維新が公明との選挙協力を「白紙」に そこにある「背景」

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ジャーナリストの鈴木哲夫と、産経新聞社・月刊「正論」編集長の田北真樹子が9月15日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。大阪府と兵庫県の衆院6選挙区での「公明党との協力をリセットした」とする日本維新の会・馬場代表の発言について解説した。

維新が公明との選挙協力を「白紙」に そこにある「背景」

「日本維新の会代表選、臨時党大会」新代表に選ばれ、会見にのぞむ馬場伸幸氏=2022年8月27日午後、大阪市中央区 写真提供:産経新聞社

日本維新の会・馬場代表、公明党との選挙協力「白紙」と発言

日本維新の会の馬場伸幸代表は9月14日、国会内で開かれた党会合で、公明党の現職が議席を持つ大阪府と兵庫県の衆院6小選挙区について、「いままでの公明との協力はリセットされた。まったくの白紙だ」と述べた。

飯田)もともと大阪都構想があったので、「公明には配慮」と言われていましたが。

鈴木)「白紙に」という発言は既定路線です。なぜかと言うと、維新もだけれど、公明党も同じなのです。

日本維新の会も公明党も来年の統一地方選挙に懸けている ~地方組織が弱い

鈴木)この2党は、来年(2023年)の統一地方選挙へ向けて、すべてを懸けていると言ってもいい。維新は特にそうですが、この前の参院選は通過点で、「1票でも多く取れればいい」というくらいの心構えだったのです。

維新の次の狙いは総選挙

鈴木)当時の幹部だった松井さんも含めて、馬場さんが言っていましたが、次の維新の狙いは総選挙なのです。総選挙に勝つためには、今回の参院選を見てもわかるけれど、選挙区で4議席しか獲れていない。つまり、地方組織がダメなのです。

飯田)地方組織が。

鈴木)そのためには、とにかく来年の統一地方選挙で地方議員を600議席……最初は700議席くらいと希望を言っていたけれど、とにかく増やさなければならない。地方議員が増えるということは、地方組織がしっかりするということです。それをベースにして次の総選挙に挑むと。

統一地方選挙で600議席獲得し、そこをベースに次の狙いの総選挙へ向かう ~地方議会選挙ではすべての政党を敵に回さなければならない

鈴木)これがシナリオなのです。来年の統一地方選挙では、徹底して地方議会選挙に勝たなければいけない。考えてみれば、地方議会選挙というのは中選挙区なのです。自民党も敵だし、公明党も敵だし、立憲も敵なのです。そのなかで勝ち上がるためには、すべての政党を敵に回さなければいけません。

飯田)選挙区に複数の当選者が出る。そうすると、最後の枠で鎬を削らなければならない。

鈴木)イメージしてください。例えば定数が20議席くらいの地方議会であるとします。最後の1~2議席を、自民党の6期~7期当選のベテラン候補と維新の新人と、なかなか学会支援票が集まらない公明党の3者で争う……もう記事がイメージできませんか?

統一選へ向けての既定路線のメッセージ ~維新の会も公明党も他党と仲よくすることはない

鈴木)そんなときに公明党や自民党と仲よくするわけがありません。先鋭化するというのは、統一選へ向けての既定路線のメッセージだと思います。逆に公明党もそうなのです。「言ってくれてありがとう。うちも徹底的にやる」と。公明党も大変だったではないですか。参議院の比例が618万票で。

飯田)本当は700万~800万票を獲らなければいけないという目標でしたが。

鈴木)700万票ラインを大きく割って、何とか総選挙でカバーしたのだけれど、とんでもない選挙になりましたから。大臣経験者が支援者に対して「投票所へ一緒に行きませんか?」くらいのことをやっていたのです。公明党も来年の統一選に懸けています。だから山口さんも再任のような、異例の状態になっていますよね。

飯田)そういう流れになっています。

鈴木)来年の統一選を考えたら、体制は変えられないということです。公明党もその通りだし、我々も徹底的にやると。維新と公明による、統一地方選挙へ向けてのシナリオ戦略がぶつかってきたという背景があります。

野党としては旧統一教会への関与を地方議員にも広げて自民党へのダメージを図りたい ~国会議員への影響も

飯田)統一地方選まであと半年くらいですが、与党側の準備はどうなのですか?

