういう点で言うと、「政権交代が起こる」という可能性は限りなく0に近いわけですが、野党にしてみると、言いたい放題になるのです。どうせ実現しなくていいのですから。例えば「消費税を0%に減税」など、与党としては、それを公約に掲げたときに、どう実現したらいいのかということを考えると、軽々と公約に掲げられないと躊躇するようなことでも、野党はその躊躇がない分、有利になるのです。
オリンピックの開催について争点化しなかった自民党~有権者には「逃げた」と見えてしまった
飯田)オリンピックの話1つを取っても、自民・公明は「争点化しない」ということで公約にも載せなかった。それはこの結果で何か影響が出るようなことはプロセス的にも無理だろうということだったわけですよね。その辺りが、どこまで浸透したのかと。本来ならばそこから説き起こして議論をして、だったらもっと先の話をしようと議論して行くべきだったのでしょうね。
「ポイントを絞って、有権者の心に最も響くテーマを選んで展開する」のが勝利の一因に
須田)争点化を避けたというところで言うと、「逃げた」と受け取られてしまうわけです。だから、そこをきちんと議論して行くべきだったのです。その前段として、静岡県知事選挙で、現職の川勝知事が圧勝しました。あれを見ても、リニアを建設するのかどうか、要するに水源の問題はどうするのかというところをワンイシューで川勝知事は訴えたのです。それに対して、そこは争点化して来ると、これは有権者の反発を受けるということで、自民党の対立候補がそれを避けたのです。結果的に逃げたようになってしまった。だから、最近の傾向からすると、「ポイントを絞って、有権者の心に最も響くテーマを選んで展開する」というのが勝利の一因になっているのだと思います。
飯田)そうすると、その先の衆院選ですが、オリンピックが終わったあととなると、何を争点にするのかが難しくなりますね。
須田)そうなると、あとは新型コロナウイルス対策というところで、ワクチンと経済。特にワクチンが行き渡っているのか、経済が立ち直っているのかというところになると思います。
立憲民主党と共産党の共闘~国政選挙では都議選のようには組めない
飯田)東京新聞は1面の見出しのところで「立憲民主党と共産党の共闘が成功」という部分を大きく出していますが、この辺りの野党の選挙戦術はどうだったのでしょうか?
須田)立民と共産党は完全に連携を組んでやったということですが、立民と共産党の共闘という点では、立憲民主党のいちばん大きな支援団体である「連合」がいい顔をしないのです。今回は都議選ということで、見て見ぬふりをしたのだろうと思います。その点では、国政とは違うというスタンスなのです。野党共闘がこのまま国政へシフトするかどうかは、別問題ではないかと思います。
飯田)都議選の場合は1つの選挙区に複数人の当選者がいる形なので、棲み分けをしやすいと言えばしやすいわけですか?
須田)お互いに支援しやすい状況になっているのだろうと思います。
飯田)自民党は最初の調査では、50議席くらい行くのではないかという話もあったのが、33議席に留まりました。衝撃的な結果だというような向きもありますが、今後の総選挙に向けて戦略の練り直しも必要ですか?
須田)先ほど申し上げたように、都合の悪いことであっても、争点化を避けるというところが有権者に忌避されたのであれば、野党はその辺りの最も嫌なテーマを仕掛けて来ますから、それにどう向き合うのかということがポイントになると思います。
自・公と都民ファーストで何らかの連携を進めて行くのでは
須田)加えて、どこも過半数を持っていない状況で、都議会はどうなるのか。立ち往生になりますが、都民ファーストの事実上のオーナーである小池さんは、これだけ政府の自民党と連携を深めて来ている以上、自・公と都民ファーストで何らかの連携を進めて行くのかなと思います。
飯田)そうすると、3派与党になるかどうかはさておき、条例案によって是々非々でやって行くということになりますか?
須田)公明党がその接着剤になる。つまり今回、公明党が23議席獲れるかどうかというのは、微妙なところだったではないですか。
飯田)そうですね。激戦区が4~5ヵ所くらいあったという話ですよね。
小池知事が都民ファーストの応援に入らなかった~公明党支援でもあった
須田)小池さんが選挙応援に回らなかったということは、逆に言えば、公明党支援でもあるのです。都民ファーストの応援に入らなかったということですから。
飯田)その候補に票があまり行かずに、団子状態のまま最後までもつれ込んだと。
須田)はい。
飯田)いいポジション取りをしたと。
須田)したのです!
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