防衛省の事務次官人事の「背景」にある「大バトル」

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ジャーナリストの須田慎一郎が6月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。新たな防衛事務次官に鈴木敦夫防衛装備庁長官を充てる防衛省の人事について解説した。

防衛省の事務次官人事の「背景」にある「大バトル」

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

防衛事務次官

防衛省は6月17日、島田和久事務次官が退任し、後任に鈴木敦夫防衛装備庁長官を充てる人事を正式に発表した。発令は7月1日付けとなっている。

飯田)6月17日の閣議で決定され、その後、防衛省から正式発表されました。この人事が波紋を広げているという報道があります。

「事務次官人事は続投」と予測されていた

須田)通常国会が終わりましたので、いよいよ霞が関は人事の季節に入ってきています。防衛省はトップ人事、「事務次官人事に関しては続投」という観測が強まっていたのです。

飯田)島田さんの続投と。

須田)そうです。いまちょうど2022年末に向けて、国家安全保障戦略などの3文書の改定作業という、極めて重要な作業が行われています。特に「防衛費の対GDP比2%超え」というところも含め、重要な局面に入ってきたので、継続して仕事をしてもらった方がいいだろうというところです。

飯田)継続した方が。

須田)2年を超える長期にはなるのですが、防衛省にとっては重要な局面だからということで、春先くらいから続投という方向が大臣中心に示されていたのです。

続投予測から一転して鈴木防衛装備庁長官が後任に選ばれた背景にある「骨太の方針」 ~異常な人事

須田)それが今回、官邸によってひっくり返された。2年を超えたから、年次が滞るというところもあったのかなと思いますが、後任の鈴木防衛装備庁長官は、島田事務次官と同期なのです。

飯田)同期。

須田)ですから年次が若返るわけでもない。そして「防衛装備庁長官」は「次官級」と言われていて、同格なのです。ここから転出するという形が取られているポストなだけに、異例というか、「異常な人事」と霞が関では受け止められています。

飯田)異常な人事。

須田)背景に何があったのかというと、この番組でも何度か取り上げましたけれども、通常国会のなかで「骨太の方針」を内閣がまとめました。自民党内でもいろいろな議論がありました。

「骨太の方針」をめぐり、「積極財政派」と「緊縮財政派」でバトルが繰り広げられた ~「積極財政派」が押し切る

須田)そのなかで「積極財政派」と「緊縮財政派」が大バトルを繰り広げました。積極財政を進めていくべきだというところと、財政再建が最優先だろうというところで、一定程度の予算の増額に留めようとする動きがありました。

飯田)「積極財政派」と「緊縮財政派」が。

須田)もちろん、緊縮財政派のバックには財務省がついていたのですが、結果的に「積極財政派」が押し切るような形になって、骨太の方針がある種の決着をみました。

「積極財政」主張の背景にいたのが島田事務次官では ~その島田事務次官を交代させようという財務省・官邸サイド

須田)実は積極財政の背景にあるのは、もちろん景気経済対策もそうですが、防衛予算の対GDP比2%を実現するためには、補正ではなくきちんと年度予算で対応しようではないかと。そうしないと実績ベースに乗ってこないということがありましたから、そこもかなり大きな柱になっていました。実はそれを主張した背景にいたのが、島田事務次官ではないかと言われているのです。

飯田)そうなのですね。

須田)「あいつがいるから今回の骨太の方針が出てきた」というのが、財務省および官邸サイドの認識です。間違いなく、そういう認識があるはずです。だから、そこを交代させる。秋へ向けて骨太の方針の第2ラウンド、2次補正の大型化も含めて、もう綱引きが始まっているということです。

飯田)新聞報道などでも島田さんが事務次官になる前、安倍元総理の秘書官も長く務められていたという話も報じられていました。やはり親安倍派の人たちは全部排除するのかということがありましたけれども、より具体的な政策の話なのですね。

非社会保障費は「3年間で1000億円」 ~1年で300億円強

須田)「積極財政か財政再建か」という財政問題をめぐるバトルの一端が出てきた背景を考えないと、今回の不可解な人事は見えてこないのだろうと思います。

飯田)確かに骨太の議論のなかでも、「毎年の予算のキャップがはまっていたら、防衛予算の積み増しなどは夢のまた夢になってしまうではないか」という辺りが、まさに議論の焦点だったと須田さんが番組でおっしゃっていましたよね。

須田)「3年間で1000億円」のキャップをはめられている状況が、これまで7年間ほど続いてきた。3年間で1000億円ですから、単年度にすると300億円強です。それしか増額できない。全体の年度予算の非社会保障費は、3年間で1000億円しかないわけですから。それでは2%の防衛予算など、とてもではないけれども無理です。

自民党の若手議員による「真水50兆円規模」の補正予算を求める提言書

飯田)今後の選挙を経て、臨時国会や補正予算、本予算など、ここから先のバトルが深刻化していく感じですか?

須田)既に水面下では、自民党の若手が「真水50兆円規模」の補正予算を求める提言書をまとめています。

飯田)それはすごいですね。本予算が約100兆円だから、その半分ぐらいを補正で出すという。

須田)「それくらいやらないと、いまの日本の景気経済は回復しないだろう」という強い問題意識を持っているのです。

飯田)確かによく試算されるGDPギャップは、どんなに少なく見積もっても20兆円くらいはあるだろうと言われています。50兆円を「ドン」と出しても、GDPギャップをようやく埋めるくらいというところですか?

須田)その辺りを、総裁をプラスして党三役に提言書をまとめる。これがまた派閥横断的な若手議員なのです。若手議員というのは、衆議院での3回生以下、参議院では2回生以下です。

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