田北)旧統一教会問題で立憲民主党の泉さんが言われていたと思うのですが、いわゆる関与というものは、国会議員よりも地方議員の方が多いのではないかということです。

飯田)地方議員の方が多い。

田北)野党としては、地方議員まで範囲を広げた上で、自民党へのダメージを図りたいという思惑があるのではないでしょうか。

飯田)なるほど。

田北)鈴木さんがおっしゃったように、地方議員は国会議員を下支えする根っこの部分ではないですか。その人たちがダメージを受けると、国会議員の支持にも影響を及ぼします。

飯田)地方議員がダメージを受けると。

田北)国会議員の選挙にも地方議員の力は大きく影響します。中長期的に見ると、自民党はもっと危機感を持たなければいけないと思います。統一地方選を視野に入れて反転攻勢をかけなければいけませんが、永田町を見ると、相変わらず旧統一教会の問題で汲々としているではないですか。そういう意味で、自民党がいま、あまりにも頼りないと思います。

国会議員からの反発が強い茂木幹事長 ~一方で注目度が高く、茂木氏がどう動くかがポイントになる

飯田)現在、旧統一教会の話などをハンドリングしているのは茂木幹事長ではないですか。選対委員長も変わったばかりで、茂木さんはどうハンドリングしていくのでしょうか?

田北)初動で間違っていましたからね。茂木さんに対して、いろいろな国会議員からの反発がかなり強まっています。

飯田)少し前までは「次の総理候補の最有力」というようなことも報じられていましたが、いかがですか?

鈴木)茂木氏が反発を受けているということは、逆の言い方をすれば、注目度はあるわけです。ここで茂木さんが方向を変えて、さらに厳しい旧統一教会の調査を行うなど、新しい軸を出せば、それはポイントになる。つまり、よくも悪くも注目度が高いということです。

飯田)反発があるということは。

鈴木)茂木さんはこれまでのことを見てもそうですが、いまのところ主流派です。私は岸田派、茂木派、麻生派を主流3派と言っていますが、そのなかで茂木さんは世論や空気が変わってくると、「スッ」と方向を変えることがある。ある種のリアリズムのようなものは持っています。その辺りで、よくも悪くも茂木さんがどう動くかということはポイントでしょうね。

不安定な自民党を見て、ますます過激になる維新の会

鈴木)選対委員長の森山さんは、衆院小選挙区数「10増10減」の問題でとにかく大変です。そういう意味では、自民党はグラグラしています。そのなかでますます先鋭化して、流れをつくりたいというのが維新ですから、あのような強硬発言になるのでしょう。これからもっと過激になると思います。

石川県知事の馳氏が日本維新の会の顧問に

飯田)維新の会の顧問に、自民党の衆議院議員だった馳浩さんが就任するということです。いまは石川県知事ですが、驚きました。

田北)自民党の国会議員は「不思議だ」と言っていました。石川県知事選で維新にお世話になったからでしょうかね。こんなことを言ったら失礼だけれど、馳さんは少し捉えようのないところがあると個人的には思っていました。清和会に籍を置きながら、かなりリベラル的な政策をよくやっていたし、「どういう方なのかな」という思いはあったのですが。

飯田)知事としての判断では、また別のものがあるのでしょうか。石川県も保守が分裂して選挙をやっているところがあります。

鈴木)地域事情もあります。維新もその辺りはうまいですから。ここは自民党と仲よくすることによって、自分のところにと。あの地域で維新が多くの議席を増やせるかと言うと、そんなことはないわけです。だから自民と協力しておく。なかなか強かなのではないでしょうか。

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