「新しい資本主義」は社会貢献活動ではない
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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理の掲げる「新しい資本主義」について解説した。
新興企業への支援強化
岸田文雄首相は4月9日、自身が掲げる「新しい資本主義」の実行計画に、最新技術を活用したスタートアップ(新興企業)への支援を盛り込む考えを示した。
飯田)岸田総理大臣がスタートアップ企業への支援強化を示したということですが、新しい資本主義の話なのでしょうか?
新しい資本主義は社会貢献活動ではない ~社会課題の解決を通じて新しいビジネスをつくること
野村)「新しい資本主義とは何なのか」ということをもう少し、きちんと議論しなくてはいけません。新しい資本主義というのは、ステークホルダー、さまざまな利害関係者の方々にとって、まんべんなく利害が調和されるような新しいビジネスをつくっていくことなのですけれども、それを社会貢献活動のように捉えてしまっている人がいます。その認識はだいぶ違うのです。
飯田)社会貢献活動ではない。
野村)大事なのは、「共通価値の創造」と言っているのですけれども、事業収益を上げることと社会的課題を解決することを対立構造で捉えるのではなく、「社会課題の解決を通じて新しいビジネスをつくる」というところが、新しい資本主義の肝の部分なのです。
飯田)社会課題の解決を通じて新しいビジネスをつくる。
野村)これがわからないまま、何となく罪滅ぼし的に企業が儲け過ぎてしまったので、その分を慈善事業に回したり、SDGsだという考え方とは全然違うのです。
食品ロス ~新たな技術を生んで新しいビジネスに結び付ける
野村)例えば日本の食品ロスについて、技術を使って海外の飢餓で困っているような人たちに、どう届けるのかというようなことです。そこに新たな輸送技術やパッキング技術、さらに言えば冷凍技術など、新しい技術を生み出し、新しいビジネスに結び付けるということです。
飯田)新たな技術を生み出して。
野村)どうも日本の場合、新しい資本主義はいままでの企業の社会的責任など、20年くらい前の古い議論のようなところに戻ってしまっている部分があります。もはや次のステージの話であり、世界はそこで競争を始めているのです。そこに気付いて議論を深めていかないと、また日本は何周も遅れてしまいます。
飯田)発想としては近江商人の「三方よし」のようなもので、「ビジネスもうまくいくし、社会もうまくいく」ということを、やろうと思えばできるではないかということですね。
野村)アイデア次第なのです。既に競争は始まっているので、もっと真剣に取り組まなければいけません。
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