「真の敵はロシアでアジアは二の次」気になる最近のアメリカの議論
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。夏にも開催の可能性がある米中首脳の電話会談について解説した。
米中首脳の電話会談が実現か
アメリカのブルームバーグ通信が6月16日、複数の関係者の話として、アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席の電話会談について、夏ごろの開催に向けてアメリカ側が調整を進めていると報じた。具体的な時期には触れていないが、米中首脳の電話会談が実現すれば、2022年3月にテレビ電話が行われて以来の意思疎通となる。
飯田)対面ではなく、電話会談の可能性だということです。
宮家)米中が定期的に連絡を取るのは当然だと思いますし、取るべきだと思います。合意することがあるわけではないけれども、話し合いをして、相手が何を考えているのかをお互いに知り、サプライズがないようにすることが大事です。当分、米中が合意して仲よくなるとは思わないけれども、会談「開催の可能性」があるのはいいことだと思います。
台湾をめぐっての米中の論争 ~常に抑止し合う米中
飯田)先日のアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)のなかで、米中の国防大臣同士の会談がありました。
宮家)お互いに言いたいことを言っていました。オースティン国防長官が言ったことに、何1つ新しいものはなかったけれども。全体の流れとしては、5月23日にバイデン大統領が東京で「台湾への軍事的関与はあるか」と聞かれて、「ある」と言いました。
飯田)YESと言った。
宮家)さらに台湾が防衛作戦をするような状況だと、アメリカは台湾関係法で支援するわけだけれども、今回はその台湾関係法に書いていある「アメリカの軍事力を維持していきます」という文言を繰り返して言っただけなので、別に新しいことではないのです。
飯田)新しいことではない。
宮家)中国側は「最後まで戦う」などと相当反発はしていましたけれども、中国だって昔からそうですから。こうやって米中がお互いに言い合っていること自体は、まだいいのではないでしょうか。このような状況が当分続くのだと思いますが、これが続いている間は、実際の戦闘などはないわけですから。そういう意味で、お互いが常に抑止し合っているのは「良し」ということです。
気になるアメリカの議論 ~脅威なのはロシアでアジアは二の次
飯田)ある意味パワー的なバランスを取っている状況のなかで、他方、ウクライナが動いている。
宮家)いまアメリカ国内で議論が芽生え始めていて、少し気になったので産経新聞に書かせていただいたのですが。
飯田)産経新聞のコラム「宮家邦彦のWorld Watch」に書かれています。
宮家)アメリカが中国を念頭に、インド太平洋地域に帰ってくるのは大歓迎なのだけれども、いまのアメリカ国内の議論のなかで、「よく考えてみたら、本当のアメリカの脅威はロシアなのではないか。中国はまだロシアのような力による現状変更はしていないでしょう」、「ジョージアから始まって過去20年間、力による現状変更をしてきたのはロシアでしょう」というのです。そうなると、まずロシアへの対応を優先しなければいけないのではないか。中国とはむしろ関係を改善して、ロシアに「あんなことはやめろ」と言わなければならないのではないか、という議論が出てきているのです。
飯田)中国ではなく、ロシアだと。
宮家)1つ間違えると、「ロシアやヨーロッパが大事で、アジアは二の次だ」ということにもなってしまう。日本にとって、それでは困るので、気になって書かせていただいたという経緯です。
飯田)そうですね。
宮家)すぐにそうなるということではないのですけれども、中国からすれば、アメリカがインド太平洋や中国に関心を持ちすぎては困る。ヨーロッパで何かあり、中東で何かあって、アメリカがそちらで忙しくなれば、それだけ中国には余裕ができます。そういう意味で、中国だって常にいろいろなことを考えているのだと思います。
バイデン政権のアジアへの政策はブレていない
飯田)かつて、オバマ政権が「アジアへのピボット」と言い出し、アジアにシフトするかと思いきや、中東に足を取られたことがありました。
宮家)中国は上手くやるわけです。2001年の9.11のときからそうです。しかしいまのところ、バイデン政権はそれほどブレていません。ブレていないのはいいのだけれども、国内での力もしくは人気、もしくは評価が下がっている。ガソリンが1ガロン5ドルですよ。アメリカは車社会だから、交通費に掛かるお金が膨大になってくることを考えたら、バイデンさんは必死ですよ。
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