ウクライナのEU加盟が認定されると欧州からの支援はどう変わるのか
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月2日放送)に一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員の相良祥之氏が出演。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、国連総会の緊急特別会合が開催されたというニュースについて解説した。
国連総会の緊急特別会合が開催 ~ロシアを非難する発言相次ぐ
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐり、すべての国連加盟国が参加できる国連総会の緊急特別会合が、日本時間3月1日に国連本部で始まり、多くの加盟国からロシアの軍事侵攻を非難する発言が相次いだ。緊急特別会合は数日にわたって開かれ、アメリカなどはロシアを非難する決議を採択し、圧力を強めたい考えだ。
飯田)ウクライナ情勢をめぐって、ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国であり、拒否権があるため安保理が機能しないということで、特別会合が40年ぶりに開催されました。国連総会でもロシアへの非難が相次いだということですが、国際社会は結束して行く方向なのですか?
相良)ロシアを非難する演説が続いていまして、まさに「国際社会が反ロシアで結束を強めている」という状況はあると思います。背景としてあるのは、ここ数日、ロシアの攻撃によって民間人にも犠牲が広がり、ロシアの侵略のフェーズが1段上がって来たということだと思います。
ロシアによる侵略のフェーズが上がり、民間人への被害が懸念される
飯田)かつてのチェチェン共和国のグロズヌイやシリアのように、無差別攻撃が現実的な危機として、もう起こっていると思った方がいいですか?
相良)ウクライナ第2の都市であるハリコフの政府庁舎に、ミサイルが撃ち込まれました。その画像がツイッターでも広がっていますし、ニュースでも報道されていますが、こういう形で一般市民への犠牲が広がっています。
飯田)既に犠牲が広がっている。
相良)3月1日夜、ゼレンスキー大統領が欧州議会にオンライン形式で出席し、非情に強い言葉でスピーチを行いましたが、政府庁舎は自由広場というところにあるのです。「自由広場にロシアはミサイルを撃ち込んだのだ」と。「これは戦争犯罪なのだ」と、かなり強く非難しています。
飯田)戦争犯罪であると。
相良)さらに、キエフのテレビ塔も攻撃されたことが報道で出ています。ロシアは、「政府施設をミサイルで攻撃するので住民は避難しろ」と言っているのですが、民間人への被害がこれから増えて行くのではないか、侵略のフェーズがさらに上がって行くのではないかということが懸念されています。
結束するヨーロッパ ~「もっと踏み込んだ形で支援をするべきではないか」という議論も
ジャーナリスト・佐々木俊尚)スウェーデンやフィンランドがNATOに入るのではないかという話にもなっていて、ヨーロッパに対するインパクトが大きいように感じます。その辺りのインパクトの強さはどのような感じでしょうか?
相良)本当にヨーロッパは結束したと思います。制裁でもそうですが、やはり民間人への非人道的な攻撃が続くような状態は、欧州をますます結束させて行くと思います。いまは弾薬や兵器の提供という形ですが、「非軍事的な措置や経済制裁だけではなく、もう少し踏み込んだ形で支援して行くべきではないか」という議論も出て来るのではないでしょうか。
ウクライナのEU加盟が認められると、ヨーロッパからの支援のあり方は変わるのか
佐々木)ゼレンスキー大統領はEUに加盟申請をしているのですが、これが認められると、ヨーロッパからの支援のあり方はまた変わるのですか?
相良)3月1日の議会でも「ヨーロッパであるあなた方が、我々と一緒にあるということを示してくれ」ということを、ゼレンスキー大統領が演説で強く言っていました。ウクライナ側の思いとしては、軍事的な空爆やミサイルという形で、もう少し直接的な支援を求めているところはあると思います。
飯田)見方が別れているようですが、仮にEUへの加盟が認定された場合、EUの憲章のなかには集団的自衛権の行使に関する規定等々はあるのですか?
相良)EUというか、欧州として一致して集団安全保障体制を守ると。現在、NATOの東側は守るという形で兵力を展開しているので、ウクライナも集団安全保障体制の枠組みに入る形で守って欲しいということはあると思います。
飯田)ウクライナも。
相良)それには2つ見方があると思います。すぐに申請が認められて兵力を送るというのは難しいと思います。もう1つは、和平交渉の協議がロシアとウクライナの間で始まっていますが、論点の1つである「NATO非加盟」、「EU非加盟」ということをロシアは当然、求めて来ていますので、そこへの牽制もあると思います。
核をチラつかせるロシアにヨーロッパはどう対応するのか
佐々木)EUもしくはNATOの介入に対し、ロシアはかなり警戒していて、「核兵器準備態勢」という話が出た。一方で安全保障の専門家たちの議論を見ていると、これ以上、戦場がエスカレートしないために、限定的な核を使うというオプションもプーチン大統領は考えているという話があります。核をチラつかせていることに対して、EUもしくはNATO、ヨーロッパがどう出るのかというのは難しい問題なのですが、どう対応して行くことになるのでしょうか?
相良)アメリカは、最初から「軍事的にはロシアとは戦わない」という立場を鮮明にしていましたが、それは核戦争にエスカレートするリスクがあったからだと思います。
佐々木)そうですね。
相良)一方でロシアがやろうとしていることは、まさにシリアで行われたような、樽爆弾などを使った無差別爆撃やミサイルという形で、通常兵器で民間人の犠牲が増えるというフェーズにこれから入って行くと思います。それに対して、「核ではない通常兵器で反撃できないか」という議論は当然あると思います。
飯田)通常兵器で。
相良)もう1つは、戦争ですので、プーチン大統領かゼレンスキー大統領のどちらかが、あまりにも痛みが大きいために続けられないと判断するまでは続いて行きます。経済制裁でもプーチン大統領は痛みを感じていると思いますけれども、どこで落としどころを見つけるかということが、これからの焦点になって行くのではないでしょうか。
第2回協議の焦点
飯田)ウクライナとロシア、当事者同士の対話の枠組みについて、再協議が今週中にあるのではないかという報道もされています。その場合、どのようなことが議論されるのでしょうか?
相良)先日、第1回協議がありまして、5時間ほど続いたと言われています。協議は戦争と並行して行われますので、まずは相手の言い分を聞くという形で相手の立場を正確に理解し、いまはそれぞれ首都に持ち帰って検討するというフェーズになっています。
飯田)1回目は。
相良)同時に、戦闘面ではハリコフにミサイルが撃ち込まれ、民間人への被害も出ている。そのなかで、第2回協議でどこに優先順位をつけて、どの点では合意できるのか。あるいは合意できないのか、席を立つのか、話を続けるのか。そういうところが、次の焦点になって来ると思います。
折り合いはつくのか
佐々木)ロシア側は、ウクライナの非軍事化を求めています。要するに全面降伏を求めているのと同じことだと思うのですが、到底、ウクライナ側はのめませんし、ヨーロッパものまないですよね。ロシア側が折衷案に対して折り合いをつけて来る可能性はあるのでしょうか?
相良)交渉ですので、1回目はいちばん高い球をお互いに投げ合ったと。ロシアとしては非軍事化、ウクライナ軍の解体、武装解除ですね。それと中立化を求めています。対するウクライナ側の要求は、即時停戦とロシア軍の撤退、さらにはウクライナ東部からもロシア軍は出て行けというものです。お互いにいちばん高い球を最初に投げて、そのなかで、どこであれば折り合いがつけられるのか、あるいは絶対に譲れないところを探るという、まさにその協議を続けて行くしかないと思います。
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