「自公76議席獲得」は大勝なのか 参院選結果の「もう1つの見方」
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ジャーナリストの鈴木哲夫が7月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。多くのメディアが「自民党が大勝」と報道した参院選の結果について解説した。
「自公76議席獲得」は大勝なのか
飯田)第26回参議院議員選挙について、7月10日に投開票が行われました。自公で76議席を獲得し、「大勝だ」と書いたメディアも多かったわけですが、どうご覧になりますか?
議席数を倍にしても「勝っていない」とコメントする維新の会幹部
鈴木)私は当日、関西テレビの番組に出ていました。関西で強いのは維新です。しかし、維新も全体の選挙区では4人しか獲っていません。接戦で「最後に滑り込むか」と言われていたところは、落選しているのです。
飯田)東京や京都など。
鈴木)京都は福山さんが強かったですけれどもね。そういう意味では、維新は議席数が倍になって「維新、躍進」という感じだけれども、松井さんにしても藤田幹事長にしても、極めて冷静に見ていて、「勝っていないのだ」と言っていました。
飯田)厳しいコメントが出ていました。
鈴木)選挙区で4議席しか獲れないということは、関西以外の地方組織がうまくいかないということです。東京でも勝てない、他の九州でも勝てないということです。
飯田)関西以外では。
鈴木)今回の結果は、数字や多くのメディアが評価しているものと、実際に選挙をやってきている当事者たちとの温度差を感じました。
飯田)当事者たちとの。
鈴木)逆に自民党にとっても言えることで、自民党については、ほとんどのメディアが「大勝」と表現しています。
比例で獲得数を伸ばせなかった自民党
鈴木)選挙当日から翌日(11日)にかけて、いろいろな人に電話で取材しましたが、自民党幹部を含めて「大勝」と言われることに違和感を持っていました。63議席を獲ったので、勝ちは勝ちなのです。自民党が勝ったことは間違いない。そういう意味では「勝ち」なのだけれども、「大勝」かと言うと、そうではない。自民党の人たちは比例のことを言うのです。比例で18議席しか獲れていないと。伸びていないのです。
飯田)下馬評では20~21議席だと言われていました。
鈴木)21議席というのもありました。
飯田)多く獲るのではないかという予想でした。
鈴木)出口調査などのいろいろな調査からすると、21議席はいくのではないかという、政党自身の調査、予測もあったし、メディアの予測もあった。でも実際は63議席です。勝ちなのですよ。本当に勝ちなのだけれど、「大勝」かというと、自民党の支持が飛躍的に伸びたわけではないということです。
飯田)比例が伸びなかった。
鈴木)勝ったのは1人区や選挙区です。最後まで競っていたでしょう。「どちらが選ばれるか」という部分を、基本的に自民党は多く押さえた。安倍さんの事件もあり、自民党に票が流れたという声もあったけれど、組織自身は頑張ったと思います。激戦区を最後、一歩出たという感じの勝ち方なのでしょうね。
比例での票がれいわやNHK党、参政党に流れる ~既存の与野党全ての政治に「ノー」
鈴木)トータルで見ると、立憲や国民民主、共産などを見ても比例は減らしているわけです。自民党も実は比例がほとんど伸びていない。公明党も、ここ十数年で最悪の610万票台しか獲っていないわけです。それがどこに流れたかというと、比例で参政党、それからガーシーこと東谷義和さん。
飯田)NHK党。
鈴木)れいわでさえ、0から3議席に増やしているわけです。ということは、いまの有権者の意識はそこなのではないかと。つまり、既存の与野党すべての政治に対して「ノー」で、新しいところに票が流れている。これがいまの政治の空気かも知れません。だから「63議席に甘えてはいけない」という声が自民党のなかにあったのです。
飯田)「辛くも勝った」を積み重ねたらこうなったという。
鈴木)そういうことですね。
飯田)だから実感として「苦しかったんだよ、俺たち」ということになる。
鈴木)岸田さんの慎重なこの前の会見の物言いも、それが背景にあると思います。
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