ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月23日放送)に神奈川新聞特別編集委員の有吉敏氏が出演。立憲民主党推薦の山中竹春氏が初当選した横浜市長選について解説した。
山中竹春さん当選のポイント
任期満了に伴う横浜市長選挙は8月22日に投開票が行われ、立憲民主党の推薦を受けた無所属新人の山中竹春さんが初当選した。投票率は前回よりも10%以上多い、49.05%であった。
飯田)過去最多の8人立候補で行われた横浜市長選挙は、山中竹春さんが初当選であります。IR、あるいは新型コロナ対策というところが争点とされていました。この時間は今回の横浜市長選挙について、神奈川新聞特別編集委員の有吉敏さんにお話を伺います。有吉さん、おはようございます。
有吉)よろしくお願いします。
飯田)今回の選挙、そして山中さんの当選は、8時に投票箱が閉まったと同時に各社が当確と報道しました。
有吉)いわゆる「ゼロ当」ですよね。
最も新鮮だった山中氏
飯田)この辺りをどうご覧になりましたか?
有吉)8人が立候補されたなかで、序盤から組織力などで5人に絞られていた感じがあります。山中さん、それから国家公安委員長をやられて衆議院議員だった小此木さん、現職の林文子さん、長野県知事をやられた作家の田中康夫さん、元神奈川県知事の松沢成文さん。この5人の方が序盤は有力に進んでいたのですが、やはり元知事であれ、現職であれ衆議院議員であれ、経験者ではあるのですが、こういう人たちが活動していても、コロナ感染は収まらないではないですか。その5人のなかで、山中さんがいちばん新鮮に見えたと思うのです。
飯田)フレッシュに見えたと。
有吉)そういうなかで抜け出して行ったのだと思います。
周辺の関心も高く、国の政策に直結するような選択がされた
飯田)やはり既存の政治に対しての不満は相当強かったわけですか?
有吉)小此木さんについては、一衆議院議員の立場で菅総理が支援を表明したわけですが、結果として、やはり小此木さんに対して菅総理への不満や政府のコロナ対策への不満が集中した形になりました。
飯田)そうなると、横浜市政の課題もさることながら、国政との直結というところが今回の選挙でも見られたということですか?
有吉)横浜市民だけでなく、横須賀など周辺の方々の関心も高かった。単に横浜の政策だけでなく、国の政策に直結して行くような選択がされたと思います。
菅総理の地元で側近中の側近の人が落ちた~今後の総選挙などにも影響が
飯田)小此木さんサイドとしては、かなり有名な国会議員の方々も横浜で選挙活動をやりました。「そこまでやったけれど」ということで、ショックは大きかったのでしょうか?
有吉)菅総理のお膝元であり、小此木家というのは、それなりに名家なわけです。菅総理の地元で側近中の側近の人が落ちたということは、今後の総選挙などにも影響が大きいと思います。
飯田)すでに分析記事などもあると思いますが、行政区ごとで見ると、菅さんの地元というのも決して小此木さん有利ではなかったというようなことも言われています。
有吉)そうですね。かろうじて勝っているというところもありますが、引き離してはいません。他の区では、山中さんに圧倒されているケースが多かったですね。
飯田)菅さんの求心力にも響いて来ますか?
有吉)そうでしょうね。やはり菅さんの地元で菅さんの盟友が敗れたということに対しては、「菅さんで本当に戦って行けるのか」という厳しい目は出て来ると思います。
自民・公明が多い横浜市議会~どう宥和を図って行くか
飯田)では誰がということになる。神奈川県連のなかにも、次の総理というような人がいますよね。
有吉)河野太郎さんや小泉進次郎さんのことを指していると思うのですが、やはり横浜で小此木さんが破れてしまったということで、なかなか手を挙げづらいでしょうね。
飯田)なるほど。この先については、山中さんご自身はIR反対ということを打ち出しておりました。そうすると、まずIRや横浜の再開発など含めて、いろいろな方針が変わって来る可能性があるということでしょうか?
有吉)山中さんを推した市議会議員は、多数派ではないわけです。小此木さんを推した自民・公明なりが市議会の大半を占めているわけですから、その人たちの意向なしでは市政を進められません。今後、どうやって宥和を図って行くかということが、まず政策を進めて行く上で大事なことだと思います。
飯田)まともにやれば本当にガチンコでぶつかることになってしまうと。
有吉)そうですね。「4年間停滞」ということも起こり得るわけですから、市民目線でそういうことがないようにしてもらえるといいですよね。
飯田)なるほど。有吉さん、朝早くからありがとうございました。
有吉)ありがとうございました。
菅総理に対して厳しい風が吹いている
飯田)神奈川新聞特別編集委員の有吉敏さんにお話を伺いました。細谷さん、この結果を受けて国政などへの影響をどうご覧になりますか?
国際政治学者・細谷雄一)菅政権ができたときに、先ほどお名前が出た方々を中心に「京急線沿線内閣」と言われました。菅総理を支えている人たちが、京急線沿線に基盤のある方々が多いと。そこで小此木さんが負けたということで、国民の不満の大きさもあるでしょうし、基本的に内閣支持率はコロナの感染や経済と連動している。そうすると、コロナ感染が増えているということで、いまの菅総理に対して、非常に厳しい風が吹いているということだと思います。
国政に対する不満が出た横浜市長選
飯田)国内の基盤が弱くなって行くことが、外交などにどう影響があると思いますか?
細谷)厳しいと思います。これで政権基盤が弱くなると、党内のわずかな批判に敏感に応えなくてはいけなくなり、大胆な政策が取れなくなります。戦後、吉田政権、佐藤政権、中曽根政権、小泉政権、すべて長期政権のあとは短命なのです。長期政権で溜まった国民の不満が噴出するということと、今回はコロナも重なっています。いまの政権にとってこれからの選挙戦は、非常に厳しいものになると思います。
飯田)今回は地方の首長選ではありますけれども、次の衆院選に向けてというところは、誰もがリンクして考えますものね。
細谷)神奈川県の方々は、東京で働いている方も多いでしょうから、国政に対して意識が高いと思います。そのようななかで、今回は純粋な首長の選挙であるのと同時に、「国政に対する不満」がかなり出ているという印象があります。
飯田)ここからどう立て直して行くか。そして、野党からすると、「共闘が成功した」というところで、勢いがつきますよね。
細谷)ただ、一方で言うと、国政選挙ではないから、与党候補ではない人に入れられるということもありますので、補欠選挙や今回の選挙などでは、「不満が出やすい」ということだと思います。
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