弱腰な「外務省の存在」が背景にある 中国の東シナ海でのガス田開発
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ジャーナリストの須田慎一郎が6月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国の東シナ海におけるガス田開発への日本の対応について解説した。
中国による東シナ海でのガス田開発、日本が抗議へ
日本と中国が東シナ海情勢について協議するため、外務省局長によるテレビ会議を6月23日に開く方向で調整していることがわかった。中国は尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返している他、最近は新たなガス田試掘や日本の同意のない海洋調査も実施したとみられ、日本側は抗議の意思を伝えるとみられている。
飯田)ラジオネーム“ノリリン”さん、千葉県八千代市の50歳の方。それから鎌ヶ谷市の“鎌爺”さん、58歳の会社員の方から、ガス田についてメールをいただいております。「日本はなぜ開発しないのですか? 日本の技術力ならやれるのではないでしょうか」というようなことも書かれています。
須田)私もその通りだと思います。大前提として相互合意がないと、このエリアでエネルギーの開発はできないことになっているのです。それを一方的に中国が破っているわけですから、中間線から日本側においては相互主義ということで、日本も試掘等を含めてやればいいのではないかと思います。
「骨太の方針」で「台湾」という文言を盛り込むことに抵抗した外務省
須田)日本政府内でも、そのような主張がないわけでもないのです。しかし、それを止めているのは外務省です。対中政策に関して、本当に外務省は腰が引けています。「骨太の方針」の安全保障政策のなかでも、「台湾海峡問題」あるいは「台湾問題」というところを当初は盛り込もうとしました。ところが「島嶼」という表記になっていたのです。
飯田)島嶼と。
須田)これではメッセージとして弱すぎるから、「台湾もしくは台湾海峡」という文言に切り替えるべきだという意見に対し、徹底的に抵抗したのが外務省なのです。
飯田)なるほど。
須田)「骨太の方針」というと、積極財政派と財務省のバトルばかりが注目を浴びているのですけれども、実は外務省もそのなかにおいては抵抗勢力というか、政治の要求を妨害するような動きに出ていたことは間違いありません。
飯田)安全保障に関しては国防部会など、いろいろとあるけれども、総理に対して中国に関する文書を出そうとするときに、普段は来ないけれども「そういうものは出すべきではない」と反対意見を言う議員の方もたくさんいると言われます。そういうところでも、また1バトルあったのですね。
霞が関による抵抗のために政治がリーダーシップを発揮できない
須田)今回の骨太の方針をまとめるにあたって、やはり外務省が1つ大きなネックになっているのだということです。文言として入れるか入れないかというところで、最終的には台湾という文言が入りました。そういった意味では、政治側が政治主導を取り戻したというように考えてもらっていいと思いますが、なかなか国民の負託を受けた政治がリーダーシップを発揮できない背景には、やはり霞が関の強い抵抗があるのだということです。
飯田)霞が関の。
須田)それは財務省に限った話ではなく、外務省もそのなかに入っているのです。そもそも骨太の方針自体が、すべて官僚の作文なのです。ペーパーで10枚程度にまとめ、それを政治主導で決めていくというのが当初の「骨太の方針」でした。しかし、いつの間にかすべて霞が関に丸投げになり、「これも入れた方がいいのではないか。あれも入れた方がいいのではないか」と、膨大な文章量になっているという状況もあります。
政治側が責任を持って予算案をつくるべき
須田)やはり、政治主導で予算案の原案をつくっていくという観点からすると、政治側が責任を持って行うべきだと思います。ガス田開発なども、すべてそれに関連してきてしまうのです。
飯田)確かに骨太の方針は毎年60~70ページになっていて、これを丹念に1つ1つ読み込み、しかも脚注まで読むことは難しいですよね。そして、そこに罠が仕掛けられているかも知れないという。
須田)政府にとって、予算がある意味ですべてではないですか。こういう政策を進めていきます、こういうところに人員を割きますというのは、すべてお金が絡んでくる話です。
飯田)裏付けがないとできません。
予算が付かなければガス田の調査もできない ~ただ抗議してもアクションは取らないということが中国にわかってしまう
須田)予算が付かなければ政策は進んでいかない。ガス田の問題に関して言うと、原点を辿っていけば予算になるわけです。
飯田)ガス田への調査などに予算が付かなければ、いかに抗議したところで実際には動かないということですか?
須田)そうなのです。その辺りのからくりを理解しておかないと、ただ単純に抗議してもアクションは取らないということがわかってしまうのです。
飯田)中国側は当然それを知っていますものね。
須田)もちろん。
飯田)それこそ足元を見られる。
須田)実際に開発するかどうかは別ですが、試掘するというところまでいかないにしても、ただ調査費を盛り込むなどということはできるはずなのです。なぜそれをやらないのか。「中国に対抗してガス田を開発しろ」と言っているわけではなく、そこに調査費を付けるだけでも、中国に対するメッセージを送ることになると思います。その上で抗議するということになれば、中国側も「真剣に取り組まないといけない」ということになると思います。
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