いまの日本は「デフレ展開になりかねない状況」~格差拡大の可能性も
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月6日放送)に経済アナリストのジョセフ・クラフトが出演。日本銀行が支店長会議後に公表した「さくらレポート」について解説した。
日銀が「さくらレポート」を公表
日本銀行は7月5日、3ヵ月に1度行われる支店長会議をテレビ会議方式で開き、全国の地域経済の現状について話し合った。会議終了後に公表された「地域経済報告」、いわゆる「さくらレポート」では、地域別の景気判断について、9地域中、中国と四国の2地域の景気判断を引き下げた。
日本の経済の先行指数と言われる東海地区~今年後半から来年にかけて上振れするか
飯田)中国、四国が景気鈍化、それから近畿や北陸は少し上げたということですが、どの辺りが注目ですか?
クラフト)東海地区、名古屋は日本の経済の先行指数とも言われている地域なので、私は毎回、このさくらレポートでは、ここを重点的に見ます。今回は厳しい状態が続くなかでも持ち直していると思います。
飯田)持ち直している。
クラフト)ワクチンが普及して、持ち直してくれるといいなと思います。いまは世界的に自動車需要が高まっています。トヨタさんも好調な業績を上げているので、今年(2021年)の後半から来年にかけて、上振れしてくれるのかどうかを注目しています。
飯田)東海地区の7月期の判断ですが、横ばいという形になっています。今後、後半にかけて期待という感じですね。
「販売価格判断指数」が3月から6月で微増~デフレ展開になりかねない
クラフト)もう1つ気になったのは、さくらレポートの前に出た短観です。
飯田)日銀短観。
クラフト)「日銀短観指数」ですが、このなかに「仕入れ価格判断指数」というものがありまして、3月時の指数と6月時の指数の差額が11ポイント反発しているのです。
飯田)11ポイント反発。
クラフト)同時に、「販売価格判断指数」が3月から6月に、微増という感じで6ポイント上がっているのです。各企業が仕入れる価格が高騰するなか、売れる価格が限定で押し支えられてしまっていて、企業の収益率が下がってしまうということです。これが何を示すかというと、デフレの構図なのです。
飯田)要するに価格展開できないと。
クラフト)そういうことです。それで今度は賃金を引き下げてコストカットする、賃金が減ると消費が減る、すると企業の収益がまた減る、この悪循環に陥りかねないので、注視する必要があると思います。コロナの影響で、一時的なものかも知れませんけれど、これが長く続くようだと、またデフレ展開になりかねないので要注意です。
まだ安心できる状況ではない~今後、格差が広がる可能性も
飯田)いまおっしゃったその循環は、「デフレスパイラル」という名前で、リーマンショックのあと、よく言われていたことですよね。
クラフト)そうですね。最近言われないので。
飯田)ようやく言われなくなった。
クラフト)でも忘れてはいけません。あとは格差の広がりですが、これはアメリカをはじめ世界でもコロナによって広まっています。そのような不満も浮上して来ます。アメリカなどは、ワクチン普及で高揚していますが、まだまだ安心できる状況ではありません。
収益アップの見通しがないままコストだけを引き上げてしまうと、デフレの構図になる
飯田)いままさにデフレに行くかどうかという、とば口に立っているということですね。先日、「最低賃金を引き上げたらどうだ」というような議論がありましたが、企業からすると、「最低賃金を引き上げられたら、人が雇えなくなってしまう」という意見もありました。
クラフト)賃金を上げて、それで企業の収益も上がればいいのですけれど、収益アップの見通しがないままコストだけを引き上げてしまうと、先ほど言ったように、デフレの構図になります。企業の収益が減ってしまうと元も子もなくなります。このようなときに賃金を上げ過ぎる、あるいは早く上げ過ぎると逆効果になりますので、コロナの様子を見ながら、慎重に上げて行くべきではないかと思います。
シングルマザーなど、困っている低所得層を社会保障として手厚く助けるべき
飯田)賃金を上げるなら、その分を企業負担ではなく、時限的に政府から補助を出すというのはどうでしょうか?
クラフト)本来は1年前にそういう措置に踏み切るべきだったのかも知れません。アメリカの場合は、待遇がよ過ぎるくらい大盤振る舞いしてしまって、逆の問題が起きています。
飯田)みんな働かなくなってしまった。
クラフト)そうなのです。日本の場合は慎重に、第1弾は打ったのですけれど、そのあとが続かなかった。どちらがいいのか難しいのですが、個人的には、以前もこの番組で主張したのですけれど、コロナによって打撃を受けている女性、特にシングルマザーへの影響を心配しています。
飯田)非正規だと、雇用を切られることもあります。
クラフト)全員に同じように給付するのではなく、いちばん困っている低所得層に厚く手当を充てるべきでしょう。経済対策ではなく、社会保障と見て、そこは困っている人を手厚く助けて行くべきだと思います。
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