10歳未満の精神疾患の子どもへの対処法 「箱庭療法」でわかる子どもが置かれている環境

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東京都医師会副会長で「ひらかわクリニック」院長の平川博之氏が10月1日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。精神疾患を持つ10歳未満の子どもへの対処法について解説した。

10歳未満の精神疾患の子どもへの対処法 「箱庭療法」でわかる子どもが置かれている環境

ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」

10歳未満の精神疾患の子どもへの対処法

飯田浩司アナウンサー)今回も10歳未満のお子さんの精神疾患、その対処法について伺います。子どもの精神疾患の場合、子ども個人の部分から出て来るもの、また周りの環境、特に親の状況によって変わるものなどがあるのでしょうか?

平川)本人の発達上の問題ですから、最も大きいのはそこの部分だと思いますが、その結果、現れる行動の異常については、親御さんの対応や支え方で変わりますので、それぞれ違うと思います。

飯田)先生方は子どもと向き合いつつ、親とも向き合わなくてはならない。

平川)お子さんは自分で自分の辛さを言葉で言えません。診察室で親子の関係を見て、ご本人の問題の部分と、周囲の接し方の問題とを見極めることになります。

「箱庭療法」

飯田)お子さん、特に言葉で全部を表すのが難しい年代の子どもたちから聞き取りをするのは難しいですね。

平川)「箱庭療法」という特殊な療法があります。1メートル四方の底が浅く四角い箱に砂を敷き詰め、ミニチュアの人形や動物、怪獣、乗り物や建物が棚に並んでいるのですが、それを手に取って置いてもらうという治療です。

飯田)その置き方でいろいろなことがわかるのですか?

平川)お子さんの気持ちや環境をそこから読み取ることができます。この治療のいいところは、過去からのものがそこに表出されるのです。「過去にこんなことを受けた」ということも、何回もやって行くと、その箱のなかに徐々に表れて来ます。

飯田)子どもたちはそれを無意識でやっているのですか?

平川)無意識にできる環境をつくってあげないと、楽しんでもらえませんので。初めは戸惑いますが、慣れるとのめり込むようにやってくれます。もちろん診断するための症状を得ることも大事ですが、これが治療につながって行くのです。

10歳未満の精神疾患の子どもへの対処法 「箱庭療法」でわかる子どもが置かれている環境

新行市佳アナウンサー、平川博之氏、飯田浩司アナウンサー

変化している親子の関係

飯田)そこで「親にこんなことをされた」という場合もあると思いますが、問題のある親御さんのタイプは大別できるのでしょうか?

平川)親子の関係も随分変わって来ていますよね。以前は怖いお父さんやお母さんがいて、本当に怒られっぱなしだったというような状況もあったと思います。最近は電車のなかでも友達のように、一緒に並んでゲームするような親子もよく見ます。「いい家族だな」と思うのですが、こういうときはいいけれど、有事になったとき、本当にこの関係がうまく活かせるのか、少し心配があります。

まずは相談に行くこと

飯田)不安を抱える親御さんは、どこに相談しに行けばいいですか?

平川)どの親御さんでも初めての経験ですから、「悩んで当たり前」と思って、保健所の「こころの相談窓口」や母子家庭センター、児童相談所など、いろいろなところがありますので、相談してください。

1人の子どもを社会全体で見守り育てる

飯田)最後に、子どもたちに関連しておっしゃりたいことはありますか?

平川)いまはコロナ禍です。昨年(2020年)の出生数、1年間に産まれた赤ちゃんは84万人ということで、5年連続で減っています。昭和24年には270万人が産まれていますので、3分の1です。

飯田)そこを、社会全体としてどう変えて行くかですよね。

平川)お子さんは親のものではなくて、社会全体に共通した大事なものだということを意識して、他人事ではなく、社会も他者も巻き込んで1人のお子さんを見守って育てる。そういう環境にしたいと思います。

番組情報

モーニングライフアップ 今日の早起きドクター

毎週月~金曜日 朝6:15~

番組HP

医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます

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