核兵器を拡大せざるを得ない「世界の現実」~広島原爆投下から76年

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月6日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の神保謙が出演。広島への原爆投下から76年を迎えるというニュースを受け、今後の核兵器のあり方について解説した。

広島原爆忌 慰霊碑に向かって手を合わせる人=2021年8月6日午前5時14分、広島市中区の平和記念公園 写真提供:産経新聞社

広島への原爆投下から76年

広島は8月6日、アメリカ軍による原子爆弾の投下から76年、そして核兵器禁止条約が発効してから最初の原爆の日を迎える。広島市の平和記念公園で営まれる「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」にはアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、インド、パキスタン、イスラエルの核保有国を含む86ヵ国と欧州連合(EU)の駐日大使らが参列する見通しである。被爆者や遺族の代表を含め、菅総理大臣も参列する。

飯田)核兵器禁止条約とどう整合するのだという辺りが、きょう(8月6日)の新聞では論点として挙げられていますが。

神保)きょう広島で重要な朝を迎え、9日には長崎です。「原爆の日」は毎年、核兵器を考える日として、大事にするべきだと思います。世界の核兵器の状況がいまどうなっているのかと言うと、1980年代半ばまでがピークで、最盛期には、世界に7万発くらいの膨大な数の核兵器がありました。それが1万3000発くらいにまで減っているわけです。これをさらに減らすということで、世界では運動が高まっていて、核兵器禁止条約には86ヵ国が署名し、今年(2021年)から発効しました。

核兵器削減が下げ止まっている~拡大せざるを得ない世界の現実

神保)その一方で、この10年間ほど、実は核兵器の削減が下げ止まった状態になっているのです。オバマ大統領がプラハで「核兵器のない世界を目指そう」と言ったくらいから、核兵器の削減は進んでいないのです。

飯田)皮肉なものですよね。あれでオバマさんはノーベル平和賞を貰ったわけですから。

神保)最大の理由は、各国の安全保障政策において、核兵器の重要性が再び脚光を浴びてしまっているということだと思います。例えばロシアは、徐々に通常戦力でアメリカやNATO諸国に比べて見劣りが進む状況にあります。国防予算も限られていますから、劣勢を埋め合わせるという意味もあって、核兵器を手放せないのです。むしろ核兵器の近代化をして行かなければならないという方針ですし、中国は現在、絶賛軍拡中です。

飯田)そうですよね。

神保)真偽は不明なのですが、最近は衛星写真で新疆ウイグル自治区の近くにサイロと呼ばれるミサイル発射格納庫が多数発見されています。それをわざと見せているわけです。つまり「中国の核抑止力は徐々に確実なものになっているぞ」ということを見せたいのです。さらに我々は、北朝鮮の非核化に失敗しています。現在、推定で30~40発、さらにこれから増えて行くという推計もあります。これに備えるために、イギリスも現有の核戦力を拡大しますし、日本や韓国のようなアメリカの同盟国も、核の傘をもっとしっかりしなければいけないということを考えると、そう簡単に核兵器を減らしましょうという方向には行けないのが世界の現実なのです。

中国が核兵器を拡大する2つの理由

飯田)中距離ミサイルは、アメリカとロシアの間では全廃条約が一応あります。一方で、中国はそこに入っていないので、アメリカ本土へは届かないけれど、日本やグアムまで届くようなものを中国はたくさん持っているということになります。

神保)中国は公式には、先制不使用と言っていて、基本的には、核兵器は自分たちが核攻撃を受けたときに反撃するためのものであると。第2撃としてのみ使用するということを考えると、その対象はアメリカ、ロシア、インドのような核保有国に向けられているので、「中距離ミサイルのほとんどは非核なのです」と彼らは言います。しかし、よくミサイルを見ると、デュアルユースなのです。弾頭は通常にも核戦力にもできるようになっている。それが1つ。

飯田)載せ替えられる。

神保)2つ目は、中国もまた核兵器が増えて行くと、小型、大型、中距離、長距離とさまざまな使い方を学んで行くわけです。そのなかで、2000km以内の中距離戦力に核を付けないということは、考え難いですね。これからの安全保障戦略の近代化のなかで、おそらく中国は核をそのなかに組み込んで行くだろうと思います。

バイデン政権のなかで核兵器の近代化計画と先制不使用がどう扱われるか

飯田)アメリカのなかの議論で、先制不使用をやめたのではないかということが出て来ていますけれども。

神保)バイデン政権の1つの特徴なのですけれども、来年(2022年)の早い段階で核体制見直しのレポートが出て来るのではないかと思います。トランプ政権は、オバマ政権の全廃の方針を基本的にはひっくり返して、核兵器の近代化と運用の柔軟化というところに踏み込んだのですけれども、アメリカの民主党全体を見ると、核兵器の役割を下げることに前向きなのです。ですからロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の延長もするのですけれど、そのなかで、核兵器の近代化計画と先制不使用がどう扱われるかということが注目ポイントですね。

飯田)日本はそれを目の前にしているということですね。

神保)その通りです。

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