「バイデン・ドクトリン」~新冷戦で日本が生き残るために必要なこと

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月13日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。バイデン政権の根本的な考え方と言われる「バイデン・ドクトリン」について解説した。

「バイデン・ドクトリン」~新冷戦で日本が生き残るために必要なこと

4日、米大統領選で優勢となり、デラウェア州で演説する民主党のバイデン前副大統領(ロイター=共同)=2020年11月4日 写真提供:共同通信社

バイデン政権の根本的考え方「バイデン・ドクトリン」

アメリカのバイデン政権が発足しておよそ半年が経過するが、バイデン政権の根本的な考え方と言われる「バイデン・ドクトリン」とはどのような考え方なのか。

飯田)「ドクトリン」という言葉がありますが。

奥山)政権がよく打ち出す「基本原則」のようなものですね。「このようにやって行く」という基本方針を述べたものです。

内にやさしく、外に厳しく

奥山)バイデン政権になって1つ表向きに打ち出しているのは、外交面では、専制主義国家、独裁的な国、中国やロシアなのですけれど、そういう国々に立ち向かおうということで「同盟関係をしっかりやりましょう、再構築しましょう」と言っています。内政面では、民主主義の土台の部分である中産階級、マイノリティをしっかりと固めましょうと。「内にやさしく、外に厳しく」ということを、アメリカの解説者の方が、「これは“バイデン・ドクトリン”である」ということで出しています。

飯田)「バイデン・ドクトリン」であると。

奥山)「新冷戦」と言われて久しいですけれど、新冷戦と呼ばれる事態が始まったのは、トランプ大統領の時代からで、「ペンス演説」というものが2018年10月にありました。

飯田)ハドソン研究所で行われた演説ですね。

ソ連との冷戦時代の始まりには「トルーマン・ドクトリン」が

奥山)あの演説が始まりを象徴するものだったのではないでしょうか。そして、以前に同じような冷戦状態が始まったときの時代を思い出すべきだと思います。そのとき出て来たのは「トルーマン・ドクトリン」というものです。「世界は悪と正義であり、アメリカは正義だ」「世界は2つしかないのだ」と。これは二項対立と言うのでしょうか。

飯田)トルーマン・ドクトリン。

奥山)白と黒の世界なので、「アメリカは白の方、ソ連は黒の方」ということで、冷戦時代をつくって行ったのですが、こういうものをつくるときには批判されたのです。いろいろ批判はされたのですけれど、トルーマン・ドクトリンをあとから見ると、「よかったのではないか」と思われるのです。

冷戦時代と重なる「ペンス演説」からの3年~台湾での紛争が起こるのか

奥山)バイデンさんが、「専制主義国家に立ち向かって行く」と言っているけれど、当然、批判も出ます。「こういう枠組みでやって行こう」と打ち出すと、批判する人が出て来るという状況は、当時と一緒なのではないかということです。米ソ冷戦が始まったのは1947年くらいです。そこから朝鮮戦争が始まった1950年くらいの3年で、冷戦が固まったのです。

飯田)3年間で。

奥山)ペンス演説が2018年10月でした。

飯田)そうですね。

奥山)そこから3年ということで見ると、前の歴史とまったく同じというわけではないと思うのですけれど、やはり2~3年でいろいろありました。香港問題があり、台湾の問題があった。ペンス演説から3年というと2021年ですので、心配になりますね。最初に冷戦が出たときにチャーチルさんやジョージ・ケナンという人が、「ソ連を封じ込めろ!」「鉄のカーテンだ!」と言いました。

飯田)「鉄のカーテン」と言っていました。

奥山)今回は、2018年にペンスさんが、「中国はけしからん」と言いました。重なっている部分があるとすれば、その次には何か紛争的なものが起こります。前回は朝鮮戦争ですけれど、今回は台湾かなという感じです。

「バイデン・ドクトリン」~新冷戦で日本が生き残るために必要なこと

中国共産党創建100年を記念する祝賀大会で、大型スクリーンに映し出された「中国共産党万歳」と叫んで拳を突き上げる習近平国家主席=2021年7月1日、北京の天安門広場(共同) 写真提供:共同通信社

日本にとって大事なこと~旗幟鮮明にする

飯田)その前に小さないざこざとして、以前はベルリン封鎖がありました。

奥山)ありましたね。

飯田)これが香港問題であるとか。

奥山)そうです。その間に、ルーマニアの共産政権やNATO結成などがありました。NATO結成は今回で言うとクアッドになるのではないかなど、いろいろ対比させて考えることができます。いま我々は、冷戦が本格化する間の「移行期」にあるのではないかと私は思っています。

飯田)移行期に。

奥山)そうなると、日本にとって大事なことは、「旗幟鮮明にする」ということです。どちらに付くのかをはっきりしなければいけない。「中国かアメリカを選ばなければならない」時代が間近に迫って来ているというところを、日本のリーダーや経営者の方も含めて、意識していただかないとまずいと思います。

アメリカに付くことは避けられない日本~日本の国力を充実させておくことが絶対条件

飯田)日本として、どういう絵を描いて行くのかというところであるとか。

奥山)実際に、「中国とアメリカのどちらに付くのか」となったら、アメリカに付かなければならないのは目に見えているので、日本としては、その間に国力を充実させておくことが絶対条件だと思います。

飯田)国力を充実させておくこと。

奥山)そこで、気になるのが「少子化問題」です。

鍵は「少子化」~人口を増やして、国力を増やすことによって生き残る

奥山)中国も、人口がこれから落ち始めると言いますけれど、日本も人口が減って行くというところを考えると、人口を増やさなければならないのだと思います。なぜ私がそう思ったかと言うと、飯田さんと私は横須賀出身ということで、ローカルな話で申し訳ないのですけれど、甲子園の神奈川県大会、県予選を観ていて、「横須賀南高校」という知らない高校の名前があったのです。

飯田)知らないですね。

奥山)私も「何だこれ?」と思って、ネットで調べたのですよ。そうしたら何と、我々の近くの大楠高校、岩戸高校、久里浜高校が合併して新しくできた高校なのです。

飯田)3つ合併したのですか!? 母校が合併して行くというのは、いろいろなところで聞く話です。

奥山)悲しい話なのですけれど、人口減少というところが如実に表れています。こういう日本ではいけないなと思うのです。高校が逆に増えるところを目指さないと。米中の争いのなかで、「人口を増やさないといけない」ということを如実に感じます。若い子がいないと、街にも活気がなくなります。

飯田)そのために、経済も回して行かなければならないということですね。

奥山)鍵はやはり「少子化」です。日本の人口を増やして、国力を増やすことによって、米中の対立のなかで生き残る。「若さとイノベーション」が大事なのではないかと思いますね。

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