ロシアのガス供給停止でも、欧州の電力会社の一部が「儲けている」のはなぜか

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慶應義塾大学総合政策学部准教授の鶴岡路人が9月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府が設置した核融合の戦略を検討する有識者会議について解説した。

ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同) 写真提供:共同通信社

政府、核融合の戦略を検討する有識者会議を設置

政府は核融合の戦略を検討する有識者会議を設置した。高市早苗経済安全保障担当大臣は9月13日の記者会見で、研究開発や産業育成の方針を議論し、2023年春にもとりまとめる予定だと説明した。

飯田)核融合は、原子核同士を融合させてエネルギーを取り出す。原理的に言うと、太陽がエネルギーを生み出す原理と同じだという話もありますが、夢のエネルギーですよね?

鶴岡)技術はわからないのですが、エネルギー源を多元化していくということですね。石油・天然ガスのロシアへの依存をどうするかという問題のなかで、究極的には「違うエネルギー源をつくる」ということが解決策なのです。核融合についても、そういう文脈で緊急性が高まったということでしょうか。

ロシアに頼らないエネルギーを確保することは日本のエネルギー安全保障につながる

飯田)これを経済安全保障担当大臣が担っているという辺りは、ウクライナ情勢も含めて、安全保障とかなり密接につながるものですか?

鶴岡)これは経済安全保障であり、まさにエネルギー安全保障です。日本の場合は、石油と天然ガスの供給をいかにロシアから確保するかということで、「サハリン1・2」にコミットし続けているわけですが、それをやり続けたところで、ロシアに翻弄される状況は残念ながら変わらないのです。

飯田)ロシアに依存する限り。

鶴岡)そうすると通常の原子力発電もそうですが、海外に頼らない、特にロシアに頼らないものを確保していく。短期的な解決策にはなりませんが、中長期的に進めていくことが日本のエネルギー安全保障につながることは確実です。

発電コストの高いものを基準に電力価格が決まることが多いヨーロッパ ~発電コストの低い風力発電では過剰利潤が

飯田)先進7ヵ国(G7)におけるロシア産石油の価格上限設定(プライスキャップ)という話がありましたが、当然ながら、天然ガスについてもヨーロッパの依存度が高いわけです。日本も「サハリン1・2」がありますので、考えていかなければならない話です。

鶴岡)天然ガスの上限価格の話は、欧州連合(EU)でもなかなか議論がまとまっていない段階です。ただ、電力価格が上がってしまうのは、電力価格の決め方の問題でもあるのです。ヨーロッパの場合は、発電コストが高いものを基準に電力価格を決めることが多いので、天然ガスに引きずられて電力価格が上がっているのです。

飯田)発電コストが高い天然ガスに引きずられて。

鶴岡)しかし、風力発電などのコストが上昇していることはないはずです。もちろん、インフレで部品などの価格が上昇していることはあっても、そこまでは上がらない。結果として、ヨーロッパの電力会社の一部は、かなりの儲けを出しているのです。

飯田)そうなのですか。

鶴岡)発電コストが上がっていない電気も高く売れるので。

飯田)風力発電などは、その分、利幅が大きくなる。

鶴岡)「過剰利得をどのように徴税するか」というのが、ヨーロッパのいちばん大きな議論です。「ウィンドフォール・タックス」と呼ばれますが、「ウィンドフォール」というのは「過剰利潤」です。これに対して税金をかけ、その税収を使って一般家庭などへの支援に回すということです。

ロシアのプーチン大統領は、ヤロスラヴリ州知事とのビデオ会議を開催 2022年8月3日 Mikhail Klimentyev/Kremlin Pool/Planet Pix via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ

独自の電力価格の設定や過剰利潤への課税を打ち出しているドイツ・ショルツ政権 ~今年の冬の分の天然ガスは確保できている

飯田)EU全体で税制を決めるのですか? それとも各国で決めるのですか?

鶴岡)それは微妙なところです。そもそも電力価格の設定に関しても、EU全体として決まっている部分など、いろいろなものがあるのです。ドイツでは、とにかくいまは対応を急ぎたいので、EUで議論が進まないのであれば、ドイツのみで電力価格の設定の改革をしたり、「ウィンドフォール・タックス」として過剰利潤への課税をしていくという方針をショルツ政権は打ち出しています。

飯田)冬を目の前にして、ロシアからの天然ガスの供給が本当に止まってしまったら大変なことになるし、そうでなくても負担が大きくなるということは、いろいろなところで言われています。

鶴岡)「ノルドストリーム1」はドイツに直接入るものですが、天然ガスは既にほぼ止まっています。他はウクライナ経由のものが残っていますが、ドイツは今年(2022年)の分の天然ガスは確保できているのです。冬が平年よりも寒くなれば厳しいですが、ガスも電気もものはある。ただ、値段が上がるので、買えない人や払えない人が出てくるかも知れません。そこを救済するのは政府の仕事です。

ヨーロッパでも見直される石炭火力発電 ~ドイツでは石炭火力が3分の1を占めるほどに復活

飯田)EUでも電源についての対応は国によって違います。ドイツのように風力発電のところもあれば、フランスのように原子力が多い国もありますが、石炭火力も見直されつつあるという話を聞きました。

鶴岡)そうです。石炭火力は「気候変動の犯人だ」ということで、日本は叩かれていました。ヨーロッパなどから相当、批判されたのですが、直近ではドイツの電源の3分の1ぐらいまで石炭が復活しています。

飯田)3分の1が石炭なのですね。

日本の優秀な石炭火力の技術をヨーロッパにアピールするべき

鶴岡)ドイツやヨーロッパから批判されてきた日本の関係者にしてみれば、噴飯ものだと思います。しかし、日本の新しい石炭火力技術で、温室効果ガスの排出はかなり少なくなっています。あるいはエネルギー効率が高まっているものもあります。そういうものが再び脚光を浴びる局面ではないでしょうか。気候変動対策よりも、いまは「脱ロシア」の方が優先順位が高いのが、ヨーロッパの現実だと思います。

飯田)日本の関係者からすれば、「化石賞」まで贈呈されたわけです。でもそれに耐えて技術を磨いてきたことは、無駄ではなかったのですかね。

鶴岡)積極的にエネルギー効率や温室効果ガスの排出の少なさをデータとして出し、優位性を説明するべきです。いままではその発信がうまくいっていなかった部分があると思います。

飯田)いま慌てて老朽化した石炭火力を回すくらいなら、うちの技術を使った方がエコですよと。

脱ロシアと脱原発に脱石炭 ~どこかで妥協しなければならない

鶴岡)あとは原子力ですね。ドイツは脱原発もやっています。

飯田)そうですよね。

鶴岡)脱ロシアと脱原発に脱石炭。同時には進められないので、どこかで妥協しなければならない。

飯田)ドイツは緑の党が与党なだけに、どうするかというところですが、併せ呑むしかないという感じですか?

鶴岡)原発に関しては、論理的に「原発のような別のエネルギー源が必要だ」というところには賛成の人が増えているのですが、具体的にどの原発を動かすのか。既に止まってしまった原発を再稼働させるのは、時間的に考えてどうなのか。また、コストはどのぐらいかかるのかということになります。いろいろな議論があって、「脱原発を止めれば問題が解決する」ということでもない事情があるようです。

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