ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月27日放送)に作家で自由民主党・参議院議員の青山繫晴が出演。中国の習近平国家主席とIOCのバッハ会長の北京市内での会談について解説した。
中国・習近平国家主席がIOCのバッハ会長と会談 ~北京大会成功に自信示す
中国の習近平国家主席は1月25日午後、2月4日の北京オリンピック開幕を前に、IOCのバッハ会長と北京市内で会談した。会談のなかで習主席は、大会の開催に向けた準備はすべて整っており、予定通り順調に開催できると述べている。
飯田)北京市内の公園に、バッハ会長の銅像まで設置されたそうです。
青山)これは2022年で最悪のニュース、ワースト10に入ることは間違いないと思います。IOCのトップ自らがオリンピックを政治宣伝に使っているわけです。国としての政治宣伝という意味では、各国ともそういう面はあるけれども、これは秋の中国共産党大会に向けた習近平国家主席の個人宣伝です。
人工降雪機と太陽光パネルによる環境破壊
青山)私は下手くそながら、アルペンスキー競技を長年やって来ているので、初期の段階からよく知っていますが、人工降雪機というのは水を凍らせて細かく砕き、それを吹き出すだけなのです。北京辺りは特徴のある場所で、まず普段から水飢饉と言っていい。
飯田)そうですよね。
青山)水が足りないのです。中国にはあれほど大きい川があるのに、水が足りない国で有名です。そして、冬はものすごく寒い。寒いけれども、雪は全然降りません。結果、どうなるかと言うと、アルペンのコースだけではなく、周りの山々にも足りない水を無理に使って人工降雪機で雪をつくるため、動植物の生態系も含めて環境を破壊するのです。
飯田)人工降雪機によって。
青山)水がなくなってしまったので、農家の方が困っている。農家が困るだけではなく、北京五輪のフレームアップとして「環境によい」という嘘をつくるためにどうするかと言うと、農地もすべて国有地ですから、そこに日本も浸食されているような、例の中国製の太陽光パネルで埋め尽くしているわけです。
飯田)太陽光パネルを。
青山)耕作ができない、水もない、土地もない、それでオリンピックです。なぜIOCのバッハ会長がこうやって褒め称えるのでしょうか。胸像をつくられたとしても、自分で外して持って帰るべきですよ。
飯田)こんな恥ずかしいものをと。
橋本聖子参議院議員を派遣するべきではない
青山)呆れる要因が重なって行くばかりです。私は日本国で国民から選ばれた橋本聖子参議院議員は、やはり派遣するべきではないと思います。最後の最後まで言い続けるしかありません。
飯田)派遣すべきではない。
青山)橋本さんは何もおっしゃっていませんが、政府は「大会組織委員会の会長として行くのだ」と。しかし、国民に選ばれている議員ですから、中国は大喜びだったわけです。外交ボイコットへの風穴だと理解しているのです。
「日本はアメリカやイギリスがやっているような外交ボイコットに乗っかっていない」とする中国
青山)日本国の外務省は、きちんと情報を収集して総理に上げるべきです。いま中国は外交ボイコットを突き崩そうと、お金も使ってやっています。お金と言ってもいろいろなやり方があるわけです。援助や給付、支援などの名目でお金を出すのです。
飯田)いろいろな名目で。
青山)そのときに、「日本はアメリカやイギリスがやっているような外交ボイコットには乗っかっていない」ということを、材料として使っているのです。これを外務省の在外公館が知らないのであれば、それは例によって仕事をしていないということです。
飯田)例によって。
青山)それを考えると日本の責任も大きいし、日本政府や私を含めた自由民主党の責任も大きい。バッハ会長の行為は、これでオリンピック運動が死滅するのではないかというような話です。このあと冬季五輪はイタリアのコルティナ・ダンペッツォという、伝統のアルペンコースに戻ります。ミラノもアルプスに近く、「ミラノとコルティナ・ダンペッツォ」として実施するのです。
飯田)2026年に開催されます。
青山)そこで正常化するようなものですが、(開催予定国となった)イタリアは北京五輪への発言を控えています。夏のオリンピックが開催されるフランスのマクロン大統領も、この件については黙っています。自由に物事が言えなくなることを含めて、こんなに歪んだ話はありません。
冬季五輪に手を挙げる国がなく、北京での開催が必要だったIOC
青山)私はヒトラーになぞらえるようなことは誰に対してもしないのですが、この件はどうしてもナチス時代のベルリン五輪を思い起こさせるし、IOCの姿勢はそのときより酷いかも知れません。
飯田)ベルリンオリンピックよりも。
青山)当時、IOCなどの組織がどうであったかというのは、必ずしも定かではないけれども、いまはIOCの権限がはっきりしている時代です。そもそも冬季五輪を開いてくれる国がないから、北京の誘いに乗ってしまった。そのときに北京の水事情や、人工降雪機を使った場合の環境破壊のアセスメント(評価)を行っていないではないですか。どうしても北京での開催が必要だったのです。
飯田)そういうところに目を瞑っても。
習近平氏の目的は何か
飯田)いろいろなところから批判を受けることを、習近平氏は平気でやるわけですが、何をしようとしているのですか?
