ジャーナリストの鈴木哲夫が7月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。亡くなった安倍元総理の後継会長を当面置かず、集団指導体制で運営する方針になった安倍派(清和政策研究会)について解説した。
安倍派分裂回避 後継会長を置かず集団指導へ
自民党の安倍派(清和政策研究会)は、参院選の遊説中に銃撃され暗殺された安倍元総理大臣の後継会長について、当面は置かない方向で調整に入った。会長代理の塩谷立・元総務会長ら有力者7人による世話人会を設置し、集団指導体制で運営する方針。
飯田)派閥の名前も、安倍派を残すということも出ていますね。
鈴木)いろいろ裏を返せば、安倍さんの指導力、求心力、存在感、カリスマ性を含めて、やはり安倍さんが圧倒的な力を持っていたわけです。他の派閥も似たところはあります。
飯田)それぞれの派閥で。
鈴木)二階派もそうですし、麻生派もそうでしょうけれども、トップが年齢を重ねてきて「さあ、後継者をどうする」というとき、後継者がいない。それぞれの派閥で後継者の育成ができていない状態です。長期政権のため、そうなってしまったのだろうけれども、そのなかでも安倍派に関しては、「安倍さんの後継者」などということは考えていませんでしたよね。安倍さんはまだやる気十分だったわけだから。
飯田)安倍さんの次などということは。
鈴木)そう考えると、急に安倍さんがいなくなって、「誰だ」と見渡しても、会長として大派閥をまとめていく求心力や実績のある人がいるだろうか。「思い切って世代交代して、若い人でも」と言う人もいたけれど、「それで大丈夫か」という不安もある。
個性的な人が多い清和会 ~派閥の結束についてはさまざまな考え方が
鈴木)そうすると、落ち着くところは「年齢的にもこの人だろう」という2番目の人。それでとりあえず当面は凌ぐ。いま出てきていますが、集団指導体制のような形でしばらく様子を見るということでしょう。
飯田)集団指導体制で。
鈴木)年齢的なことも考えると、会長代理だった塩谷さんで当面は凌ごうという考えもある。しかし、集団指導体制になるとしても、清和会は個性的な人が特に多いですから、派閥の結束については今後いろいろな考えが出てくるでしょう。
飯田)集団指導体制のなかで名前が挙がっているのは、いま言った塩谷さんや、同じく会長代理の下村博文さん。参院幹事長の世耕弘成さんも存在感がありますし、副会長の高木毅さんもいる。みんな大臣をやっていますよね。事務総長の西村康稔さん。官房長官の松野さんや、萩生田さん、総務会長の福田達夫さんもいらっしゃる。
安倍さん中心だった清和会 ~各派閥が今後、どう付き合っていくか
飯田)「若手で」というと、福田さんを推す声もあります。一気に世代交代するというような。
鈴木)ただ、民間企業でもいきなり若い人が社長になるかと言ったら、なかなか難しい。派閥を運営していくノウハウや求心力などを考えると、一気に世代交代するというのは勝負です。難しいですよね。後継者がいるようで、実は安倍さん中心の派閥だったということが、こういう状況からわかってくるわけです。
飯田)安倍さん中心だったということが。
鈴木)逆に言うと、岸田派辺りがどのように新しい清和会と付き合っていくか。それによって自民党内の権力構造も大きく変わってくるわけです。
菅氏がどのようなチームをつくるのか ~今後の権力構図がどうなるのか
鈴木)参議院選挙が終わったあとに、菅さんがどういうチームをつくるのか、誰が参加するのかということが注目されていました。取材していると、石破派も行くかも知れない。また、河野太郎さんや小泉進次郎さんもセットです。それから二階派のエースと言われた武田良太さんなど。
飯田)みんな菅政権で要職を務めた方々ですね。
鈴木)この間の総裁選では、岸田さんの対抗馬として、河野さんで戦ったチームです。ある意味、反主流派と言ってもいいですよね。次の総裁選は絶対に河野さんが出てくるわけだから、そういうものが結束すると、岸田さんも意識するでしょう。岸田さんは今後、誰と手を結んでいくのか。
飯田)7月13日には、岸田さんが麻生さん、茂木さんと会食をしたと。岸田派、麻生派、茂木派の主流3派というような感じで……。
鈴木)さっそく今後の権力構図、党内力学などの話をしているのは間違いありません。
内閣改造・党役員人事がどのようになるか ~新たな駆け引きが始まる
鈴木)内閣改造、党役員人事が間違いなくありますので、時期としては8月と言われていましたけれども、ずれるかも知れません。しかし近々、どちらにしてもあるのです。そこでどういう配分にしていくのか。
飯田)一部報道では、副総理格に菅さんを迎え入れるのではないかという記事も出ています。
鈴木)ある種、安倍さんがこういうことになった危機に、集団指導体制でいきたいという。
飯田)挙党一致体制のような。
鈴木)そういうことで、天敵とは言わないけれども。
飯田)少し遠くにいた人たちも。
鈴木)そういう人たちを取り込むという方法も考えられます。入閣も含めて、言われたら断るわけにはいかないですよね。新たな駆け引きが既に始まっているということです。総裁選が2年後にありますので、そこへ向けて、岸田さんが党内のバランスをどう取るのか。
「黄金の3年間」の1年前にある自民党総裁選が注目される
飯田)参議院選挙が終わり、そして安倍元総理の暗殺もあった。この先の話として、内閣改造のみならず「黄金の3年間」などと言われますが、その辺りはいかがですか?
