数量政策学者の高橋洋一が6月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀・黒田総裁の「家計の値上げ許容度」発言について解説した。
日銀・黒田総裁が「家計の値上げ許容度」発言を陳謝
日本銀行の黒田東彦総裁は6月7日、「日本の家計の値上げ許容度も高まってきている」との見解を示した6日の講演での発言について「適切ではなかった。誤解を招いた表現であり、申し訳ない」と謝罪した。
飯田)日銀の黒田総裁が6月6日、「家計の値上げの許容度も高まってきている」と発言しました。これは共同通信の「きさらぎ会」という講演で述べたものですが、7日の参院財政金融委員会のなかで「適切ではなかった」として陳謝したということです。ただ、スピーチ原稿などを見ると、きちんとデータも揃えて出しています。
高橋)通常の物価予想調査というものです。データもあるし、謝る必要もないのでしょうけれども。
飯田)そうですよね。
高橋)意味がないでしょう。マクロ経済の話なので、マクロ経済についての反論があるならいいのですが、そうではなく、「自分にはそういう余裕がない」という一部の一方的な意見を書くだけなのです。
飯田)一方的な。
「許容できる人の割合が増えた」ということ
高橋)アンケート調査にも、余裕がないという人が半分くらいいるのです。でも、「許容できる人の割合が増えた」という、それだけの話なのです。
飯田)許容できる人の割合が。
高橋)割合が少し増えたというだけなので、相変わらず「許容できない」という人はかなりいます。それはそれで「割合が増えた」ということは正しいのだけれども、こういうときに、マスコミの人はストーリーとして一部の例だけを言うわけです。全体の話をしていないから、議論にならないのですよね。
「許容しない人」は2021年8月の57%から、2022年4月には44%に減少 ~許容する人は増えている
飯田)黒田さんは全体論として、徐々に許容している人が増えているのではないかという話をしていたのに、「自分は許容していない」という個別具体的なことを。
高橋)「自分は許容していない」という人は、データにも入っていますよと。
飯田)東大の渡辺努教授のインフレ予想調査の話ですが、直近の2022年4月の調査では、44%が「許容しない」と答えている。
高橋)そういう話なのです。「去年(2021年)の8月は57%が許容しなかったけれども、今年の4月には44%になった」という話です。逆に言うと、許容する人としない人は、五分五分と言えば五分五分なのです。
飯田)4月の時点では。
高橋)そういう意味では、許容しない人の意見があるのは間違いありません。そういうことではなく、全体の数字を言っているだけだと。その変化を言っているだけだという話は、マスコミの人には難しい。
GDPギャップを埋めるためには「呼び水」が必要 ~何もしなければ貯蓄は爆発しない
高橋)大きな問題点はここにあるのではなく、いまGDPギャップについて、内閣府の話でも約20兆円という推計が出ました。あれでも10兆円くらいは少なめに見ているから、本当は30兆円くらいあるのです。
飯田)本当は。
高橋)それをどうやって回収するかということですが、黒田さんは「強制貯蓄が爆発する」という言い方をするのです。コロナ禍で消費が抑えられ、貯蓄になっていると。
飯田)どこにも使えなかったものが。
高橋)その貯蓄が爆発するという言い方なのです。しかし、私はそうではなく、GDPギャップがあったときには「呼び水が必要だ」という立場なのです。呼び水がないと、爆発はしませんよ。
飯田)みんな貯蓄は貯蓄で残してしまうと。
高橋)将来が不安だから貯蓄に回すのです。呼び水があって、初めて消費があり、景気がよくなり出すのです。最初に誰がイニシャルキックを行うかというと、「政府です」というのが私の立場なのです。
GDPギャップをどのようにして誰が埋めるか
高橋)黒田さんはそうではないわけです。「強制貯蓄でいきますから大丈夫です」という。この論法は、財務省がよくやる論法です。私はそちらの方が問題だと思うし、これはマクロの話なのです。マクロのGDPギャップを誰が最初に埋めるか、どのように埋めるか。埋めなければ失業が増えるだけなので、どうやって埋めるかということです。その政策議論まで到達すればいいと思ったのだけれども、そうなりませんね。
強制貯蓄を引き出すためにも、財政出動が必要
飯田)今回のスピーチ原稿は、日銀のホームページに載っています。確かに、「強制貯蓄が」と。
高橋)いつもそれを言っています。「強制貯蓄が~」という人は、財政出動したくない人なのです。強制貯蓄がどうせ爆発するから、民間は絶対に出るので財政出動は要らないという立場なのです。
飯田)強制貯蓄が爆破するから。
高橋)私は順番としては、強制貯蓄を引き出すためにも、財政出動が必要だと言うのです。そこをポイントとして政策議論してもらうと面白いのですが、野党の質問を聞いていると、無理だなと思います。「黒田さんは買い物をしたことがあるのですか?」という話ばかりですから。
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