ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月22日放送)に朝日新聞編集委員の峯村健司が出演。中国の女子テニス選手が中国の元副首相に性的関係を強要されたと告白したのちに消息不明となった問題について解説した。
中国テニス選手の動画を中国共産党系メディアの編集長が公開
中国の女子テニス選手、彭帥(ほう・すい)さんが中国の元副首相に性的関係を強要されたと告白したのちに消息不明となった問題で、中国共産党系メディアの編集長が11月21日、北京市で同日に行われたテニス大会のイベントに彭さんが参加したとする動画をツイッターに投稿した。
飯田)中国の女子テニス選手である彭帥さんの行方がわからなくなっていると。不倫などいろいろな話が出て来ていますけれども、どうご覧になりますか?
峯村)これまでも、中国高官のスキャンダルに関するうわさはたくさんありましたが、香港メディアなどから出るものがほどんどでした。中国の大陸のなかで、ご本人がSNSを使って告発するという衝撃は相当大きかったです。
飯田)相手は張高麗元副首相。性暴力と不倫関係を告白し、投稿は30分後に削除されました。その後、彭帥選手の行方がわからなくなった。中国の「環球時報」編集長が「イベントで会った」と、写真入りでツイートしたという話もありますが。
女性関係のスキャンダルからはイメージが遠い張高麗氏
峯村)75歳の張高麗さんには衝撃を受けました。北京の特派員時代に取材をしたことがあるのですが、率直に「地味」という感じの方で、女性関係の話からはイメージが遠い高官の1人でした。江沢民元国家主席系に近い経済畑の方で、天津市のトップをやっていたときには、日本企業とも付き合いがありました。
飯田)写真が出て来ていますが、地味な方だなと。
峯村)あのままです。口数も少ない方で、この方からこういう話が出て来るということに驚きました。
共産党機関紙の「環球時報」が中国で禁止されているツイッターを使って英語で発信することが胡散臭い
峯村)人民日報系である共産党機関紙の「環球時報」が、中国で禁止されているツイッターを使って、英語で発信するということ自体が胡散臭いです。
飯田)胡散臭い。
峯村)中国国内向けではなく、露骨な海外向けのアピールだからです。しかも、「間もなく写真が出るだろう」という意味深な書き方をして、出て来た映像も不自然と言わざるを得ません。一緒に同席していた男性が映像の中で「明日は11月21日だよね」とわざわざ言及していました。普通「ところできょうは何日だっけ」という確認すること自体が異常ですし、彭さんはほとんど何も喋らず、頷いているだけです。正確な日付もよくわかりませんし、あの映像が本当だとしても、疑惑が解消されたとは言えません。
海外の著名な選手などが声を上げたことで事態が動いた
飯田)この件に関して、海外の著名な選手からも心配の声が上がり、スポーツ関係者は注目していました。
峯村)今回はその効果が大きいと思います。女子テニス協会などの団体や、大坂なおみさんなども一斉に批判の声を上げました。国際社会が一致団結して中国に「彭さんを開放しろ」と圧力を掛けたことによって事態が動いた。おそらくこれがなかったら、このまま闇に葬られていた可能性が極めて高かったと思います。
北京五輪をリンクさせて、ダブルでプレッシャー ~「中国とどう向き合うか」というモデルケースに
飯田)来年(2022年)の年明けには北京冬季オリンピックを控えているではないですか。その辺りはポイントになりますか?
峯村)非常に大きいと思います。特にアメリカのバイデン大統領が18日、北京オリンピックの外交的ボイコットを明言しました。外交的ボイコットというのは、「政府関係者を送らない」という強い措置です。これに加えて先ほどの国際的な圧力も重なった。いまの習近平指導部にしてみれば、来年秋の共産党大会に向けて、そのちょうど真ん中にある2022年2月の北京五輪は、意地でも成功させなければいけない威信をかけたイベントなのです。
飯田)北京五輪は。
峯村)国際社会としては陽動作戦をかけて、「北京五輪に政府関係者を出さない」として、うまく彭さんのケースと北京オリンピックをリンクさせ、ダブルでプレッシャーを掛けた。今回のケースは、「今後、中国とどう向き合うか」という意味では、1つのモデルになるケースだったと私は見ています。
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