この10か月が「中国が言うことを聞くかも知れない」最後の時間 ~盤石ではない習近平「3期目」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月25日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。2022年の中国の動向について解説した。

この10か月が「中国が言うことを聞くかも知れない」最後の時間 ~盤石ではない習近平「3期目」

2021年11月22日、中国・ASEAN対話関係樹立30周年記念サミットに出席した習近平氏 新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

2022年は東アジアの「今後10年の国際秩序を決める」重要な年に

中国共産党は2022年秋、5年に1度の党大会を開く。通例であればトップが交代する節目だが、今回は習近平国家主席の3期目続投が確実視されている。

飯田)今年(2022年)の中国政治や中国の動きについて伺います。北京オリンピックが控えていますが、どうですか? 動きますか?

峯村)北京オリンピックは、いまの習近平政権にとって、極めて重要なイベントです。成功をさせて約半年後に控えている第20回の中国共産党大会につなげたいという思惑があるからです。

飯田)政治的なイベント。

峯村)そうです。さらに、もっと広い目で見ますと、今回のオリンピックや党大会だけではなく、今年の1年は、中国、そして日本を取り巻く東アジアの今後10年の国際秩序を決める重要な年になると思います。

習近平氏が3期目続投の場合、4期目をやる可能性も

峯村)今回の共産党大会では、習近平国家主席が3期目を続投するかどうかということが最大の焦点になるわけです。もし3期目続投になった場合、3期では終わらず、ひょっとしたら4期、習近平氏が言っている2035年まで、国家のトップをやる可能性がありえます。

党大会までの10か月が「中国が言うことを聞くかも知れない」最後の時間

峯村)そのことを考えますと、党大会までの10か月あまりが中国にとっていちばん弱い時期、もろい時期なのです。裏を返すと、中国が国際社会の言うことに耳を傾ける最後のチャンスとも言えます。

飯田)言うことを聞くかも知れない最後の時間。

峯村)アメリカを中心とした西側諸国はそこをわかっていて、この10か月の間に中国を少しでもいい方向に持って行かなくてはいけないということで、情報機関も含め、さまざまな外交・諜報の世界において激しいせめぎあいを水面下でやっているような状況だと思います。

習近平氏の頭のなかは中国の国内問題のことだけ ~任期を延ばすためにさまざまな工作が必要

飯田)「言うことを聞くかも知れない」というのは、党大会で3期目続投かどうかが決まるのですけれども、その前まででしたら、「波風立てずに行こう」というイメージがあるわけですか?

峯村)おっしゃる通りです。先日、アメリカの元政府高官と意見交換をしたのですが、今、習近平氏の頭のなかには、台湾情勢も含めた米中関係や、皆さんが注目しているウクライナ情勢もないだろうと。いまは中国国内のことだけを考えていると言っていました。私もそう思います。日本や欧米メディアでは、習近平氏の3期目は硬いと、100%既定路線であるというような論調がありますが、それは違うと思います。

飯田)盤石ではないわけですか?

峯村)盤石ではないですね。それほど簡単なことではありません。2期10年だった国家主席の任期を、2018年に憲法改正したことによって撤廃したのですけれども、このとき党内では、かなりの反対意見があったと聞いています。

飯田)反対意見が。

峯村)ですので、「憲法改正したから3期は簡単だよね」という話ではないのです。なぜ任期を延ばすのか、その根拠は何だと。正統性は何だというところについて、この10か月を使って工作する。対国内向けにも宣伝しなくてはいけないという状況にあるわけです。ここが、自分の任期延長を見据えた国内問題しか考えていないだろうという根拠です。

この10か月が「中国が言うことを聞くかも知れない」最後の時間 ~盤石ではない習近平「3期目」

習近平氏、中国共産党・世界政党指導者サミットで基調演説 (北京=新華社記者/李学仁)= 2021(令和3)年7月7日 新華社/共同通信イメージズ

「西側諸国と違い、我らの体制はコロナをゼロに抑制した」と言いたい

飯田)国内問題というと、コロナ対策や経済ということになりますか?

峯村)そうですね。コロナ対策と経済は絡み合っています。経済で言うと、先日発表がありましたけれども、成長率が著しく鈍化しています。

飯田)利下げを続けていますものね。

峯村)経済衰退のいちばんのトリガーになっているのが、「ゼロコロナ政策」です。習近平氏がやっている「いかなるコロナも発生させない」という極端な政策です。

飯田)「コロナに打ち勝った」という名分で、3期まで持って行こうとしているのですものね。

峯村)それはありますね。アメリカを中心とした西側諸国がコロナ感染を防げていないのは、奴らの体制が悪いからだと。「それに比べて、我らの体制はコロナをゼロに抑制したのだ」と言いたいわけです。

経済を犠牲にしてでも必死に「ゼロコロナ」を実行しなくてはならない役人

峯村)けれども、それをやることによって、上から厳しく指示を受けた地方の役人たちが、命を懸けて実行するわけです。

飯田)命を懸けて。

峯村)命を懸けるというのは大げさな表現ではなく、それが失敗したら、本当に左遷されたり処分されたりします。下手をすると「反腐敗だ」と言われて拘束されてしまう。実際、2年前に湖北省の武漢で起きたときには、湖北のトップ、そして武漢のトップが処分を受けているので、まさに「必死」なのです。そうなると、コロナ感染を起こさないために、「経済を犠牲にしてでも」となるわけです。

飯田)ロックダウンして。

峯村)封鎖して経済も止めることになってしまうというのが、最大の課題です。「ここをどう両立させるのかが難しい」と新聞的には書くのですけれども、難しい問題だと思います。

飯田)両立させるのは。

峯村)どちらかを放棄しなければならないのですが、中国のシンクタンク関係者などに話を聞くと、(政策を)掲げてしまっているので「ゼロコロナ政策は党大会までは変わらないだろう」と言います。「うちの体制が優位だ」ということを言うために打ち上げた手前、やめるわけにはいかないですよね。

「ゼロコロナ」が国民の不満につながる可能性も

飯田)それで経済が疲弊して行けば、ただでさえ経済格差が広がっているなかで、不満が溜まって来て、党中央に矛先が向くのかというところですよね。

峯村)それによってデモが起きた際には、「本当にあなたは3期目をやる資格があるのですか」という話になります。誰かが言うわけではなく、無言のプレッシャーですね。習近平氏は、こういうところと戦っている状況なのだろうと思います。

飯田)プレッシャーの矛先を逸らせるために、外に強く出るということはありますか?

峯村)あり得ますね。ただ、私は11月まではしないだろうと思います。

飯田)党大会を乗り切るまでは。

峯村)そういうことです。

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