ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月19日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。ポーランドによる、ベラルーシから国境を突破した移民200人の拘束について解説した。
難民を国際政治の手段として使う卑劣な行い
ベラルーシは1991年8月にソ連から独立し、西はポーランド、北はラトビアとリトアニア、東はロシア、南はウクライナにそれぞれ接している。そのベラルーシから隣国ポーランドへ多数の移民が押し寄せている問題で、ポーランドは11月18日、国境を突破した移民200人を拘束したと発表した。ポーランド側は、ベラルーシの特殊部隊が移民の越境を裏で支援していると主張。先進7ヵ国(G7)外相は共同声明で、ベラルーシ政府が国境での対立を煽っていると非難し、移民危機を終結させるよう要求した。
飯田)ドイツのメルケル首相がベラルーシのルカシェンコ大統領と電話会談するなど、EUでは大問題になっているようです。
宮家)難民を手段として国際政治を行うのは、本当に卑劣だと思います。ベラルーシの大統領はやり方の下手な人だと思います。独裁者として長くやっているから、こんな手を使うのかも知れませんけれども。
なぜ難民がポーランドへ押し寄せたのか
宮家)難民の人たちが何を言われたのかは知りません。ベラルーシに行けばポーランドへ抜けられるという噂が口コミで広まったのか、裏で本当にベラルーシ政府が動いていたのかは知りませんけれども、「行ける」と言われれば、状況が厳しいので人は集まりますよね。
飯田)国境を越えられると言われたら。
宮家)しかも、なぜポーランドの国境なのか。ベラルーシは海に囲まれていない陸ばかりの国ですから、ラトビアやリトアニアなど、いくつか出口はあるのです。ウクライナに行く手もありますが、目的地がEUでなくてはいけないから、それは無理でしょう。ポーランドはEUだけれど、ラトビアとリトアニアも加盟国ですので、なぜポーランドなのかはわかりませんが、とにかくそこに集結した。
飯田)なぜかはわからないけれど。
宮家)EUのなかだとポーランドは、どちらかと言えば移民に厳しい国ですから、なぜそんなところに行くのだろうかとは思います。ポーランドは当然、人の移動を遮断をするわけです。そして睨み合いの状態が続き、寒くて難民が苦労する。大問題になるかと心配していたら、まだ確認されてはいないけれども、報道によればベラルーシ側の官権、もしくは特殊部隊がポーランド側の鉄条網を破壊しているようです。鉄条網が開いたら、それは当然「ワッ」と行きますよね。そして200人が逮捕された。こんな悲惨な話はないですし、こういうことをやってはいけませんね。
EUもG7も難民をどうするつもりなのか
飯田)EUも立場が苦しいところもあると思うのが、人権を前面に掲げていますから。
宮家)ベラルーシの大統領は、民主化をせず、酷い内政をやっているから非難を浴びて制裁も受けている。その状況を何とか打開したいということで、いろいろな手を打ったのでしょうが、これは禁じ手ですよね。
飯田)奇策のような。
宮家)禁じ手をやっても、状況は悪くなるだけでしょう。よくなることなどありません。為政者としてはいかがなものかと思います。一方、ポーランドもあまり褒められたものではなくて、移民には厳しいですから当然送り返しますよね。ひと昔前、メルケルさんがいたころは多くの難民を受け入れていたのに。でもそれは理想論であって、実際に受け入れたら大変なことになるのはわかっています。EU側もG7も非難するのは正しいのですけれど、では彼らをどうするのか、送り返すことが良いのか。
これは形を変えた戦争
飯田)その辺りを見越してロシアのラブロフ外相が、トルコのときのように、「EUがベラルーシにお金を払ったらいいのではないか」ということを言い出しています。
宮家)ラブロフさん、あなたには言われたくないよ、ということですよね。ロシアも強かだなと思うけれども、ベラルーシがやっていることもロシアがやっていることも似たようなもので、本当に難しいと思います。
飯田)戦火があるわけではありませんが。
宮家)これは形を変えた戦争ですよ。しかも難民を利用した非常に質の悪い、ハイブリッド戦争というか、国際政治の一側面だと思います。かわいそうなのは難民ですよ。
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