岸田総理の「原発再稼働」に関する発言に注目する海外メディア
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二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が5月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。今後のエネルギー政策について解説した。
ロシア産石油を段階的禁輸へ ~各国で違うロシアへの依存度
岸田総理大臣は5月9日、ウクライナへの侵略を続けるロシアへの追加制裁として、ロシア産の石油の輸入を段階的に禁止すると表明した。岸田総理は「時期は実態を踏まえ検討していく。時間をかけ、フェーズアウトのステップを取っていく」と述べ、順次進めると説明した。
飯田)9日未明に行われた、G7のオンライン首脳会議の合意を受けた内容だということですが、段階的で大丈夫なのですか?
合六)本来であれば、すぐにでもやりたいところなのでしょうけれども、日本を含めて各国にそれぞれの事情があります。G7の首脳声明のなかでも、「段階的または即時の禁輸」として併記されています。
飯田)その辺りは事情に合わせてやると。
合六)各国によって、エネルギー面でのロシアへの依存度は違います。G7以外の国、EUのメンバーのなかでも、すぐにロシアへの依存をやめることが難しい国もあり、EUの制裁をめぐる議論でも、そこはややぼかしたのかなという感じはします。
岸田政権のG7に足並みを揃えての制裁は評価できる
飯田)G7を中心にして、ロシアへの経済制裁は強まる方向にありますよね。
合六)その通りだと思いますし、いまやるべきこととして評価できます。また、日本の立場としても、2014年のときは制裁を加えたと言っても非常に象徴的で、私もウクライナをはじめアメリカやヨーロッパの知り合いから、「あまりにも消極的ではないか」と言われたことがあります。その意味では今回、岸田政権が当初からG7の他のメンバーと足並みを揃えていることについては、評価できるのだろうと思います。
原発再稼働について、しっかりと議論するべき
飯田)各国のエネルギー問題に直結してくるわけですが、ゴールデンウィークに行われた岸田総理の各国訪問のなかで、イギリスで記者会見をしたときに、かなり踏み込んで原発再稼働の話をしましたよね。
合六)あまり注目されていなかったように思うのですけれども、今後、日本でしっかりとこのテーマを議論して、いかにロシアへの依存度を下げていくか、そのためにはどのような形でエネルギーを確保していくのかについて、国民に対して透明性のある形での説明が求められるのだろうと思います。
岸田総理の「原発再稼働」に関する発言に注目する海外メディア
飯田)「仮に日本が原発を再稼働して、LNGの需要が少し減るようなことになれば、それはウクライナへの支援になるのではないか」と海外メディアが報じていると一部では出ていますが、こういう議論はされているのですか?
合六)海外の方が、先日の岸田さんの踏み込んだ発言に注目しているようです。ドイツでも「今後どういう形でやっていくのか」、つまり原子力の問題にどう取り組んでいくのかという議論が始まるのだと思います。ただ、いまの連立政権には「緑の党」もありますので、あちらはあちらで、その点については激しい議論がなされるのだろうと思います。
ドイツ3党連立政権である「緑の党」のスタンス ~ウクライナへの重火器供与を主張
飯田)「緑の党」のスタンスは、環境については「エコなものを」というイメージがあるのですが、人権や人道についての問題はどうなのですか?
合六)人権や人道に対してはかなり敏感で、特に海外でそういったことがないがしろにされている場合は、強い態度を取っています。政権に入る前から、ロシアはもちろんのこと、中国に対してもその意味では強い姿勢を示してきました。
飯田)中国に対しても。
合六)今回のドイツの重火器供与をめぐっても、意外なことに連立政権である「緑の党」の人たちが、左派の人も含め、ショルツ首相に対して「重火器供与に踏み切れ」と言っていたのが印象的です。彼らは平和主義者なのですけれども、「平和をつくり出すには、このタイミングで、しっかりとドイツがリーダーシップを取って重火器を供与しなければならない」というロジックになるのです。だから単に「すべての戦争に反対」ということではなく、人道的な問題が起こっていて、「平和をつくり出すためには、一定程度の武器供与は必要なのだ」という話なのだと思います。
飯田)理想は理想としてあるけれども、現実的にどう解を出すかという考えまで入っているのですね。
合六)首相の姿勢を強く批判していて、首相としても意見を聞かざるを得ない部分はあったのだと思います。
3党連立のなかでドイツがロシアのLNGについてどのような議論をするか ~日本も注目するべき
飯田)エネルギーに関しても「ロシアのLNGを止める」ということになると、他から持ってくる、あるいは原発も使うなど、「緑の党」とは違うことも飲まなければいけなくなりますか?
合六)ここは少し見通せない部分ではありますが、「緑の党」にもいろいろな立場の人がいます。現実主義的な人、あるいは左派寄りの人もいます。また連立ですから、「自由民主党(FDP)」という党もありますので、ある種の政党の垣根を超える形で、どんな議論がなされていくのか。今後の日本のエネルギー事情を考える上でも、注目しなければいけない部分だと思います。
飯田)日本も同じように議論しなければいけないですね。
合六)日本は2023年のG7議長国ですから、今後のロシアへの制裁やウクライナに対する復興支援で、どうリーダーシップを発揮できるかが重要になると思います。
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