黒木瞳が訊く「地政学とは何か」 ~地政学・戦略学者 奥山真司
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(7月26日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。自身が地政学を学び始めたきっかけや、地政学とは何かについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。7月26日(月)~7月30日(金)のゲストは地政学・戦略学者の奥山真司。1日目は、「地政学とは何か」について---
黒木)馴染みのない地政学ですが、どういう学問でいらっしゃるのですか?
奥山)1つの国際政治の見方として、19世紀や20世紀にとても流行った見方です。「それは実はいまでも大切ですよ」というもので、国際政治の1つの見方です。
黒木)どうして、地政学を学ぼうと思われたのですか?
奥山)カナダに留学していたときに、私は国際政治と地理学が得意だったのですね。
黒木)地理学。
奥山)選挙の区割りとか、どこにどういう木が生えているという地理学が得意だったのですが、地理学のクラスで学びながら、「私は国際政治を知らないな」と思っていたのです。そこでたまたま、「地理と国際政治をやるクラスがあります」ということで取ったそのクラスが地政学だったのです。
黒木)地政学。
奥山)古い地政学があって、それは昔、植民地の経営などに使われたので、悪いイメージだったのですけれど、いまでも国際政治はそれを基にして動いている部分があるなということに気付いたのです。それで国際政治を極めようと思いました。
黒木)奥山さんは新星出版社から『サクッとわかるビジネス教養 地政学』というご本を出されていますが、3ヵ月で10万部ですか? すごいですね。
奥山)ありがとうございます。国際政治では、海の国と陸の国がだいたい仲が悪いので、「バチバチ」やっていますよということを簡単に説明した学問になります。
黒木)もう少し具体的に教えていただけますか?
奥山)歴史を見て行くと、例えばアテネとギリシャ、アテネとスパルタですね。そういう国がやはり仲が悪くて、その間で国際政治が動くのです。私が若いころには、ソ連とアメリカが冷戦というのをやっていましたが、あれも陸と海の対立でした。
黒木)なるほど。
奥山)その国々が争うことになってしまう。ディケンズの『二都物語』のようにパリとロンドンで2つ別々の物語があって、そこがお互いに違う政治事情で動いているというような。そういうイメージをしていただければわかりやすいですかね。
黒木)それはロンドンとパリの物語だったのですけれど、その英国とフランスとで比べると、英国は島国であると。それでフランスは陸であるということですか?
奥山)そうです。
黒木)どう違うのですか?
奥山)その国の生き方が違います。陸の国、この場合はフランスですけれど、国境を隣に接しているので、隣の国の影響を受けやすいのです。そのために、恐怖政治になりやすい。イギリスの場合は、革命のようなものもありましたけれど、意外と大人しくて、どちらかというと貿易に精を出すという感じの性格があります。国の性格で生き方が違うので、海の国のイギリスと、陸の国のフランスは生き方が違うので、「そこは衝突が起こりやすいよね」ということを解説しているのが、この地政学の見方です。
黒木)その地政学を学べば、現代の国の情勢が紐解かれるという感じですか?
奥山)その通りです。海の国の生き方と、陸の国の生き方は違う。そこには戦略的な考え方の違いがあって、「それが国際衝突にどうしてもなってしまう」という考え方です。
奥山真司(おくやま・まさし)/ 地政学・戦略学者 国際地政学研究所上席研究員
■1972年・横浜市生まれ。
■カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士(レーガン政権の核戦略アドバイザー)に師事。
■独自の情報網と分析で活躍する地政学者の旗手であり、ブログ「地政学を英国で学んだ」は、国内外の多くの専門家からも注目。新の国家戦略論を紹介している。
■著書に『地政学・アメリカの世界戦略地図』『ビジネス教養 地政学(サクッとわかるビジネス教養)』、訳書に『中国4.0』など多数。
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