ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月3日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。中国女子テニス選手の問題で、女子テニス協会(WTA)が中国でのすべての大会を中止した対応について解説した。
WTAが中国での大会を中止した2つの理由
中国の女子テニス選手、彭帥さんが元副首相に性的関係を強要されたと告白した問題で、女子ツアーを統括する女子テニス協会(WTA)が12月1日、中国での大会開催を見合わせることを発表した。
飯田)中国の女子テニス選手、彭帥さんの問題ですが。
宮家)2つ理由があると思います。1つは、直接の面識はありませんが、CEOのサイモンさんは人権意識が非常に強い人なのでしょう。アメリカのいろいろな企業経営者中にはリベラルもいるのですが、この問題について、今回サイモンさんは強く懸念したのだと思います。
飯田)強く懸念した。
宮家)もう1つはビジネスの問題だと思います。WTAと国際オリンピック委員会(IOC)とどこが違うかと言うと、IOCは中国でもいろいろと大きな活動をしているわけで、そこには大きなビジネスがあるのです。女子テニス協会がどれだけ大きなビジネスを持っているかは知りませんが、少なくともIOCほどではないと思います。IOCとの違いはそこですよね。
飯田)IOCとの違いは。
宮家)ビジネスの利益と人権意識のバランスをどう取るかと考えて、おそらく彼の場合は、すべての大会中止にまで踏み切れるだけの、何らかの理由があったのだろうと思います。
世界的な流れでは中国に厳しくなっている
飯田)中国では9つくらいの大会があるそうですが、ここは中止にするしかないと。声明では「リスクが」とありましたが。
宮家)直接的なリスクがあるかどうかはわかりませんけれども、いまのアメリカ国内での中国に対するイメージを考えると、ここで開催するメリットと、中止することによって問題意識を提供するメリットとの比較という意味では、中止の方を選んだのでしょう。
飯田)中止の方を。
宮家)これからも似たようなことが起こると思いますが、IOCの会長さんが彭帥さんと2度目のテレビ電話をやったと言うのでしょう? やったのであれば、話した内容を全部出すべきです。そうすれば、彼女がどういう感じで言っているのかがわかりますから。
飯田)そうですね。
宮家)それを出さないところをみると、人権意識よりもビジネスの方が大きいと思わざるを得ないですね。各組織によって対応は異なるかも知れませんが、全体の流れとしては、中国に厳しくなっていると思います。
中国とIOCの焦り
飯田)IOCがこれだけいろいろやって来るということから、中国とIOCの焦りも見えて来ます。やはりアメリカやイギリス、オーストラリアなどが外交的ボイコットを検討していることもあるのでしょうか?
宮家)それはそうですよ。
飯田)北京オリンピックに関して、やはり思うところがあるわけですか?
宮家)中国はお客さんですよね。そういう意味では、IOCの発想はWTAとは違うのだと思います。
国内に対して北京五輪を成功させたい中国
飯田)北京冬季オリンピックはどうなりそうですか?
宮家)粛々とやると思いますよ。
飯田)中国側としては。
宮家)中国には面子がかかっていますから。日本にもある意味、面子がかかっていた部分はあるけれども。日本の場合障害はコロナ問題でしたが、今回は「コロナ+人権問題」となります。彼らとしては、確かに焦りはあるかも知れません。
飯田)なるほど。
宮家)もう1つ大事なことは、彼らは国内の国民に対して「すごいだろう! 北京オリンピックをやったぞ!」と言えればいいのです。外交的ボイコットをされても、プーチンさんがいるから構わないと。ハリウッドのヒーロー系スターを呼んでも来ないのなら、有名な悪役を呼んで来ればいいということです。悪役だって何人か揃えば絵になるではないですか。
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