経済アナリストのジョセフ・クラフトが8月9日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前年比でマイナス6兆円になった日本の上半期の経常収支について解説した。
今年上半期の日本の経常収支、前年比マイナス6兆円 ~輸入超で円安が進みやすい
財務省が8月8日に発表した今年(2022年)の上半期(1~6月)の日本が貿易や投資などでどれだけ稼いだかを示す経常収支の黒字額は3兆5057億円となり、前年同期比で6兆21億円減少した。
飯田)上半期としては比較可能な1986年以降、最大の減少幅だということです。日本の経済はいかがですか?
クラフト)2014年以来の低い経常収支です。2014年と似ているところは、円安だということです。当時もそうなのですが、今回は、輸出から輸入を引いた貿易収支が約5兆6600億円の赤字なのです。日本はもともと輸出国なので、ドル売り円買いです。輸出しますからドルが入ってきて、それを売って円に換算する。
飯田)ドルを売って円に換算。
クラフト)いまは、どちらかというと輸入超なので、ドルを買って円を売るわけです。6兆円近い金額を買うわけですから、円安が進みやすい。もちろん、日米の金利差など他の影響もあるのですが、経常収支、特に貿易収支による円安も無視できないということだと思います。
エネルギー価格を抑え、ロシアからのエネルギー供給が止められても対応できるように原発再稼働するべき
飯田)貿易収支の部分ですが、内訳を見るとエネルギーを買わなければならない。それが高くなっているところはかなり影響していますか?
クラフト)価格での上昇に加えて、日本の場合は原発再稼働が進んでいません。2011年以来、依然として化石燃料に頼っている状況が続いています。経済戦争という概念で、いまは有事です。日本がしなければいけない最大のインフレ対策、そして経済安全保障対策は、短期間でもいいのでエネルギー価格を抑え、なおかつロシアからのサハリンのエネルギー供給が止められても大丈夫なように、できるだけ早く原発を再稼働することです。もちろん、安全を優先した上で。
飯田)安全が確認された原発は、ということですね。
クラフト)そういうことです。
いまは経済戦争という有事である
飯田)エネルギーのところでロシアの話が出ましたけれど、サハリン1・2という日本が経営権を持っているガス田について、萩生田経産大臣は「維持する」と言っています。しかし、見通しはそれほど明るくないということですか?
クラフト)維持するけれど、いつロシアが止めるかはわかりません。「ロシアは止めるものだ」という仮定で動かないと、冬場になっていきなり止められて停電になったら大変です。止められるものだという仮定で動かなければいけない。そのためにはやはり、安全を確認した上で早期に何基かの原発を再稼働する。それで冬場を乗り切ることがいまは必然だと思います。
飯田)岸田総理大臣は、9つの原発は冬に向けて動かすのだと発言しています。「既定路線ではないか」という批判もありますが、プラスオンも必要になりますか?
クラフト)できればプラスオンしたいのですが、先ほども言ったように、安全を確認した上での再稼働ですから、まずは9基を年内に再稼働すれば、少なくとも当面は乗り切れるということです。9基もできないのに「12基も15基も」と言っている場合ではないでしょう。とにかく、できるものからやるべきではないでしょうか。大事なのは、いまは経済戦争であり、有事なのだという概念を持つことです。
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