二松学舎大学国際政治経済学部・准教授の合六強が5月10日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。独ショルツ首相のテレビ演説について解説した。
ドイツのショルツ首相が5月8日にテレビ演説
ドイツのショルツ首相は、ナチス・ドイツが連合国に降伏し、欧州で第二次大戦が終結した記念日の5月8日、国民向けにテレビ演説を行い、ウクライナに対する大型兵器の供与を続ける方針を示した。
飯田)ドイツの首相が演説するのは珍しいのですか?
合六)通常ですと首相であれば、年頭のあいさつのような形で行うのが普通です。やるとしても「何周年記念」のような記念の年にやることはあるのですが、そのときもだいたい大統領がやると思います。
飯田)首相ではなく。
合六)今回は77周年という中途半端な時期ではありますが、ロシアによる軍事侵攻がヨーロッパ大陸で起こっているなかで、プーチン大統領が「ナチス」という言葉を頻繁に使いながら正当化しています。そのようななかで、ドイツとしての立場を示しておかなければいけないと考えたのではないでしょうか。
「不戦の誓い」の宣言とともに、「ナチス」を使い歴史をゆがめたプーチン大統領への批判
飯田)ポイントはどんなところにありますか?
合六)ドイツとして今後、自国、同盟国あるいは他国に害を及ぼすことはないという「不戦の誓い」を宣言すると同時に、プーチン大統領に対しての批判をしたということです。
飯田)プーチン大統領に。
合六)ドイツはロシアに対して厳しいスタンスを取っています。ロシアはナチスというものを政治利用する形で、いまのウクライナ侵攻を正当化していますので、それに対しては「歴史をゆがめている」と批判したわけです。
武器供与に対する理解を求める
合六)そして、「戦争を起こさせない」という意識のなかで、これまでドイツは武器供与についても消極的だったのですけれど、それに対する理解を求めたのだろうと思います。
飯田)最初は「防弾チョッキとヘルメットだけではないか」と批判されましたけれども、大きく動きましたね。
合六)開戦の日は2月24日ですが、その直後にショルツ首相は演説をしています。そこでは「ヨーロッパ大陸の歴史のターニングポイントとなる日だ」と言った上で、これまで消極的であった対戦車ミサイルや対空ミサイルなど、一歩踏み出した武器供与を宣言していました。
重火器をウクライナに供与するまでのプロセス
合六)ただ、ドイツ国内では、「これがドイツにとってターニングポイントになるのか」という議論がありました。確かにショルツ首相自身もドイツの国防費を上げると宣言するなど、これまでの姿勢から大きく転換したかのように見えつつ、NATO周辺国がウクライナに重火器を供与するなかで、ドイツはなかなか踏み切れなかった。
飯田)そうでしたね。
合六)しかし、内外からの強い批判もあって、最終的には4月に重火器もウクライナに供与するというプロセスに至ったのだろうと思います。
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