ジャーナリストの佐々木俊尚が10月5日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。この先のウクライナ情勢について解説した。
ロシア上院、ウクライナ4州併合を批准
ロシア議会上院は10月4日、プーチン大統領がウクライナ東部・南部4州の親ロシア派勢力と調印した4州併合に関する「条約」の批准を承認した。批准は3日に下院で承認されており、これで議会の手続きが完了したと国営テレビが中継した。
飯田)一方的な住民投票から始まっています。
佐々木)「一方的な住民投票と言われるもの」という感じで報道されています。こういうことをやりながらも、4州全土を制圧できているわけではありません。ウクライナの反抗が激しく、さらに東部ハルキウ州はほぼウクライナが奪還したというニュースも入ってきています。
ロシアの4州併合はプーチン大統領の焦りの表れ
佐々木)その焦りの結果、こういう動きに出たのかなと。安全保障の専門家の意見だと、そういうプーチン大統領の感情から起こったのではないかと言われています。
飯田)プーチン大統領の焦りから。
佐々木)ここに来て「ロシアが核兵器の部隊を動かしている」という情報や、「いまのところ核兵器を使う兆候はない」という話が出ています。
ロシアが核を使ったら「ロシアの黒海艦隊を壊滅させる」とNATOが警告 ~この核抑止が成立するのかどうか
佐々木)一方で「ロシアがもし核を使ったら」ということに関して、NATO側は、核兵器は使わないけれど……「使わない」と言った瞬間に核抑止が成立してしまうので言いませんが……その場合には、「ロシアの黒海艦隊を壊滅させる」という警告を送ったという情報もあります。
飯田)NATO側が。
佐々木)シナリオとしては、もし仮にロシアがウクライナの無人の荒野などに低出力核を撃ち込んで爆発させると、その瞬間に、NATO側は核は使わないけれど、「ロシアの黒海艦隊を通常兵器で壊滅させるぞ」という脅しになっている。
飯田)核を使ったら。
佐々木)この抑止が果たして成立するのかどうかはわかりません。冷戦時代によく言われていたのですが、限定的な場面で、どこまで核抑止が現実的に働くのかどうか。それがここまで極端に表れた情勢は、いままでなかったのではないかと思います。
ロシアの核による抑止が効いている ~その状況を見ている北朝鮮
飯田)しかも、これほど「使われるかも知れない」という状況が見えてきている。
佐々木)結局はロシアが核を持っているから、NATOもアメリカも直接ロシア軍に攻撃できず、ウクライナに武器を供与するだけになっているのです。つまり、核による抑止が強烈に効いてしまっていると。
飯田)ロシアが核を持っているので。
佐々木)その状況を見て、「やはり核を持たなければならない」と北朝鮮は気付いてしまった。核を持っている間は、通常兵力でさえも自分たちの国にはやって来ないということを、北朝鮮は痛切に感じていると思います。
4州併合によって「我々の領土が侵されたら核戦争も辞さない」という正当性が確立したプーチン大統領
飯田)プーチン大統領の狙いとしては、核をちらつかせる、あるいは無人の場所で実際に使うことによって、NATOからの支援をやめさせたいのでしょうか?
佐々木)4州併合を批准したのは、そこにも意味があると言われています。4州がロシアになったわけです。
飯田)ロシア側の言い分としては。
佐々木)そうするとロシア側の見方としては、「ロシア国内でウクライナが戦っている」という建て付けになります。
飯田)そうですね。
佐々木)「我々の領土が侵されている」と。いままではウクライナ領である4州にロシアが攻め込んでいたから、ロシア領土が侵されていたわけではないけれど、その4州がロシアという国になった瞬間、そこでの戦いはロシアの領土が侵されている戦争であると言うことができます。
飯田)ロシアの言い分では。
佐々木)以前からプーチン大統領は「我々の領土が侵されたら核戦争も辞さない」と言っていたわけです。ウクライナとロシアが4州内で戦っていることについて、「ロシアが核を使う」という正当性が生まれたのです。誰も納得しない論理なのだけれど、プーチン大統領としては、それで正当性ができたと思っているのでしょうね。
4州併合によって国民を納得させて戦争を終わらせたいプーチン大統領 ~戦いへの士気が高まるウクライナ
飯田)他方、ウクライナ側からすると、いままでは2月24日のラインが意識されていたところがあった。特に開戦直後の「停戦交渉」に関しては、その部分のラインがありましたが、こうなったら「クリミアも含めて全部だ」ということになるのですか?
佐々木)西側から最新鋭の武器が大量に持ち込まれているので、ロシアは押し返されています。しかもロシア軍は、ほとんど何のスキルもノウハウもない新兵たちが、まともな武器もなく錆びた自動小銃を渡されたりしている。
飯田)冬用の外套がないという話もあります。
佐々木)軍靴もなく、スニーカーで戦わせているような状況なので、今後もこの情勢が続くと、ジワジワとロシアが後退する可能性があります。ウクライナが領土を奪還するという流れになっていくのではないでしょうか。
飯田)この情勢が続くと。
佐々木)プーチン大統領としては、ここで4州を併合したことによって、急に「停戦交渉をしてもいい」などと言い出しているわけだから、4州を獲ったことで「国内を納得させて戦争を終わらせたい」という気持ちがあるのでしょうね。
飯田)ただ、ウクライナ側は、いま士気が高まっています。
佐々木)そうなのです。そういう意味では、これからも交戦は続くでしょう。そうなると、今度は核使用の危険性が高まってしまう。どちらに転んでもあまりいい結果にはならなさそうな、よくない状況になっているのではないでしょうか。
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