あけの語りびと

漫画家「つくしゆか」が、「強迫性障害」の闘病中に出会った“気づきの言葉”

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

漫画家「つくしゆか」が、「強迫性障害」の闘病中に出会った“気づきの言葉”

自分の体験をもとにデビュー作を出版

「ドアの鍵を掛け忘れていないか」「鍋を火にかけたままではないか」……そんなことが気になって家に帰ったという経験は、誰にでもあると思います。いわゆる「心配性」なのですが、これが度を越すと、日常生活に大きな支障をきたす病気になってしまいます。

その病気とは「強迫性障害」。日本では100万人以上、100人に1人がこの病気を抱えているそうです。

今回ご紹介する「つくしゆか」さんは、看護学生だった19歳のときに強迫性障害を発症しました。アパートを出て看護学校へ向かう途中、鍵を締めたかどうか気になって仕方がない。しかし、アパートに戻ると鍵は締まっている。

授業中、今度はガスコンロの火を消したか気になって仕方がない。「火事を起こしてアパートが全焼したら……逮捕されて、損害賠償も?」と、悪いことばかりが頭に浮かび、授業どころではないのだとか。

でも、お昼休みに走ってアパートに帰ると、火は消えています。そのときは、単なる心配性だと思っていたそうです。

漫画家「つくしゆか」が、「強迫性障害」の闘病中に出会った“気づきの言葉”

手洗いを10分も続けたつくしさん

その後、晴れて看護師になった「つくし」さんは総合病院に勤めます。普段から感染予防のため、小まめに手を洗いますが、つくしさんは石鹸のCMのようにバイ菌がうごめく姿が目に浮かび、いくら洗っても気が済まないのです。10分も洗い続けるので、手が真っ赤に荒れてしまいます。

注射針は専用のゴミ箱に捨てることになっていますが、「普通のゴミ箱に捨ててしまったのではないか。医療事故になったらどうしよう」と心配になり、ゴミ箱のなかを探します。しかし、注射針が出てくるはずもありません。

そんな毎日で、仕事に支障をきたしてしまい、職場で孤立します。「あなた、専門医に診てもらったら……?」と上司に言われ、神経科を受診。そのとき初めて心の病を患っていることが判明します。

漫画家「つくしゆか」が、「強迫性障害」の闘病中に出会った“気づきの言葉”

いまでは明るく笑顔が絶えないつくしさん

「つくしゆか」さんは、なぜ「強迫性障害」になったのか……それは、子どものころの家庭環境にあったようです。

子どものころは勉強が嫌いで、特に算数と体育が大の苦手。好きなのは絵を描くことで、イラストレーターになりたいという夢を持っていました。ところが、夫婦喧嘩が絶えない母親から「結婚なんかしない方がいい。手に職をつけて看護師になりなさい」と、親の敷いたレールを歩かされます。

高校を卒業後は看護学校に進み、国家試験へ向けて猛勉強の日々。それも「強迫性障害」を発症する引き金になりました。

上司に勧められたメンタルクリニックでは、すぐには改善せず、そのうち通院しなくなると症状がさらに悪化していきます。ドアの鍵が締まっているか、30分以上もドアノブのガチャガチャを繰り返すので、手のひらから血が滲んでくるほどでした。

「鍵が締まっていることは、頭ではわかっているんです。でもこの病気は、ガチャガチャしないと気が済まないんです。何者かがずっと私を監視していて、不安になるようなことを囁きかけてくるような感覚なんですよね」

職場では「ダメ人間」のレッテルが貼られ、職を転々とする「つくし」さん。「誰も病気のことをわかってくれない。いっそ死んでしまおうか」とさえ思ったこともありました。

漫画家「つくしゆか」が、「強迫性障害」の闘病中に出会った“気づきの言葉”

漫画家・つくしゆかさん

そんなある日、「こころの病、1人で抱え込まないで」という掲示板に目が止まります。ある大学の相談センターへ出かけて自分の気持ちを打ち明けると、カウンセラーの方からこう言われました。

「つくしさんは『過去』を軸に生きているから、『未来』が不安になるのでは? 『いま』を軸に生きてみてはどうでしょう?」

つくしさんはその言葉で、「鍵を掛けたか、火を消したかという過ぎたことを気にして、泥棒が入る、火事になる……という未来の不安ばかり考えていたんだ。目の前の『いま』を大切に生きていなかったんだ!」と気づきます。

「強迫性障害」を乗り越えた「つくしゆか」さんは、現在38歳。3年前、結婚を機に鹿児島県へ移住し、子どものころからの夢だったイラストレーター、そして漫画家になりました。

このほど、鹿児島の出版社『燦燦舎(さんさんしゃ)』から、デビュー作『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』を発売しました。

「苦しみに耐えられそうにないとき、心の荷物をちょっと置いてもらえる。そんな“安らぎの場”のようなコミックエッセイを、これからも描いていきたいと思います」

ペンネーム「つくしゆか」さんの「つくし」は、青空に向かってどんどん伸びる土筆(つくし)のように……そんな意味が込められています。

漫画家「つくしゆか」が、「強迫性障害」の闘病中に出会った“気づきの言葉”

鹿児島の書店で売上がランキング入り

■鹿児島の小さな出版社『燦燦舎(さんさんしゃ)』
住所:〒892-0875 鹿児島県鹿児島市川上町904
電話:099-248-7496
https://san-san-sha.com
(※ホームページや電話で注文すると、全国送料無料で発送してくれるそうです)

■つくしゆか(漫画家)
1984年、福岡県生まれ。大分県の看護学校を卒業後、看護師として病院や介護施設にて働く。2019年、結婚を機に鹿児島県へ移住。現在はエッセイ漫画家、イラストレーター、ハンドメイド作家として展示会やイベントに多数参加している。2019年、第7回かごしまクロデミー大賞受賞。
Twitter:@hrm_i0630

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