ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月28日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。テレビ形式で行われた日米首脳会談について解説した。
岸田総理大臣がバイデン大統領と首脳テレビ会談
1月21日夜、岸田総理はアメリカのバイデン大統領とテレビ形式で会談した。会談では、中国を念頭に経済安全保障などの協力を強化するため、外務・経済担当閣僚による新たな協議の枠組みを設置することで合意した。日米同盟を強化し「自由で開かれたインド太平洋」推進のため連携する方針も確認した。
飯田)1月21日に行われましたが。
宮家)岸田総理は外相を5年近くやられていたのですから、今回は素人の外交デビューではありません。
飯田)そうですね。
宮家)バイデンさんのこともよく知っています。大量の資料の発表がありましたので、事前に相当準備をしたのだと思います。約80分の時間をうまく使って、大きな問題もしっかり扱い、結構うまくいったのではないでしょうか。
飯田)網羅したという感じですか?
宮家)「こんな感じで進めばいいな」と思っていました。この種の会談後は、資料が出るではないですか。去年(2021年)4月に行われた菅総理とバイデンさんの会談では共同声明がありました。今回は共同声明という形ではありませんでしたが、発表がありました。日本語のものも、英語のものとほぼ同じです。そこからも日米が相当準備していたことがわかります。
飯田)両国間で、すり合わせがかなりあったと。
クアッドの首脳会合が日本で開催 ~バイデン大統領が来日か
宮家)去年の菅総理との会談と比べて、目新しい点を言えば、まずは今年クアッドの会合をやるわけですよね。
飯田)日米豪印。
宮家)日米豪印の首脳会合を日本でやる。バイデンさんがそれを支持すると言ったのだから、「来る」ということです。これは大きな話ですよ。
飯田)そうですね。
中国をめぐる諸課題への対応は基本的に変わらない
宮家)中国については、基本的に言い方は同じですね。ただ面白かったのは、短くするためなのか、前回は「中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達して行く意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野については中国と協働する必要性を認識した」という文章が入っていました。今回はそれがないのです。
飯田)前回はあったのだけれど。
宮家)ないからやらないというわけではないと思うけれど、ちょっと気になりました。あとは基本的に変わっていません。ただ、2月にハワイで日米韓の外相会談を開催する予定になっています。これが1つのきっかけになればいいなと思いますが、佐渡金山のこともありますし、関係改善が簡単にできる訳ではないでしょう。
ウクライナ情勢について
宮家)ウクライナの問題は新たに出て来たものです。今プーチンさんがやりたい放題やっているのですが、日本側はロシアに関し、「いかなる攻撃に対しても強い行動をとることについて、米国、他の友好国・パートナー及び国際社会と緊密に調整を続ける」と。「強い行動をとることについて調整を続ける」としています。慎重な言い方ですが、これはあまり嬉しくない、ということですよね。
飯田)雲行きが怪しい。
宮家)何が起こるかわかりませんからね。当然のことながら、日露関係に跳ね返って来る問題です。慎重な言い方ではありますが、今回はウクライナの問題にも触れています。
日本の防衛力を抜本的に強化する
宮家)あとは、日米2プラス2が1月にありましたが、その共同発表を支持する、とされました。そして、「新たに国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を策定し、日本の防衛力を抜本的に強化すると表明」とありますが、いちばん大きいのは「日本の防衛力を抜本的に強化する」という部分です。
飯田)「国家安全保障戦略」について、今年(2022年)中に見直すと言われています。
宮家)見直して、防衛力の強化につながる話をここに入れているということです。
経済版「2プラス2」の立ち上げ
宮家)経済面では、新しい資本主義について説明をしました。それから、次回の首脳会談で「持続可能で包摂的な経済社会の実現のための新しい政策イニシアチブについて、議論を深めて行くことで一致した」とあります。
飯田)次回の会談で。
宮家)もう1つは、経済版の2プラス2をやるということですね。当然、経済安全保障を念頭に置いた新しい要素を入れるだろうと思います。あとは「核兵器のない世界」に向けて取り組んで行くということですけれど、岸田さんは広島出身の総理ですから当然だろうと思いますし、このあと、来年(2023年)のサミットをどうするかということも含めて、話し合いが行われただろうと思います。
苦しい状況のバイデン大統領 ~そんななかで開催された首脳会談
飯田)日米関係にすきま風が、というようなことを言う人もいますが。
宮家)まったくないでしょうね。それよりも、いまはバイデンさんの状況の方が苦しい。支持率は下がり、インフレやコロナで大変ですし、プーチンさんには足元を見られそうになっているわけです。
飯田)試されていますよね。
宮家)その上、最高裁の判事が引退するということです。その意味では、忙しい中でうまく時間を見つけて、約80分やれてよかったなと思います。
飯田)テレビ方式ではあったけれど、首脳会談ができただけでも。
宮家)岸田さんは(アメリカへ)行きたかったと思いますが、バイデンさんの状況が大変ですから。
飯田)これから中間選挙が来るわけですものね。
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