ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月16日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。香港の民主化運動を長年にわたり主導して来た市民団体「民間人権陣線」が解散を発表したニュースについて解説した。
香港の民主派市民団体「民陣」が解散を発表
香港の民主化運動を長年にわたって主導して来た市民団体「民間人権陣線(民陣)」が8月15日、解散を発表した。香港では「香港国家安全維持法」が施行されて以来、民主派団体への弾圧が強化され、民陣に対しても違法デモを組織したとして、国安法違反の可能性があると警告していた。
飯田)2019年に「逃亡犯条例」改正案に抗議するデモを主催し、長い間、先頭に立って来た人たちでしたが。
須田)国家安全維持法が施行された以前の活動において、遡って法的責任が問われるという、およそ法治国家ではあり得ないようなことが行われています。
反故にされた「一国二制度」~もはや「武力での台湾回収」という選択肢しか残されていない
須田)このことによって、向こう50年間維持されるはずだった「一国二制度」が完全に反故にされたということを強く認識するべきです。そもそも一国二制度というのは、台湾に向けてのある種のメッセージのようなところがあって、台湾と統合しても、「一国二制度が維持されている以上、いまの状況の生活や政治体制が続きますよ」ということだったのです。しかし、今回の香港のケースを見ると、もうそのようなことはあり得ない。「武力での台湾回収」というところしか選択肢が残されていないような状況が見えて来たのだと思います。
飯田)習近平政権にとっては。
須田)加えて3期目、憲法違反だとも言えるのですが、憲法改正されました。
飯田)変えてしまいましたからね。
須田)「永世主席」のなかでレガシーをつくるという意味では、3期目を決めたあとに「台湾統一」というところに、「グッ」と出て来るのだと思います。「向こう6年後が危ない」と言われているのは、そこにあるのです。
飯田)新旧の米インド太平洋軍司令官がそこに言及しています。
須田)ですので、3期目の習近平体制では、いよいよ台湾回収へ向けて武力で動き始めるという状況になって来たと思います。
飯田)2022年のはじめには北京冬季オリンピックがあって、秋の党大会があり、そのあとということになりますか?
須田)そうですね。ボイコットの動きも起きていますので、北京オリンピックの前にアクションを起こすことはないでしょう。そこはうまくやって国家の威信を高め、党大会を開き、そしていよいよという状況になるのかなと思います。
金融取引においても縮小して行く香港
須田)香港の話に戻りますが、フリーポート、自由貿易港として栄えた香港なわけです。あるいは、タックスヘイブン的な金融地域として、外国の金融機関を招致して来た経緯があるので、そこに対しても、かなりのくさびが打ち込まれて来ています。「重慶マンション」というものがありますが、あそこからも外国人が消えつつあるという話です。
飯田)あそこは欧米というよりは、中東系の人たちやインド系、アフリカ系の人などがたくさんいて、アンオフィシャルも含めて、貿易等々をいろいろとやっているという話を聞くところですが。
須田)あのようなグレーゾーンの存在が、ある種の香港の魅力だったのです。それがまったくなくなるということで、金融取引においても、これからかなり縮小して行く方向になるのだと思います。
飯田)アメリカ当局はその辺の規制もきちんとかけるということを、このところ言って来ていますからね。
須田)そのような点で言うと、欧米系の企業や金融機関が退避するというか、香港から逃げ出すようなことも近々に起こるのではないかと思います。
日本国内の株式市場にも香港に本社を置いている企業がある
飯田)そうすると、香港は中国の一地方都市になって行くということですか?
須田)完全に飲み込まれてしまうのだと思います。いま取材中で具体的な名前を出すのは避けますが、日本国内の株式市場にも、香港に本社を置いていて、営業部門が日本にあり、株式を公開しているところがあるのです。
飯田)そうなのですか。
須田)かつては3社、そのような企業があったのですが、2社は完全に上場廃止というか、会社そのものが清算されてしまっていて、1社だけ残っています。そのようなところはこれからどうなって行くのか。日本と香港との金融の交流のようなものが、かつて一部ではあったのです。結果的に、日本の投資家からお金だけ吸い上げられて、会社がなくなって行くという。このようなことは、ほとんどメディアでは取り上げられていないのですが、金融庁や東京証券取引所の責任というのも出て来るのではないかと思います。
「台湾有事」の場合、日本はどうするのかということを議論しておく必要がある
飯田)香港の話から台湾にまで及びましたが、日本としても、その辺がどうなるのか、他人事ではないわけですよね?
須田)中国の台湾武力解放のような動きが起これば、間違いなく日本にも波及して来ます。日本も軍事的な動きに連動して来ますので、そのときになって慌てるのではなく、いまからきちんと議論をして、どうするべきなのかというところを決めておく必要があると思います。
飯田)先週末に公開になりましたが、菅総理大臣は米誌「ニューズウィーク」のインタビューで、有事のときには沖縄を日米同盟で守って行くということを明言していましたよね。
須田)沖縄だけでなく、南西諸島すべて含めて、その辺りの安全保障上の対応は必要になって来るのだろうと思いますが、国民の意思として、きちんとコンセンサスが得られているのかどうか。そのような合意形成というものが、今後必要になって来るはずだと思います。
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