青山)中国共産党の主席という立場は、いまはありません。
飯田)党主席という立場は、いまはない。
青山)私たちの感覚では信じがたいけれども、中国のような独裁国家においては、共産党が国家よりも上なのです。習近平さんはいま国家主席でいらっしゃるから、誰が考えても国のトップでしょう。しかし、実際にはトップではないのです。トップは共産党のトップなのです。
飯田)共産党のトップが。
青山)しかし、共産党は総書記までしかありません。なぜかと言うと、毛沢東さんが共産党の主席として無謀な行いをして、数千万人の自国民が亡くなったとされているわけです。はっきりわからないくらいの数です。
飯田)大躍進政策と文化大革命だけでも、大変な数になりますものね。
青山)数えきれないくらいの数です。
中国共産党内部の権力闘争に向けてオリンピックを使う習近平氏
青山)中国は中国なりに反省して、党主席のポストを廃止したのです。それを秋の共産党大会で復活させて、自分が就きたい。その前に憲法を改正して、終身独裁者になり得るようにしましたが、憲法よりも党の方が上なのです。
飯田)中国共産党の方が上。
青山)いまの中国経済の基礎をつくったのは、胡錦濤国家主席の10年です。中国のGDPを世界2位に押し上げながら、10年の任期切れできちんとお辞めになったわけです。習近平さんは国家主席になって10年を過ぎるわけですが、経済成長率はたいだい6.5%で、胡錦濤時代の約半分です。
飯田)胡錦濤時代の約半分。
青山)しかも人件費が上がってしまったので、世界の工場としての役割はできません。その上で無理に独裁権力だけ強めようとしている。今回の件は、北京五輪だからとバッハ会長を招いていながら、実は国内向けの対策なのです。それも中国国民というより、中国共産党内部の権力闘争に向けてオリンピックを使っている。そこにIOCのバッハ会長が乗っかったということです。そう考えると、北京五輪はベルリン五輪(1936年)を上回るくらいのワーストですよね。
党主席にこだわれば失脚する恐れは十分ある
飯田)「権力基盤がすでに固まった」というような報道もありますが、いかがですか?
青山)いや、違います。
飯田)そんなことはない。
青山)習近平国家主席ご自身も、最後の最後では、共産党総書記に甘んじるかも知れません。その代わりに任期切れを超えて、その後の任期を確保しようとする挙に出る可能性はあります。それであれば通ってしまうのではないでしょうか。ただ、党主席にこだわったら失脚する恐れは十分あります。
北京五輪に参加する選手が気の毒
飯田)一方で、5年の延長だけをやったら、即座にレームダック化するのではないかという指摘もあります。
青山)だから終身で行くしかない。
飯田)終身で。
青山)いまの中国共産党、特に習近平国家主席は、「独裁主義の方が民主主義よりも上なのだ」と言っているでしょう。独裁主義であれば、習近平国家主席がここまでになるときも、幼稚園の運動会に行ったり、伝統行事に参加したりする必要はなかったでしょう。私はしませんけれども、日本の政治家であれば幼稚園の運動会に行ったり、盆踊りに参加したりします。手間がかかるのです。そして、常に反対意見を協議しなければいけない。
飯田)日本の政治家は。
青山)独裁主義であれば、「何でもすぐに決められてすごいだろう」と言っているけれども、最大の欠点は、「独裁者に全部左右されてしまう」ということです。それを煮詰めたようなものが北京五輪ですから、選手が気の毒です。努力して来た実力を発揮する場は4年に1回しかないのに、その場が北京五輪だというのは。スポーツを通じて人間を高めることは、人類の希望の1つであり、JOCも含めてIOCは、本当にここで再出発をしないといけないですよね。
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