対中政策の変更を迫られるドイツ ~「バイエルン」が東京へ寄港
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月5日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」が東京へ寄港するというニュースについて解説した。
ドイツ海軍のフリゲート艦「バイエルン」が東京へ寄港
「バイエルン」とは全長140メートルほどのドイツ海軍のフリゲート艦であり、岸防衛大臣は11月2日に行われた記者会見で、「バイエルン」が11月5日に東京へ寄港する予定であることを明らかにした。ドイツの軍艦が日本の港へ寄港するのは約20年ぶり。岸防衛大臣の説明では、4日から5日にかけて日本南方の太平洋上で海上自衛隊と合同訓練を行い、その後、5日から東京に来港する予定である。
メルケル首相の時代にドイツの軍艦が日本へ寄港することはなかった
飯田)グアムへ来て、そこから東京に向かうという形のようですが、ドイツの軍艦が寄港するのは20年ぶりだということです。
宮家)20年ぶりということは、メルケルさんが首相になって16年でしょう。頻繁に来ていたわけではないけれど、メルケルさんの前には来ていたのですね。でも16年間はそういうことがなく、メルケルさんが引退される。そして総選挙が行われ、ドイツでは新しい政権、キリスト教民主同盟ではない社会民主党(SPD)を中心とする政権になった。だからというわけでは必ずしもないでしょう。これだけの航海をするということは、相当前から準備しなければできませんからね。
ドイツもインド太平洋に関心を示している
宮家)インド太平洋地域がこれから世界経済の成長の中心になるし、中国という大きなマーケットがある。それと同時に米中競争という側面もあるので、ヨーロッパの人々の関心がインド太平洋に向いて来た。イギリスはやって来るし、フランスは太平洋艦隊を小さいけれど持っていて、それなりのプレゼンスを示している。欧州の雄であるドイツもおそらく、そういう関心を示しつつあるのかなと解釈しています。
どのようにしてドイツの国益をこの地域で最大化するか
宮家)一方、これは中国からすればとんでもない話です。アメリカは偉そうなことを言っって、日本もけしからん。これにイギリスが来て、フランスが来て、ドイツまで来るということになると、次は北大西洋条約機構(NATO)ということになりかねません。もちろんNATOが直接来るとは思わないけれど、中国にとっては決して嬉しいことではない。確か、バイエルンは中国に寄港しようとして拒否されたのですよね。
飯田)報道では「どうやら拒否されたようだ」と。
宮家)つまり、ドイツ側もそれなりに配慮して中国に仁義を切ったのだけれど、やんわりと断られた。ヨーロッパ、ドイツからすると、中国も大事だけれども、アメリカのことも考えながら、「どうやって欧州の利益、ドイツの国益をこの地域で最大化するか」ということを考えた上での布石だと思います。もちろん、ドイツの新しい首相が決めたわけではないでしょうけれど、そういう流れが欧州にもあるということだと思います。
対中政策を変えなければならない時期に来ているドイツ
飯田)いままで、一帯一路の終点がドイツだと言われる通り、ドイツは相当中国にコミットしていましたけれども。
宮家)メルケルさんは中国で経済的にドイツの利益を最大化するようやって来たのだと思います。16年も首相をやっていて、日本になかなか来なかった人ですよね。しかし、中国がこれだけアメリカと対立し、欧州との関係も悪くなれば、ドイツは対中政策を変えなくてはならない。そういう時期に来ているような気がします。
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