鈴木)「黄金の3年」と言われていますが、これは「次の国政選挙まで3年ある」ということなのです。
飯田)次の国政選挙まで。
鈴木)いちばん近いものと言えば、次の参議院選挙が3年後の夏にある。そのあと、秋には衆議院の任期がくる。解散しなければ向こう3年間、国政選挙がないわけです。だからある意味では、岸田さんはそのままいれば、3年間はいろいろなことを思い切って好きにやれるということです。
飯田)3年間は。
鈴木)しかし、注意すべきは国政選挙より前、いまから2年後の秋に自民党の総裁選挙があるのです。岸田さんは総裁選挙をどうしますかと。「私は1期で総理を辞めます」ということはあり得ませんよね。
飯田)そうですね。
鈴木)再選を狙うとすると、総裁選に勝つためにはどうするかという話になるわけです。岸田派だけでは勝てませんから、当然、他の派閥にも岸田さんへの支持をもらうことになります。
次の総裁選で河野氏とどう戦うのか ~菅グループの結成もあり、存在感が増すことも
鈴木)そのためにいろいろなことをやっていくでしょう。そのなかで例えば、参院選後にチームができるだろうと言われている菅グループの存在があります。そこに河野さんが入れば、河野さんは次の総裁選に絶対出るわけですよね。
飯田)総裁選に。
鈴木)そうすると、岸田さんが総裁選で勝つためには、いろいろなところに支援を頼む必要がある。河野さんの人気がその時代の政治テーマとともに上がってきたりすれば、党員のなかで人気が出る可能性もあります。
岸田氏の最大のカードである「解散カード」を切ることも ~総選挙で勝てば岸田さんの再選に
鈴木)岸田さんとしては、それを抑える最大のカードが解散カードなのです。解散カードを切れば、解散ということになる。そして総選挙に勝てば、何と言おうと岸田さんの再選なのです。信任ですよ。これを降ろすということはあり得ない。だから、総選挙をやって勝てばいいのです。
飯田)なるほど。
鈴木)例えば、ライバルの河野さんでも何でも、解散になったら自民党のために一生懸命選挙をやるでしょう。総選挙に負けていいはずがないのだから。そして勝ったとすると、皮肉にも、それは岸田さんの信任になるわけです。
飯田)自民党が勝ったのだから。
鈴木)だから解散カードというのは、党内の求心力を高めるためにも、極めて重要なカードなのです。再選を狙う岸田さんが、権力構造が変わってくるなかで切る可能性がある。来年(2023年)は統一地方選挙がありますから。
「解散カード」を切るとすれば総裁選のある「2年後の秋前」か ~通常国会が終わったあと
鈴木)ここまではもちろんできないけれど、そのあとG7サミットが広島で開催されます。それなりに岸田さんは懸けている。それが終わって、だいたい総理に就任して2年を超えたら、いつ解散があってもいいと永田町ではよく言われるのですが。
飯田)そうですね。衆議院任期の半分が終わったらと。
鈴木)それを考えると、私は総裁選がある2年後の秋前だと思います。
飯田)2024年秋の前。
鈴木)つまり、通常国会が終わったあと辺りの解散は、十分あり得るのではないかと思います。
飯田)2024年のゴールデンウィークが終わったくらいから、みんなソワソワし出す。
鈴木)経済対策なのかどうかはわかりませんが、いろいろな争点をつくるでしょう。それで流れをつくる可能性がある。「黄金の3年に選挙はない」などと言っていますが、安倍さんが亡くなったことによって自民党内の権力構造も変わります。そのなかで、次の総裁選に向けて岸田さんが走るとすれば、解散カードを使う可能性が十分にあります。ですので、「黄金の3年」というのはどうなのでしょうか。そんなことはないのではないかと思います。
2023年の夏以降、2024年の夏くらいまでの1年間に政局がある可能性が
飯田)他党としてはどうなのですか?
鈴木)公明党は次の地方選挙まで何もできません。全面的に勝たなければいけないので。
飯田)地方選挙は。
鈴木)今回、比例も減っていますからね。だから「解散なんかしないでくれ」という感じなのだけれども、地方選挙が終われば。
飯田)地方選挙が終われば公明党も。
鈴木)野党はそこまでにいろいろ再建できるかどうかです。そういうこともあるので、早いタイミングを狙って解散を打てば、野党がいまのままなら勝てるチャンスも出てくるわけです。そんな駆け引きが2023年の夏以降、2024年の夏くらいまでの1年間に政局があるのだろうな、というのが私の予測です。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。