高橋洋一がわかりやすく解説「法定通貨とビットコイン」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月8日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。エルサルバドルでビットコインが法定通貨に採用されたニュースについて解説した。
ビットコイン~エルサルバドルで正式に法定通貨へ
中米エルサルバドルで9月7日、仮想通貨「ビットコイン」が世界で初めて法定通貨に採用された。ナジブ・ブケレ政権は、ビットコインを法定通貨にすることで、国民の多くが銀行を利用できるようになる上、海外送金手数料を毎年4億ドル(約440億円)ほど節約できるとしている。
飯田)議会では6月9日時点で賛成62、反対19、棄権3。圧倒的多数でこの法律が可決されたということです。
法定通貨とは~小さい国は自国通貨を発行できないので他国の通貨を借りて法定通貨に
高橋)法定通貨の話をきちんとした方がいいと思うのでやりますが、法定通貨とは何かと言うと、実は「その通貨の受け入れを拒否できない」という、仕組みだけなのです。ただそれだけの話です。我々が普通に考える通貨は、政府が発行するものでしょう。
飯田)そうですね。
高橋)それは自国通貨で、発行は政府の権限だから、発行できるという意味では、「発行上限などはない」というのが普通のイメージでしょう。ただ、エルサルバドルのような小さいでは、国が小さ過ぎるので、自国通貨を発行できないのです。だから、このような小さい国は、他国の通貨を借りて法定通貨にするのです。
飯田)他国のものを使うのですね。
高橋)日本だと考えられないでしょう。印刷局が発行しているし、全部「印刷局」と書いてあるでしょう。
飯田)そうですね。日本円というものは。
高橋)小さい国だと、印刷所を持てないから、他の国の通貨を使うのです。
飯田)米ドルなどを使うのですか?
高橋)だいたいそうです。小さい国では自分の国で印刷ができないから、他国のものを使うのです。つまり、ドルの他にもう1つできたという、そのくらいの話なのです。
飯田)そういうことなのですか。
米ドルの補助的な役割としてビットコインを付け加えるイメージ
高橋)ビットコインは少し特殊なのですが、発行条件が仕組み上、決まっているのです。日本のように、通貨を国で発行するようには使えません。これを見てすぐに「法定通貨」と思ってしまうかも知れませんが、まず米ドルがあって、そこへ代替的に付け加えたくらいの意味なのです。
飯田)補助的なイメージですか?
高橋)そうです。ビットコインだけではまず無理です。通貨にクレジットカードの機能をつけたようなレベルだと思えばいいのではないでしょうか。だいぶイメージが違ってしまうのだけれどね。通貨というと、自国で発行している通貨があると思ってしまうではないですか。
飯田)どこの国でも、そういうものがあると思ってしまいます。
高橋)思ってしまうのだけれど、ある程度大きな国でないとできないのです。
小さな国が無制限に自国通貨をつくってしまうと、価値がなくなることがある
飯田)そうすると、大きな国の通貨と、自分の国でつくっていても連動しているようなものもあるという。
高橋)つくらないで、大きな国の通貨をそのまま使います。
飯田)そのまま使うということもあるのですね。
高橋)その方が通貨の価値も安定するのです。小さい国が勝手に無制限でつくってしまうと、価値がなくなってしまうので。
飯田)かつてのジンバブエドルのように、すごいインフレになるとか。
高橋)そうなってしまうので、他の国の通貨ならば、発行量はそちらで決まっているから、という意味で安定するのです。
飯田)例えば1ドルだと、1ドルの価値も安定しているからということですか?
高橋)同じものを使ってしまうのがいちばん簡単なのです。
将来的には「発行量を自分で決められるかどうか」がポイントになる
高橋)エルサルバドルというのはそういう国なので、だから日本もすぐにどうのこうの、という話にはならないということだけ言っておきます。でも、ビットコインのような仮想通貨は、ある意味で時代の流れです。本当の紙ではなく、こういう形に将来的にはなると思います。そのときにポイントになるのは、「発行量を自分で決められる」ということです。
飯田)プログラミングで上限が決まっている、仮想的に決まっているということでは具合が悪い。
高橋)そうです。ビットコインは、仕組みを採用すると発行上限が決まっているので、通貨にはならないのです。希少性のある骨董品的な感じになるのです。価値が高くなるのは、発行上限が決まっているからなのです。
飯田)なるほど。その意味で言うと、商品に近いようなイメージ。
希少性が高くなるビットコイン
高橋)でも、商品も発行上限は決まっていないですよね。商品でも増えて行くから、もっと希少性が高くなるようになっているのです。そういう意味で、希少性があるということは、骨董通貨のような話になるから、経済機能は少ないというのが普通の理解になってしまう。
飯田)遍く広く流通するようなものにはなりづらい。
高橋)エルサルバドルは法定通貨を採用するにあたって、自国外から賄わないといけないから買ったのです。
飯田)ビットコインを。
高橋)そうすると、少し上がるという、そういう類の話ですね。
「金を採掘しない金本位制」に似ている
飯田)金本位制的な兌換通貨に似ているということですか?
高橋)そっくりですね。金本位制だけれど、金がもう採掘されないというレベルと一緒です。
飯田)なるほど。
高橋)金本位制でも、金鉱山が出ると金が増えるから、また増えて来るのですが、こちらは増えないです。「一切、金を採掘しない金本位制」に似ていると言えば似ています。
飯田)そうすると、景気が悪いからと言って、お札を刷って云々ということができない。
高橋)できません。海外送金などで普通のドルを使うと送金手数料がかかってしまうけれど、ビットコインだとかからないから、そこにメリットを見出して、小国で採用するというのはあり得るのです。
飯田)なるほど。今後は推移を見守りつつ、利便性の部分を追求しただけだと思えばいい。
高橋)私はそう思います。
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