スティーブ・ジョブズのような「飛び抜けた天才」が出ない日本に「必要なこと」

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ジャーナリストの佐々木俊尚が6月1日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。メディアプラットフォーム「note」に寄稿した『江戸日本の「勤勉革命」は21世紀に「勤勉敗戦」に陥っている』という論考について語った。

スティーブ・ジョブズのような「飛び抜けた天才」が出ない日本に「必要なこと」

音楽配信サービス「アップルミュージックストア」が日本上陸。サービス開始を発表した、スティーブ・ジョブズ・米アップルコンピューターCEO=2005年8月4日午前10時55分、東京都千代田区の東京国際フォーラム 写真提供:産経新聞社

世界的に高い日本人の平均的な能力

ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、メディアプラットフォーム「note」に『江戸日本の「勤勉革命」は21世紀に「勤勉敗戦」に陥っている』という文章を寄稿。平均能力が極めて高い日本人がなぜ経済成長できないのか、その理由について語った。

飯田)「平均能力が極めて高い日本人が経済成長できない理由とは」ということについて伺います。

佐々木)「世界で最も知的な国ランキング」というものを、IQテストを実施しているフィンランドの企業が発表したのですが、台湾が1位で日本が2位という結果でした。ただ、台湾はテストを受けている人が少ないので、日本の方が実は上なのではないかという話もあります。また、2013年の経済協力開発機構(OECD)の調査で、スペインやイタリアの大卒者よりも、日本の中卒者の方が質が高いという結果が出ています。

飯田)読解力などが高いと。それも話題になっていましたね。

佐々木)これは民族性なのか、一般人の能力は日本人の方が平均的に高いのです。飛び抜けて高い人がいるというわけではなく、全体的に高い。

大量生産時代には「勤勉さ」が適合してGDP世界2位にまで成長した日本

佐々木)70年代に経済学者の速水融さんが唱えた「勤勉革命」という説もあります。

飯田)勤勉革命。

佐々木)イギリスで産業革命がありましたが、その当時、日本は江戸時代でした。イギリスは土地が広くて新大陸があったので、人口密度が低く機械化するしかない。そのような背景があって産業革命を起こしたのですが、日本は狭い陸地に集中的に人がたくさんいるので、機械化をするよりも、とにかく一生懸命みんなで田んぼを耕したのです。「その一生懸命さによって日本は生産性をあげたのだ」という、勤勉さの革命を意味する「勤勉革命」という言葉があるのです。そのような有名な学説が70年代に発表されて、いまでも通説になっています。

飯田)勤勉革命ということが。

佐々木)日本人は働くことへのモラルが高いのです。ブラック企業で働いても辞めずに、「自分の責任だ」と言って頑張ってしまうではないですか。そのようなことや質の高さが相まって一般人のレベルが高い。これは近代化や工業化、つまり大量生産時代には平均的水準の高い優秀な工場労働者を揃えるという意味では、適合しているのです。だから日本は20世紀に急成長して、GDPが世界2位というところまでいったのです。

ものが売れない現在は、スティーブ・ジョブズのような飛び抜けた天才が必要 ~日本的な平均的質の高さは21世紀型社会には向かない

佐々木)しかし、いまはものが売れないではないですか。売れるものを考えることが難しい。昔のように労働力と資本と工場をつくればものが売れる時代ではなくなってしまった。そうなると、スティーブ・ジョブズのような飛び抜けた天才が必要になるのですが、日本はなかなかそのような人物は生み出せない。

飯田)スティーブ・ジョブズのような人は。

佐々木)みんなの能力は高いのですが、飛び抜けたことをしようとすると、頭を叩いてしまうこともある抑圧の強い社会です。そうすると、いまのような21世紀型の社会には、日本人の平均的質の高さは産業構造的にはあまり向いていないのかなとも思います。

日本でDXが進まない理由

佐々木)DXが進まないのもその辺りにあると言われています。DXとは産業や会社をシステム化するというような発想なのですが、日本人はシステム化するというよりも、手先の器用さなどで一生懸命カバーしようとしてしまうのです。

飯田)体を合わせるという形で何とかしてしまう。

佐々木)我々は職人気質ですからね。そうなると、「DXよりも手を動かしていた方がいいだろう」というような話になってしまうのです。

「平均的質の高さ」を有効活用できる方向に進めるにはどうすればいいのか

飯田)それをどのように変えていくのかというところですね。

佐々木)なかなか答えがないところが難しいのです。勤勉革命も江戸時代の特質だったので、古代から日本人がそうであったわけではありません。もちろん、モラルや能力の高さがあるのはいいことです。

飯田)戦後で考えても、ノーベル賞受賞者の学者を何人も出していますよね。

佐々木)優秀な人はたくさんいるので、単に手先だけ動かしていればいいということではなく、みんなでものを考えて、平均的質の高さを有効活用できる方向に進めればいいのではないかと思います。

飯田)みんなが周りを気にせず、好きなことをするのが必要なのかも知れませんね。

佐々木)そうなのです。

飯田)他の人を気にしすぎるという性質も大きいのかも知れません。

佐々木)それが大きいですね。

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