防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄が6月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。北朝鮮外務省が主張する「アジア版NATO」について解説した。
アジア版NATO
北朝鮮外務省は6月26日、WEBサイトに掲載した声明文で「アメリカは日本や韓国と合同軍事演習を露骨に行い、アジア版NATOを築こうと本格的に動いている」と主張した。
「アジア版NATO」にはならない日米韓 ~アジア太平洋地域やインド太平洋地域で多国間の枠組みをつくると動けなくなる
飯田)「アジア版NATO」と北朝鮮が主張しているという話ですが、実際にこういう動きがあるのですか?
高橋)それはないですね。NATOのような多国間同盟は、それを構成するどこかの国への攻撃に関して、すべての国への攻撃とみなします。日本と韓国は対中国政策が少し違っているので、台湾有事が起きたときに、日本と韓国が同じ対応をするかどうか。あるいは南シナ海で有事が起こったときに同じ対応をするかというと、同じとは考えにくいです。
飯田)そうですね。
高橋)比較的、対応が近くなるのは北朝鮮に対してであって、そこについては日米韓で1つの枠になるのですが、それ以外の問題については、まだコンセンサスがあるわけではない。「アジア版NATO」と言えるようなものではありません。ただ、北朝鮮がこういう言い方をしたということは、「日米韓の協力強化」を北朝鮮が本当に嫌がっているのだと思います。
飯田)日韓の間には、まださまざまな形で棘が刺さっているので、アメリカとしても多国間の枠組みのなかに日韓を入れた形にしたい。政治レベルでは、そういう話し合いをしようとしている部分もありますが。
高橋)どうですかね。アジア太平洋地域やインド太平洋地域には多様な問題がありますので、多国間の枠組みをつくってしまうと、逆に動けなくなるだけだと思います。
日米・米韓・米豪という2国間同盟の横の連携を強化する ~問題によって組み合わせを変える
高橋)特徴としては、2国間同盟がつながっていて、日米・米韓・米豪という2国間同盟の横の連携を強化する形になります。南シナ海で何かがあったときには、米豪と日米が中心になるでしょうし、東シナ海で何かあったときには、日米が中心になって米豪が関わってくる形になるでしょう。組み合わせを問題によって変えることで、オーダーメイドされたような対応ができるため、全体を1つに束ねようということは考えていないと思います。
飯田)それぞれの問題ごと、課題ごとにタスクフォース的に集まってくる。
過去30年、機能している2国間同盟での連携 ~ある意味ではNATOよりも抑止できている
高橋)実際に過去30年間は機能していますから、そのやり方の方がいいのだと思います。ヨーロッパでは戦争を抑止できていないのです。ユーゴ内戦、ジョージア侵攻、今回のウクライナ侵攻もそうです。ヨーロッパにおける多国間のモデルは、決して理想像ではないと考えるべきだと思います。
飯田)欧米を見習うような発想になりがちですが、ある意味、結果的には安定しているではないかと。ベトナム戦争はありましたが、それ以来ないと考えると、こちらの方がよほど抑止している。
高橋)朝鮮半島と台湾海峡という、過去30年以上にわたって大きな問題地域があるにも関わらず、ですから。
飯田)むしろこれをブラッシュアップしていく。
高橋)そうすべきだと思います。
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